【連載エッセー】岩崎邦子の「日々悠々」(91)
昨今のコロナ禍で、テレビ業界も大きな痛手を強いられている。まず、ドラマの撮影が出来なくなり、過去の人気シリーズを再放送しているのが現状だ。天下のNHKの大河ドラマや朝の連ドラも改めて最初の方から放映することで、しのいでいる。
俳優に限らず、タレント・芸人・歌手たちにも活躍の場が無くなり、影響は大きいようだ。彼らは、自粛期間には、番組の打ち合わせや会議などは、もっぱらリモート(遠隔)で行っており、また、自宅の過ごし方として、「おうちカフェ」や、友人知人との「リモート飲み」をしているとか。
このように、聞きなれない「リモート」という言葉をやたら耳にするようになった。旅番組なども苦肉の策ではあろうが、過去に放映の場面を流し、そこに登場していた人に、現在の様子をリモート画像にして、時の流れを感じさせる工夫もされている。
トーク番組などは、飛沫防止パーティーションをすることや、スタジオはアクリル板を使って、ソーシャル・ディスタンスを保たせることや、自宅からのリモート出演を織り交ぜている。バラエティ番組でも、同様な対策と、背景を凝らす。別のスタジオから観客(それぞれがアクリル板で仕切られた)を参加させるなど、様々な工夫を試みているようだ。
こうした中で、若者たちのテレビ離れが始まっている。YouTube、Hulu、Voyage、NETFLIX、WOWWOWなど、ドラマも音楽も得意分野も、それぞれの「見たい」「聞きたい」が、自由に選択出来るからだ。
しかし、高齢者は逆だ。コロナ禍が続く中では、極力外出を控えているので、「代り映えがしない」「つまらないことばかり」と愚痴をこぼしているものの、テレビを見る時間は増えている。私が所属しているサークル活動も、自粛となっているので、以前よりテレビを見ることが増えた。気に入りの布を使い、針を動かしながら、相変わらずのミーハーで、アイドル番組を見ながらの作業となる。
アイドル、とくにジャニーズ事務所所属の若者たちの言動には、以前から日本語としての違和感と、ちょっとした言葉遣いが気になっていた。まず、彼らは社長だったジャニーさん(故人)の厳命とかで、先輩にも仲間にも「〇〇くん」と、呼んでいる。余程の先輩には、「〇〇さん」ではあるが。ジャニーズのタレント間に上下をおかず、公平感を持たせるためらしい。
ジャニーさんは、自社のタレントやジュニア・アイドル達には、すべて「ユー」と、呼びかけることも有名な話。この事情も知っているので、呼び方に関しての違和感は、何とか拭えてはいる。芸能界では他の事務所に所属する先輩も大勢いて、共演する場合も少なくない。
その先輩たちへの尊敬や礼儀を、しっかりとした話し方、態度を取っているジャニーズ・アイドルもいて、好感が持てる。本人の自覚と育った環境もきっと影響しているのだろう。
イケメン・アイドルや若い女性タレントの台頭は、見た目も麗しく好感をもって眺めていられる。でも、先輩俳優や、大御所とか監督たちにも臆せずというか、得意げに「タメぐち」つまり、大先輩とも対等の話しかたをするタレントもいる。
私なんか、「如何なものか」と思ってしまう。相手の懐に入り込む術がうまくて、可愛いがられているとでも思っているのか。金銭感覚には敏感で、食事などの誘いや、何かと奢ってもらいたい気持ちがミエミエだ。
なのに、「若造」にそのように扱われる先輩は、満更でもないというか、何やら嬉し気な様子。私には気になって仕方がない。「この若者の演技の才能を認めたい」と思っているのか、あるいは「今をときめくアイドルだから」と、遠慮しているのだろうか。
女性には、すぐに見抜けるのだが、男性に媚を売ることがうまくて、「良い女」「出来る女」を演じているのに似ている。これも言い過ぎだろうか。
先日のある番組で、元アイドルだったが、今は違った分野で活躍しているタレントが話していた。その内容に、「なるほど、やはりね」と思ったことがある。
さて、どんな話なのか—。
ある人物に請われてLINEを交換したのだが、その後の対応ぶりは、人としての誠実さが全くなかったのだという。名指しで、あまりにも失礼な態度をとられてしまったことを明かし、その場の人たちにも経験があるのか、同感の意を語っていた。
日常生活の中で、誰もが知らぬ間に「長幼の序」を身に着けるものだ。子供や年下の者は、大人や目上の人を敬い、礼儀を正す。大人や年長者は、年少者や子供を慈しむ。もちろん、和気あいあいと話し合える仲間や、先輩・後輩としての遠慮のない会話もあるだろう。しかし、それなりの礼儀が成り立ってこそ、人との付き合いが楽しいものになるのではないだろうか。
日々のニュースは、コロナ禍が収まることを知らず、加えて、豪雨は各地で大災害を起こしている。被災地の惨状を伝えるニュースには、「ぴえんこえてぱおん」の気持ちになってしまう。「ぴえん=悲しい」で、「ぱおん=辛い」なのだそうだ。JK(女子校生)語とはいえ、何とも「良い得て妙」な言葉に思えてしまう。