【連載エッセー】岩崎邦子の「日々悠々」(94)
「イースト菌がない!」
このところ、あちこちのスーパーや食料品店で探すが、どの店もそのあるべき棚は、もぬけの殻のままになっている。我が家の朝食は、もう何年も前からホームベーカリーで作った食パンを食べているのだが、こんな事態になったことはない。手持ちのイースト菌が、もう底をついているのに、どうしたものか…。
材料の小麦粉はパン作りには強力粉、ケーキなどのお菓子には薄力粉を使うが、コロナ騒ぎが始まり、外出自粛・学校も休みとなってからは、こうした粉類がすっかり品切れとなった。
パン、ケーキやクッキー、お好み焼きなど、家での手作りを子供たちとするためだとか。「なるほど~」である。強力粉に関しては、買い置きがあったので、その時は驚かなかった。 米粉の使用も話題になっており、それをミックスするようにもなっていたが、その時はイースト菌が欠品になることにまで、思いが至らなかった。
かつて、夫が現役で仕事に通っていた頃の朝食は、夫はご飯党、私はパン党で、朝食は二本立てであった。私が朝にはパンと決めていたのは、コーヒー、ヨーグルト、それにアーモンド・胡桃・松の実など各種のナッツ、食べる煮干しである。果物を摂りたいからだ。
夫は「パンなんか、腹に持たない!」だったが、退職してからは、「俺もパンにする」とのこと。以来、「朝食はパン」が我が家の定番となったが、このまま、イースト菌が手に入らなければ、「朝がゆ」という手もあるなぁと、思い始めている。
ところで、グルテンフリーが話題になっている。グルテン(小麦粉に含まれる「たんぱく質」のひとつ)を悪者扱いし、フリーを盛んに言われている、が、早計だという説もある。
小麦には、薄力粉・強力粉・中力小麦粉・全粒粉、があり、小麦製品は、パン用・中華麺用・日本麺用・菓子用・パスタなどがあり、他にもピザ、菓子パン、餃子の皮、春巻きの皮、天ぷらのような料理などにも、小麦粉を使ったものの出番が数多い。
小麦粉が引き起こす問題として、加工方法が及ぼす影響があるともいう。製パン法に問題点がある可能性があるとも。ローラー製粉、石臼で引いた小麦粉を使用するなど、さらなる解明が問われるとか。
小麦粉による体調不良は何か。小麦アレルギー、小麦過敏症、などが言われている。グルテン摂取の機会が多いと、体質によって消化不良や便秘・下痢・アレルギー反応を起こす人がいる。グルテンが体質に合わない人は、グルテンフリーで改善される可能性もあるとか。
我が家では誰も食品アレルギーを起こしていないが、グルテンフリー・ダイエットというのがあるらしい。そんな難しいことは、私には出来もしないが、ちょっぴり気になる話題でもある。
コロナ感染の広がりは、まだまだ収拾がつかない中で、自粛生活が奨励されているが、「おうちごはん」を余儀なくしている人や「料理男子」と称する人たちもいるとか。男性が料理をすると、高級素材を使い、本格的なものを作るという。
また、「おうちごはん」といって、身近にある材料でパパっと手軽で簡単に出来るものが、ネットなどで数多く紹介されている。早速真似をしたくなり、取り入れることも。
以前、テレビである料理人が話していたことを思い出す。彼は家での料理は奥さんが作っているという。なぜか?「コックさんたちの料理は、味付けがいつも一定しており、飽きてしまうが、家庭料理(女が作る)は、その日によって、味付けが濃かったり薄かったりするので、それが飽きない」のだとか。
そういえば、「ちょっと辛かったね」「しょっぱ(塩)かったな」「味、薄かったね~」と、私は自分の出来栄えを評価するのだが、「いや! このくらいが良い」などと、優しい?夫がのたまう。
現役時代に飽きるほど外食をしてきたこともあってか、夫はテイクアウトもしたがらない。私なんか手抜きをすることもあるのだが、そんなずぼらな食卓でも、夫は文句を言わない。
毎日が日曜日になった夫、我が家では「おれが料理をしよう」という気持ちは、皆無に等しい。ゴルフに出かけている時の昼食以外は、朝・昼・晩と、3食とも私が。一緒にパークゴルフに行くときは、必ずお弁当を作る。コンビニ弁当やおにぎりで済ませたいのだが、夫の猛反対で実現できない。
健康志向の今、テレビで「お勧め食品」「ダイエット食材」が紹介されると、たちまち食品売り場では品切れ状態になる。しかし、暴飲暴食を避け、食事はバランスよく摂ることが大事なことのようだ。
年を重ねていくことで、夫婦のどちらが先に逝くのかは分からないが、私の夫へのかかわり方が悪いらしく、料理に関して夫は「いざとなったら、出来るさ」くらいに思っている。私が「お先に失礼」した時には、隣に住む息子の嫁に迷惑をかけることだけは最小限にして欲しいものだ。