【新連載】腹ふくるるわざ①
森前会長は女性を蔑視したのか
桑原玉樹(まちづくり家)
すったもんだの東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の後任会長選びでしたが、2月18日夕刻、橋本聖子五輪担当相(56)が就任することに。森喜朗前会長が辞任するきっかけとなったのは、「女性蔑視」。私も脇の甘い発言だったとは思います。しかし、これを責め立てるマスメディアには腹が立ちます。2月3日のJOC(日本オリンピック委員会)臨時評議員会で森前会長は、一体どんな発言をしたのでしょうか。山下泰裕JOC会長によると、JOC評議員会が終了した後の発言だったそうですが、以下がその発言のすべてです。これが「女性蔑視」に当たるのかどうか。その判断は皆さんにお任せしましょう。
これはテレビがあるからやりにくいんだが、女性理事を4割というのは文科省がうるさくいうんですね。だけど女性がたくさん入っている理事会は時間がかかります。これもうちの恥を言いますが、ラグビー協会は今までの倍時間がかる。女性がなんと10人くらいいるのか今、5人か、10人に見えた(笑いが起きる)5人います。
女性っていうのは優れているところですが競争意識が強い。誰か1人が手を挙げると、自分も言わなきゃいけないと思うんでしょうね、それでみんな発言されるんです。結局女性っていうのはそういう、あまりいうと新聞に悪口かかれる、俺がまた悪口言ったとなるけど、女性を必ずしも増やしていく場合は、発言の時間をある程度規制をしておかないとなかなか終わらないから困ると言っていて、誰が言ったかは言いませんけど、そんなこともあります。
私どもの組織委員会にも、女性は何人いますか、7人くらいおられますが、みんなわきまえておられます。みんな競技団体からのご出身で国際的に大きな場所を踏んでおられる方々ばかりです。ですからお話もきちんとした的を得た、そういうのが集約されて非常にわれわれ役立っていますが、欠員があるとすぐ女性を選ぼうということになるわけです。
これが「女性蔑視」に当たるのかどうか。その判断は皆さんにお任せしましょう。
さて2003年に文科省は、各スポーツ関係組織の指導的な立場にある女性の割合を2020年までに30%を達成するという「2030計画」を立て、各スポーツ団体に指示しました。実際には4割と指示しているようです。JOCも4割という目標を立てたが、実際に
は25人中5人で20%に留まっているようです。
森組織委員会会長は、
「山下泰裕JOC会長は4割実現に向けて頑張ったが、実現しなかった。しかし例えばわがラグビー協会理事会では、女性が多くて理事会が長引く。……そんなこともあります。だから山下さんあまり気にかけることはない」
という、いわば山下JOC会長をかばうのが発言の趣旨だった、という説がありました。
全国の新聞社38社の女性割合は従業員で19・92%だが、管理職で7・71%にとどまる。役員となると、38社の役員319人中、女性はたった10人。毎日新聞は従業員23・57%、管理職10%、役員ゼロ。
https://news.biglobe.ne.jp/domestic/0209/mai_210209_2351000613.html
毎日だけでなく、朝日新聞など大手新聞社はおおむね同様とのこと。
森さんとしては、そんな新聞社に自分が「女性蔑視」と言われたくはないという思いだったでしょうね。私も森さんは脇が甘かったと思いますが、マスメディアにだけは言われたくないと思います。
【桑原玉樹(くわはら たまき)さんのプロフィール】
昭和21(1946)年、熊本県生まれ。父親の転勤に伴って小学校7校、中学校3校を転々。東京大学工学部都市工学科卒業。日本住宅公団(現(独)UR都市機構)入社、都市開発やニュータウン開発に携わり、途中2年間JICA専門家としてマレーシアのクランバレー計画事務局に派遣される。関西学研都市事業本部長を最後に公団を退職後、㈱千葉ニュータウンセンターに。常務取締役・専務取締役・熱事業本部長などを歴任し、平成24(2012)年に退職。現在、印西市まちづくりファンド運営委員、社会福祉法人皐仁会評議員。