連載しているサブウーハー製作も、いよいよ試作4号機まで来ました。
今までの試作を通して、
立体的な補強構造を付与し、振動板の「構造剛性」を高めることが、優れた低音再生のために必要だということが分かってきました。
<立体的な補強構造をもつ振動板(試作2号機より)>
いかにして、補強部材を製作するか。
立体的な補強構造が大切なことは分かってきましたが、
問題はその製造方法です。
試作2号機ではハンドメイドで作りましたが、
この方法では時間がかかるだけでなく、製作に相当な修練が必要です。
もっと簡便かつ正確に作れる方法はないか?
思い立ったのが、3Dプリンターの活用です。
3Dプリンターは、CADソフトで作成した図形を自動で作製してくれます。
上記は、小さな箱を作ってみたときの写真です。
高硬度なPLA素材で作った製作物は、強度も十分にありました。
また、かなり細かな構造も作ることができるので、
作り込みを行えばかなり良い線まで行けそうです!
まずは、試作。
まずは3Dプリンターの習得も兼ねて、8cmフルレンジ用の補強部材を作製してみました。
左側が最初期のもの。形状はシンプルなリング型。
結果は大失敗。不用意な補強構造が強い共振を生み出してしまい、聞けたものではありませんでした(汗)
いくつか試行錯誤をした中で、良好だったのが写真右の構造。
「富士山」をひっくり返したような構造で、コーン紙の広範囲で強度アップを図ることができます。
実際の音も癖は少なく、この形状をベースに検討を続けることにしました。
想像力との戦い!
3Dプリンターを手に入れたからといって、
すぐに正解の構造が思い浮かぶわけではありません。
試作品を作っては聴き、また少し構造を変えてトライする...
これを何か月も続けました。
一番良かったのは、写真中央の構造。
低音の力感、制動力、音色。どれも群を抜いて優れていました。
例えるのなら、ベースギターの指の動きが見えるような描写力があると言えば良いでしょうか。
バスドラムの風圧を感じるアタックも、迫力十分。
単に音が出ているだけでなく、低音の始まりから終わりまでの音圧変化を克明に描く能力が備わっていました。
補強構造としては、こんな感じ。
表から見るとシンプルですが、どんな方向からの応力にも耐えられるよう、裏側には複雑な構造を作り込んでいます。
(※現在 最終ver.に向けて改良中)
補強部材としての能力は?
一つ疑問が浮かぶとすれば「3Dプリンターで造形できるプラスチック素材で、本当に補強ができるのか?」という点です。
答えは、YESでもあり、NOでもあります。
このことは周波数特性を見ると、簡単に説明ができます。
1kHz以上の帯域で、大きなピークディップ発生しており、
中高音域ではプラスチック部材は強度を失い、共振してしまうことが分かります。
中高音域まで完全に共振を制御したいのであれば、プラスチックでなく、金属などのもっと硬度の高い素材を活用することが求められるでしょう。
しかし、全く使えないのか?というと、それもNOです。
その理由は、一番最初に説明した「非軸対称振動(釣鐘動)」がヒントになります。
先日の日記で、低域の解像度を落とす主要因として、
100~500Hzで起こる横方向(赤矢印)の共振があること説明しました。
つまり、低域の解像度を上げるには、
中低音域の剛性を上げればOKなのです。
今回製作した補強部材は横方向の応力に強く、
中低音域の共振を直接的に抑え込む形状となっています。
この帯域であれば、プラスチック素材であっても、十分に剛性を発揮することができ、
試聴でもその効果を十分に確認することができました。
3Dプリンターの導入で、今までにない完成度のユニットを作ることができました。
「構造剛性」をしっかりと引き上げ、より質の高い低音を作る土台が出来たといえるでしょう。
次回は、エンクロージュアの作り込みについて、お話します。
お楽しみに♪
今までの試作を通して、
立体的な補強構造を付与し、振動板の「構造剛性」を高めることが、優れた低音再生のために必要だということが分かってきました。
<立体的な補強構造をもつ振動板(試作2号機より)>
いかにして、補強部材を製作するか。
立体的な補強構造が大切なことは分かってきましたが、
問題はその製造方法です。
試作2号機ではハンドメイドで作りましたが、
この方法では時間がかかるだけでなく、製作に相当な修練が必要です。
もっと簡便かつ正確に作れる方法はないか?
思い立ったのが、3Dプリンターの活用です。
3Dプリンターは、CADソフトで作成した図形を自動で作製してくれます。
上記は、小さな箱を作ってみたときの写真です。
高硬度なPLA素材で作った製作物は、強度も十分にありました。
また、かなり細かな構造も作ることができるので、
作り込みを行えばかなり良い線まで行けそうです!
まずは、試作。
まずは3Dプリンターの習得も兼ねて、8cmフルレンジ用の補強部材を作製してみました。
左側が最初期のもの。形状はシンプルなリング型。
結果は大失敗。不用意な補強構造が強い共振を生み出してしまい、聞けたものではありませんでした(汗)
いくつか試行錯誤をした中で、良好だったのが写真右の構造。
「富士山」をひっくり返したような構造で、コーン紙の広範囲で強度アップを図ることができます。
実際の音も癖は少なく、この形状をベースに検討を続けることにしました。
想像力との戦い!
3Dプリンターを手に入れたからといって、
すぐに正解の構造が思い浮かぶわけではありません。
試作品を作っては聴き、また少し構造を変えてトライする...
これを何か月も続けました。
一番良かったのは、写真中央の構造。
低音の力感、制動力、音色。どれも群を抜いて優れていました。
例えるのなら、ベースギターの指の動きが見えるような描写力があると言えば良いでしょうか。
バスドラムの風圧を感じるアタックも、迫力十分。
単に音が出ているだけでなく、低音の始まりから終わりまでの音圧変化を克明に描く能力が備わっていました。
補強構造としては、こんな感じ。
表から見るとシンプルですが、どんな方向からの応力にも耐えられるよう、裏側には複雑な構造を作り込んでいます。
(※現在 最終ver.に向けて改良中)
補強部材としての能力は?
一つ疑問が浮かぶとすれば「3Dプリンターで造形できるプラスチック素材で、本当に補強ができるのか?」という点です。
答えは、YESでもあり、NOでもあります。
このことは周波数特性を見ると、簡単に説明ができます。
1kHz以上の帯域で、大きなピークディップ発生しており、
中高音域ではプラスチック部材は強度を失い、共振してしまうことが分かります。
中高音域まで完全に共振を制御したいのであれば、プラスチックでなく、金属などのもっと硬度の高い素材を活用することが求められるでしょう。
しかし、全く使えないのか?というと、それもNOです。
その理由は、一番最初に説明した「非軸対称振動(釣鐘動)」がヒントになります。
先日の日記で、低域の解像度を落とす主要因として、
100~500Hzで起こる横方向(赤矢印)の共振があること説明しました。
つまり、低域の解像度を上げるには、
中低音域の剛性を上げればOKなのです。
今回製作した補強部材は横方向の応力に強く、
中低音域の共振を直接的に抑え込む形状となっています。
この帯域であれば、プラスチック素材であっても、十分に剛性を発揮することができ、
試聴でもその効果を十分に確認することができました。
3Dプリンターの導入で、今までにない完成度のユニットを作ることができました。
「構造剛性」をしっかりと引き上げ、より質の高い低音を作る土台が出来たといえるでしょう。
次回は、エンクロージュアの作り込みについて、お話します。
お楽しみに♪
①今回、使われたユニットのmoと、新たに作られた補強部材の質量を教えて下さい。
②補強部材は振動板にキッチリ接着されないと正しく機能しないと思います。多くの試作品を交換しながらテストを続ける時は、この点はどうされたのでしょうか。
③振動板にはPP製など接着が難しい素材のものもあると思います。接着剤は「変性シリコーン」系を使われたのでしょうか。
コメントありがとうございます。以下、お答えしますね。
①ノーマル状態でのm0は25g、補強材の重量は18~24g程度です。補強と同時に重量付加も起こりますので、f0は40Hz→約28Hzへ下がります。
m0の増加に伴うf0低下・Q0上昇で、低音音圧が増大する周波数特性変化も確認できていますので、その効果も大いにあると思います。
その一方で、試作3号機で試したように単なる重量付加では低音質感向上には至らないんですよね… その辺が、「補強」の効果ではないかと思っています。
②接着を正確にすることは大切なので、元の振動板との隙間が0.2mm以下になるよう、微調整をしながら成型しています。
この辺は、人力での試行錯誤が必要なところです(汗)
③PP系振動板は私も試しましたが、接着は難しかったですね。実用強度が問題なく、かつ、音質上も問題ない接着剤選びもポイントとなります。詳細は企業機密ということで(笑)
ちなみに、硬すぎる接着剤は固有音が発生しやすいので、硬化後も若干柔らかさを維持するようなものが好ましかったりします。
以上、ご参考になりましたら幸いです♪
私も、(振動板への加工はしていませんが…)、3Dプリンターでオーディオ用パーツを自作しています。
・バスレフダクト(テーパー付き)
・取り付け加工が困難な、小口径ユニット用のアダプター(サブバッフル)
・共鳴管内の吸音材のずり落ち防止パーツ
等を作りました。自作ファンにとっては強い味方。
https://gigazine.net/news/20170110-3d-printed-gyroid-model/
3Dプリンターでしかなしえない構造で高剛性化なさると、もっと面白いのではないかと思います。
コメントありがとうございます。手作業での加工は素晴らしいですね!尊敬致します。
紹介のリンク先、興味深く拝見させて頂きました。構造次第で、かなり変わるのですね。これからも試行錯誤を重ねてみようと思います。情報ありがとうございました!
you様ご紹介のリンク先ですが、3Dプリンターで作った樹脂部品が鉄よりも硬いというのは真に受けてはいけませんよね? この記事の要旨は、脆性破壊しやすいカーボン素材にバネ性のある微細構造を取り入れる事で、鉄並みの靭性を持たせる事が出来る、という理解で合っていますでしょうか? 但し非線形現象である座屈的破壊現象を有限要素法解析で求めるのは難しいので、3Dプリンターの樹脂モデルに置き換えて実物で構造比較実験をやってみた、という事なのかなと思います。
そうすると、リンク先はある種(柔らかさを求める)バネ構造の実験記事であり、(硬さを求める)構造剛性を論じるカノンさんへの参考例としては、ちょっと違うのかな?と思ってしまいました。
カノンさんの樹脂補強部品が振動板剛性に実際にどれくらい寄与しているのかは私には分かりません。しかし、アマチュアの手作りはコスト度外視で良いのかもしれませんが、信頼性や再現性があって、自動製作でローコストに作れるという点では3Dプリンターを生かした真っ当なものに見えるのですが。厚肉で重すぎないのかは気になりますが、補強の骨構造としても、奇異な部分は無いように思うのですが・・・
フォローありがとうございます。鉄より硬いは、材料開発の定番文句みたいなものですし、おっしゃる通りの事だと思っています。
3Dプリンターを活用した構造上の新規アイディアはまだまだ試してみたいと思っていますが、今回の構造もあながち変なものではないとも思っています。聴感上でも好結果が得られたので、ひとまず製品化を目指したいですね。