大澤朝子の社労士事務所便り

山登りと江戸芸能を愛する女性社労士が、
労使トラブル、人事・労務問題の現場を本音で語ります。

◆団十郎の訃報に想う。文化・文政期の江戸の退廃を伝える演目が消えていく。

2013年02月05日 00時31分59秒 | 芝居、舞踊、落語、古典芸能

社会保険労務士の大澤朝子です。

江戸・入谷といえば、荒れ田が広がる物寂しい地を想い起こす。
ここに「二八蕎麦屋」が一軒。
現れたのは、小悪党・片岡直次郎(直侍)。
顔は手拭いでほうかむり。木綿1枚の着流し、
春の雪だというのに、裸足に草履。

団十郎の訃報で思い出すのは、若かりし頃、坂東玉三郎と
務めた『雪夕暮入谷畦道』(ゆきのゆうべいりやのあぜみち)の
「直侍」の暗く写実的な舞台だ。

追っ手にかかり、花魁・三千歳(みちとせ)に逢って
最後の別れをと決意する有名な「蕎麦屋」の場。
(実話では、直侍は捕えられて小塚原で処刑される)

「海老さま」として大人気を博した父・先代の団十郎の当たり役
であった「直侍」だが、この当代の団十郎も、退廃的な文化・文政期
の時代を醸し出して、実にいい「蕎麦屋」だった。

若手歌舞伎役者として、花も実もある昭和50年代を
駆け抜けながら、団十郎は例えば若手実力派玉三郎を相手役に、
たった一人成田屋の屋台骨を背負いながら務めていた。

歌舞伎十八番のうち『鳴神』。
「天衣紛上野初花」から『雪夕暮入谷畦道』――。
想い出せば、団十郎と玉三郎の共演する舞台はやはり人気一番で、
”海老玉コンビ”(団十郎襲名前の名が海老蔵)と称された。

江戸っ子は蕎麦を噛まない。飲み込むくらいが格好いい。
この場は、直侍のそばの食べっぷりがよくなければ、
文化・文政期の退廃的な時代に客を連れ込めない。
蕎麦屋での客としての振る舞いに、全て直次郎の今を
表さなければならない。実に難しい場だ。

団十郎と言えば、「勧進帳」を思い起こす方も多いだろうが、
かえって、世話物の「悪党」を演らせても、案外な味があった。
”海老玉コンビ”は、もう二度と観ることができない。

黙阿弥の晩年の作品だが、こうして時代時代に「直侍」を演る
役者が出てきては繋いでいく。

新歌舞伎座が開場しても、上演する演目が、ひとつ、またひとつ
と消えてゆく。


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