大澤朝子の社労士事務所便り

山登りと江戸芸能を愛する女性社労士が、
労使トラブル、人事・労務問題の現場を本音で語ります。

◆“ブラック企業”と石の上にも三年

2013年02月09日 21時53分40秒 | 労働基準
社会保険労務士の大澤朝子です。

日本経済新聞の『私の履歴書』は“愛読書”のひとつだ。
現在連載中はオンワードホールディングス名誉顧問の馬場彰さん。
毎日楽しみに読ませていただいている。

2月7日、8日掲載の樫山入社当時の馬場さんの激務ぶりは興味深い。
朝、会社から百貨店までスーツを運び込み、1日中百貨店で働いた後、
夜は会社に戻って事務処理。毎日終電近い時間まで働き、
百貨店からは「吊し屋」とさげすまれ、ある時は怒鳴られ、
ある時は算盤の角でたたかれ、ある日、顧客へスーツを届けたのは、
「ボーン」と除夜の鐘が鳴り始めたころだった……。

功成り名を遂げた人の若い時の「下積み」は凡人の比ではない
と思い知らされる。

今ならさしずめ「ブラック企業、パワハラ、いじめ、長時間労働」呼ばわり
されそうな苦労話だ。
流石に、「正月まで働かないといけないのか……」。百貨店の下請け
のような自分が恨めしく、「会社を辞めたいんだ」とお父上にご相談された。
その時返ってきた言葉は、
「……石の上にも三年というだろう」。

本当に三年我慢して辞めたかというと、ある日ぱぁっと道が拓けた。
ここからが、いよいよ『履歴書』も佳境に入っていきそうだ。

翻って、最近の風潮は、どうだろうか。
長い間、顧問先の労使トラブル解決にかかわってきたが、
新入社員時代の「下積み」「修行」なんていう言葉はまるで「死語」
かと思われる事例に遭遇する場合がある。

最近、顕著に次のような傾向が現れている。

自分の問題を自身の力で解決、闘っていこうという気概がない
・親又は配偶者と一緒に会社に文句を言いにくる
・親又は配偶者と一緒に労基署へ行く
・親又は配偶者に会社に電話してもらう
・会社からの電話は、親又は配偶者に出てもらう

自分の力で解決せず、すぐ労基署へ行く
(労基署が自分のために会社と闘ってくれると勘違いしている)
・子供の小遣いみたいな金額で労基署へいく

そもそも、何かの事由で会社に損害賠償請求や慰謝料請求したり、
その時は、いくばくかのお金をもらうかもしれないが、それで、
これからの自身の仕事人生にプラスになるだろうか。
その力を仕事に、キャリアアップに割けないものか、と思う。

「人生は重き荷物を背負って長い道のりを歩くようなもの」だと
言うが、自分一人で闘い、挑み、血を吐くほど苦労した人の
人生訓は、確かに職業人の来し方を教えてくれる。


にほんブログ村 経営ブログ 中小企業社長へにほんブログ村







@社会保険労務士