社会保険労務士の大澤朝子です。
1月29日に閣議決定された「平成25年度税制改正大綱」から、
雇用増加と法人税減税関係をまとめておきたいと思います。
大綱には、平成26年度から始まる消費税率8%への引き上げを
見据え、民間投資の喚起や雇用・所得の拡大等を促す効果が
盛り込まれているとされています。
このうち、雇用・所得の拡大に焦点をあてて見てみましょう。
◆所得拡大促進税制(法人課税)
企業による雇用・労働分配(給与等支給)を拡大する
ための税制措置の創設。
青色申告書を提出する法人等が、平成25年4月1日から
平成28年3月31日までの間に、その法人等の雇用者
に係る給与等の支給額が前事業年度の給与等の支給額よりも
5%以上増加した場合は、その「増加額の10%」(中小企業は
20%)を法人税率から控除できるというもの。ただし、平均
給与等支給額が前事業年度の平均給与等支給額を下回る
場合は税率控除を受けることができません。
対象期間は、平成25年4月1日以後に開始される事業年度
からとし、その給与等支給額の基礎となる事業年度は、
各事業年度のうち最も古い事業年度の直前の事業年度
(基準事業年度)とされています。
支給給与額が増えても平均支給額が減った場合には
減税措置を受けられないことから、雇用者の人的増大
に伴う給与額の増大は対象外であり、あくまでも
雇用する従業員の給与賞与全体として増加しなければ
ならないことが分かります。
雇用増大よりも所得アップを促すものと捉えるべき
でしょう。
◆雇用促進税の拡大(法人課税)
既に開始している雇用促進税の拡大。
平成23年4月1日から平成26年3月31日までに開始する
各事業年度において、雇用数が一定以上増加した場合に
受けることができる減税措置です。
大綱には、この雇用促進税の拡大も盛り込まれました。
平成23年4月1日以降に開始する各事業年度の当期末の
雇用者数が前事業年度の末日における雇用者数に比して
5人以上(中小企業は2人以上)、かつ、10%以上増加して
いる場合に、その増加一人当たりにつき20万円の
特別税額控除ができる(ただし、法人税額の10%(中小企業は20%)が上限)と
されています。
なお、事業年度中に定年退職者や自己都合退職者が出たり、雇用保険の
一般被保険者でなくなった(週20時間未満のパートになった等)などの場合
もあるわけで、いくら新規採用を増やしても雇用保険の一般被保険者数が
増加しないと対象となりません。総体として従業員数の増加が必要であり、
結果として当該事業年度の賃金総額も一定以上の増加が要件となります。
この点は注意が必要です。
この場合、「雇用者」とは、雇用保険の一般被保険者
(週所定労働時間が20時間以上の者)をいい、
雇用保険法に規定する高年齢継続被保険者(65歳以上)、
短期雇用特例被保険者、日雇労働被保険者は含まれません。
拡大内容は、
1、税額控除限度額を一人当たり40万円(現行20万円)に拡大する。
2、高年齢継続被保険者も雇用数に算入する。
の2点です。
雇用促進税は、既に動いている制度ですが、実際には
どの程度の法人等が雇用増を達成したかを統計数字から
見てみると、あまりよろしくありません。
例えば、東京都の場合、雇用増の計画書提出法人等は3,870社
に対し、雇用増達成法人等は1,280社。埼玉県の場合も同じく
769社に対し、212社。達成率は概ね3割前後しかありません。
以上の2種類の減税措置は、どちらか一方の「選択制」となります。
既存の従業員の給与増か、それとも雇用人数の増加か――。
平成25年度は、新たな選択肢をもって臨むべきでしょう。
第183回通常国会開催中。税制改正の行方に注目です。
<参考>
各省庁のHPから、以下の文書を参考にしました。
内閣府「平成25年度税制改正大綱」
内閣府「平成25年度税制改正大綱の概要」
厚生労働省「大綱の概要」(雇用促進税制の拡充)
厚生労働省「平成23年度雇用促進計画の受付・達成状況報告状況(速報値)」
厚生労働省「雇用促進税制について」Q&A
厚生労働省「雇用促進計画の提出手続き」
国税庁「雇用促進税制の創設」
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1月29日に閣議決定された「平成25年度税制改正大綱」から、
雇用増加と法人税減税関係をまとめておきたいと思います。
大綱には、平成26年度から始まる消費税率8%への引き上げを
見据え、民間投資の喚起や雇用・所得の拡大等を促す効果が
盛り込まれているとされています。
このうち、雇用・所得の拡大に焦点をあてて見てみましょう。
◆所得拡大促進税制(法人課税)
企業による雇用・労働分配(給与等支給)を拡大する
ための税制措置の創設。
青色申告書を提出する法人等が、平成25年4月1日から
平成28年3月31日までの間に、その法人等の雇用者
に係る給与等の支給額が前事業年度の給与等の支給額よりも
5%以上増加した場合は、その「増加額の10%」(中小企業は
20%)を法人税率から控除できるというもの。ただし、平均
給与等支給額が前事業年度の平均給与等支給額を下回る
場合は税率控除を受けることができません。
対象期間は、平成25年4月1日以後に開始される事業年度
からとし、その給与等支給額の基礎となる事業年度は、
各事業年度のうち最も古い事業年度の直前の事業年度
(基準事業年度)とされています。
支給給与額が増えても平均支給額が減った場合には
減税措置を受けられないことから、雇用者の人的増大
に伴う給与額の増大は対象外であり、あくまでも
雇用する従業員の給与賞与全体として増加しなければ
ならないことが分かります。
雇用増大よりも所得アップを促すものと捉えるべき
でしょう。
◆雇用促進税の拡大(法人課税)
既に開始している雇用促進税の拡大。
平成23年4月1日から平成26年3月31日までに開始する
各事業年度において、雇用数が一定以上増加した場合に
受けることができる減税措置です。
大綱には、この雇用促進税の拡大も盛り込まれました。
平成23年4月1日以降に開始する各事業年度の当期末の
雇用者数が前事業年度の末日における雇用者数に比して
5人以上(中小企業は2人以上)、かつ、10%以上増加して
いる場合に、その増加一人当たりにつき20万円の
特別税額控除ができる(ただし、法人税額の10%(中小企業は20%)が上限)と
されています。
なお、事業年度中に定年退職者や自己都合退職者が出たり、雇用保険の
一般被保険者でなくなった(週20時間未満のパートになった等)などの場合
もあるわけで、いくら新規採用を増やしても雇用保険の一般被保険者数が
増加しないと対象となりません。総体として従業員数の増加が必要であり、
結果として当該事業年度の賃金総額も一定以上の増加が要件となります。
この点は注意が必要です。
この場合、「雇用者」とは、雇用保険の一般被保険者
(週所定労働時間が20時間以上の者)をいい、
雇用保険法に規定する高年齢継続被保険者(65歳以上)、
短期雇用特例被保険者、日雇労働被保険者は含まれません。
拡大内容は、
1、税額控除限度額を一人当たり40万円(現行20万円)に拡大する。
2、高年齢継続被保険者も雇用数に算入する。
の2点です。
雇用促進税は、既に動いている制度ですが、実際には
どの程度の法人等が雇用増を達成したかを統計数字から
見てみると、あまりよろしくありません。
例えば、東京都の場合、雇用増の計画書提出法人等は3,870社
に対し、雇用増達成法人等は1,280社。埼玉県の場合も同じく
769社に対し、212社。達成率は概ね3割前後しかありません。
以上の2種類の減税措置は、どちらか一方の「選択制」となります。
既存の従業員の給与増か、それとも雇用人数の増加か――。
平成25年度は、新たな選択肢をもって臨むべきでしょう。
第183回通常国会開催中。税制改正の行方に注目です。
<参考>
各省庁のHPから、以下の文書を参考にしました。
内閣府「平成25年度税制改正大綱」
内閣府「平成25年度税制改正大綱の概要」
厚生労働省「大綱の概要」(雇用促進税制の拡充)
厚生労働省「平成23年度雇用促進計画の受付・達成状況報告状況(速報値)」
厚生労働省「雇用促進税制について」Q&A
厚生労働省「雇用促進計画の提出手続き」
国税庁「雇用促進税制の創設」

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