大澤朝子の社労士事務所便り

山登りと江戸芸能を愛する女性社労士が、
労使トラブル、人事・労務問題の現場を本音で語ります。

◆H25年度 雇用促進税改正 第2報

2013年04月08日 00時26分42秒 | 雇用促進税等
社会保険労務士の大澤朝子です。

平成25年度税制改正大綱については、このブログでも
閣議決定及び第183回通常国会法案提出時に、
第1報として、

A)所得拡大促進税制創設
B)雇用促進税制改正

の2点に絞り書かせていただきましたが(2月27日)、
1か月以上経った今もアクセスがじわじわ伸びている今日この頃です。
案外に、この制度の注目度の大きさに驚いています。

既に、法案は3月29日に国会を通過。

4月に入り、顧問先様でも何社かが、雇用促進税狙いで、
事業年度開始から2か月以内に提出する「計画届」を
「提出しておいてください」と言っておられます。

AとBの減税効果の損得を考えるよりも、まずは、何と言っても、現実、
「一体、当社にとって、どっちが可能か…」
(A給与・賞与アップか、それとも、B従業員数の増加か…)と
可能性や必要性の問題になるわけで、(どっちに転んだとしても)
今必須は、Bの事業年度の初めに出しておく「計画届」で、
この“押さえ”だけはしておくべきでは…と、
お客様には申しております。

ここで、雇用促進税の思わぬ落とし穴があることに
触れておきましょう。
その注意点は次のようなものです。

1、前事業年度と当事業年度に「事業主都合による離職」
がないこと
平たく言えば、雇用保険の資格喪失届の離職理由「3」
があった企業は、対象外となる、ということです。
離職理由が「3」とは、勧奨退職や解雇などが当てはまります。

2、雇い入れ助成金を受給した場合は、人数には入れますが、
受給した助成金額が「給与等支給額」から控除されます。
これは、「給与等支給額が比較給与等基準額以上であること」、
という要件を見るときに必要となります。

雇い入れ助成金とは、

・特定就職困難者雇用開発助成金
・被災者雇用開発助成金
・試行雇用奨励金
・障害者初回雇用奨励金

などの、一定の人を雇った場合に企業が受給できる
助成金で、これらの助成金が支給決定された場合は、
当該助成金額が「給与等支給額」から控除されて算定されます。

ですから、従業員数が10%以上増えても、給与額の増加が
これらの助成金を受給したことによって要件に該当しなくなる……
という可能性もありますので、注意が必要です。

※ 比較給与等支給額
比較給与等支給額=前事業年度の給与等支給額+
前事業年度の給与等支給額×雇用増加割合×30%

3、人数(雇用保険の一般被保険者数)
「人数」には、4月1日から「高年齢継続被保険者」数
が算入されることになります。
前適用年度中に一般被保険者として雇い入れた方が、当適用年度中に
高年齢継続被保険者となった場合は、前適用年度末の「人数」から
これらの方を差し引いて計算します。

雇用促進税については、
前回書きましたように、これまでの統計を見ますと、
要件達成企業の割合は少ないようです。
第一、赤字企業が8割と言われる日本で、制度の効果が
どれほどあるのか、正直、あまり期待できないように思えます……。

4月から新事業年度が開始した企業様も多いはず。
何はともあれ、後の祭りとならぬための「念のため」の押さえは
しておきたいですね。

<参考>
・厚生労働省 「雇用促進税制に関するQ&A」
・厚生労働省 「平成25年度から雇用関係助成金が変わります!」

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