大澤朝子の社労士事務所便り

山登りと江戸芸能を愛する女性社労士が、
労使トラブル、人事・労務問題の現場を本音で語ります。

◆効果に疑問、育児休業給付

2013年05月09日 23時06分22秒 | 雇用保険
こんばんは、社会保険労務士の大澤朝子です。

社会保険労務士の仕事で、一番気を遣うのが
雇用保険の高年齢雇用継続給付と育児休業給付の申請手続きです。
どんなことがあっても、絶対に2か月に1回の申請を忘れては
なりませんし、高年齢雇用継続給付は、これが長い人で5年間、
来る月も来る月も2か月ごとに続きます。

育児休業給付は、長くてもせいぜい1年6か月ですので
期間は高年齢より短いですが、
育児休業給付への気の遣いようは高年齢の比ではありません。

女性の産前産後休暇中は育児休業給付の対象ではありませんので、
産後休暇の法律上の終了日の翌日を見極めた上で、
その方の法律上の「育児休業」開始日を認識しておきます。

弊所では、独自に出勤簿を作成して、産前産後休暇と育児休業期間
との境目を「法律上」間違いなく把握し、育児休業給付の申請を
することにしています。

育児休業給付の申請の最初に、育児休業前6か月間の「賃金登録」
を行いますが、当人が女性の場合(ほとんどが女性ですが)、
妊娠中のトラブルによる欠勤や産前産後休暇もありますので、
長い人で2年近くにもわたり一定の出勤日数(11日)の月を
12月分つかまなければなりません。
11日以上の月を最低でも12月とって賃金登録の書類
(離職票みたいなものを)を作成します。

第1子を生んで、子の病気などで休みがちながら、第2子を妊娠・出産
などという例ですと、受給要件が危うい人などもいて、
過去のタイムカードから受給要件が満たされていないかどうか
懸命に捜します。

育児休業給付の額は、育児休業前直近の6か月の賃金から算定
され、現在はその50%ですから、育休前20万円だった人は10万円もらえる
のですから、当人にとっては大きな額です。

逆に、それを来る月も来る月も2か月ごとに、絶対に忘れないで
申請を行う私どもには、重い責任があります。

ところが、この育児休業給付をもらう方の職場復帰
の度合いを見てみますと、弊所の顧客は中小企業が多いので
尚更なのでしょうが、あまりよろしくありません。

ほとんどの方が、育児休業給付を受給し終わると、職場復帰せずに
そのまま退職されてしまいます。
中には、産前産後休暇を取る前に、育休終わったら辞めます、と
宣言される方もいらっしゃいます……。
(本心かどうか分かりませんが、そういう話を聞くと
残念です。)

中小企業の場合は年次有給休暇も取りにくい現状が
ありますので、そういうことも原因かもしれませんが……。

この制度の現場におりますと、
国がいくら「育児休業給付」制度を作っても、
出生率はあまり改善されずに、
ただ、お金だけもらって辞めます、を可能にした制度を作っただけ
ではと、少なからず疑問をもってしまいます。

その財源を負担している会社や多くの被保険者の方は
どのように思われるでしょうか。(財源は雇用保険料、諸費は税金)。

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