坂道を下りながら、彼女は訊く。
「私に好きな男の子ができたら、笑う?」
僕の心臓がドクンと鳴る。
周りの人がみんな振り向くかもしれないほどの音で。
「エミコの好きな人って、どんな感じだい?」
僕の心臓は1万倍の速さで血液を送り出す。
彼女は、にっこりわらって僕を見る。
落ち葉と彼女と彼女の淡い茶色のダッフルコート。
心臓が「タスケテ」と叫ぶ。
「そうか。そうかあ、小林君はそういう風に質問するんだね。」
もう一度彼女が僕を見て笑う。心臓がぴたりと止まる。
モシカシテ。
「そうだなあ、彼は。彼はターザンみたいな人かなあ」
観覧車から小さな姉妹が降りてくる。
僕の心臓はすんでの所で命拾いをする。
心臓が僕に言う。
「あなたが少しもターザンみたいな人でなくてよかったです」
心臓の日本語はなんだか たどたどしくて、
僕を少しだけ救ってくれる。
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