そんなふうにして、僕は一つの思いを、
季節と一緒に、心の中に畳む。
心臓だけが、いつまでも僕に付いてきてくれる。
(もちろんそれは、不可欠なことだ)
その秋の終わり、冬の閉園期間のぎりぎり前に
僕は初めて観覧車に乗った。
心臓と二人っきりで。
「僕がもし、ターザンみたいな男だったら」僕は訊く。
「君はどうする?」
「ターザンには」心臓が俯きながらこう答えた。
「ターザンの心臓がついていることとなります。」
心臓の日本語はなんだか たどたどしくて、
僕を少しだけ救ってくれる。
「一つだけ約束する。もう、ターザンを羨ましがったりしないって」
「私はあなたがターザンでなくていて、助かっています」
観覧車は、はやくも下りに向かって、
まもなく僕達は、もとの地上に戻される。
〈了〉
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