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2012年04月08日 | 日記

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キッシンジャー回顧録「On China」読了 ~台湾=北朝鮮=ロシア=モンゴル=インド5カ国連合の形成~

2012年04月08日 | 日記

齢88歳になるヘンリー・キッシンジャーが昨年夏、530ページに達する新たな回顧録「On China」出版した。翻訳本は、2012年3月12日に岩波書店から上下2巻本にて出版されている。

さて一読しての印象だが「違和感あり」というもの。

キッシンジャーは、アヘン戦争以降の中国から筆を起こし、1949年の中華人民共和国の誕生以来の中国を巡る国際政治・外交を述べているが、この「On China」は少なくとも回顧録ではない。
「キッシンジャー秘録(全5巻)」と「キッシンジャー激動の時代(全3巻)」を読んでいるが、これらとは全く違うのだ。
「On China」でキッシンジャーが言いたいことは、素直に中国の台頭を受け入れる事で、予想される紛争を阻止するべきと言うことだろう。しかし、これは無責任だ。

昨日のブログでも書いたが、海軍力強化を続ける中国の存在は、日本・台湾・韓国にとっては脅威だ。
「中国のアクセス拒否・地域拒否「A2/AD」(anti-access / area-denial)能力の強化」

共和党のキッシンジャーが、中国の台頭を受け入れる事と主張するなど、その真意はどの辺にあるのか?
もし第七艦隊や海兵隊がグアム=ハワイに引くこととなれば、その空白を埋めるのは中国海軍となる可能性が高い。
日本は1000兆円の財政赤字の中、海空戦力を増強しなければならないが、果たして国民の理解を得られるか?

日本がサバイバルする為の安全保障と外交は如何にあるべきか?
大胆に言うと、台湾=北朝鮮=ロシア=モンゴル=インド5カ国との国交正常化&平和条約締結である。

台湾は中国を直接刺激するので、当初は経済連携の強化、九州から沖縄、台湾に至る東シナ海監視網構築、及びベトナム、フィリピンとも強力して南シナ海での対中国海軍力の偵察&阻止網を構築すること。それと兵器の共同開発&調達など、これは米国の理解を得つつ実施したい所。

ロシアはプーチンが大統領に復帰したので、領土問題は棚上げにして平和条約の締結を急ぐべき。またロシアとは原子力関係でも密接に連携する体制の構築が望まれる。
同国とはレアメタル/レアアース、天然ガスや石油、それと愁眉の北極圏での資源/物流などロシアとの条約締結には極めて有益な関係構築が可能となろう。
特に極東ロシアには700万人程度の人口しかなく、将来的には中国の圧倒的な人的進出に国境線は意味を無くすだろう。これを日露で阻止するのだ。

さて、キッシンジャーの考えは共和党の主流ではない。プリンストン大アーロン・フリードバーグ教授は、「ゲーム・チェンジャー」と言うキッシンジャーとは異なる意見の論文をフォーリン・アフェアーズに発表している。

フリードバーグ教授は、チェイニー副大統領の国家安全保障担当副補佐官を務め、現在は共和党大統領候補の指名争いをしているミット・ロムニー氏のアジア太平洋政策作業チームの共同座長である。

このフリードバーク教授は、キッシンジャーの考えとは反対で、中国の究極的な目標は米国に代わってアジアにおける優位を確立することにあり、米中の異なる政治イデオロギーと統治体制によって対立は深まっていくと論ずる「A Contest for Supremacy: China, America and the Struggle for Mastery in Asia」と言う著書で主張している。

フリードマン教授も共和党だが、キッシンジャーとは意見を異にしているが、何れにせよ中国海空戦力が中国大陸から伸張するも、日本はそれを阻止するだけの戦力を保持し、各国と連合せねばならない。

まあ、キッシンジャーの「On China」は、予想される紛争を阻止すべき、と主張するようだが、これは紛争を戦争に拡大するもの。要注意である。

翻訳本は岩波書店なので、紀伊國屋書店や丸善などでは「On China」を見かけない。同業他社の書籍は扱わないのだろうが、この本は左翼系の老害インテリを刺激する最後の一書となるだろう。