阿部ブログ

日々思うこと

レアメタル・レアアース回収技術&リサイクルの進展

2012年04月29日 | 日記

ご存じの通り、中国のレアアース輸出規制により、レアアースを始めとするレアメタルの回収技術の開発が国内で活況を呈しており、成果が出ている。

徳島大学の薮谷智規准教授らは、ペルオキシン化合物をつかって強酸性物質などを使わずにレアメタルを溶出する技術の実用化に目途をつけている。
非強酸・非窒素系溶媒を活用した低環境負荷的希少元素リサイクル法の開発

この技術は、レアメタルを吸着したキレート樹脂から、強酸を使わず「ペルオキシ化合物」を利用してレアメタルだけを溶出させもの。「ペルオキシ化合物」にはオゾン、過酸化水素、過炭酸ナトリウムなどで、コスト削減に寄与するし、硫酸など強酸性物質を使わないため、環境にやさしい。しかもキレート樹脂は繰り返し使う事が出来る。

徳島大学の研究チームの実験ではバナジウム、モリブデン、タングステンの溶出を確認している。
回収率はバナジウム93%、モリブデン94%、タングステン66%で、10分程度の処理が溶出すると言う。優れた研究だ。

また珍しいところでは「ティビーアール」(TBR、本社:愛知県豊川市)と言うロープメーカー会社のレアメタル回収方法。

TBR社は、特殊な化学繊維を編み上げて作ったモール(細い糸のついたひも)でレアメタルを瞬時に大量吸着できる製品を開発している。
このモールは、直径45ミリ、長さ1メートルで表面積は約5平方メートルになると言う。
このモールでニッケルやコバルトなどレアメタルの種類に応じ、電子線やガンマ線を照射して特有の化学変化を与えて吸着させると言う。吸着後は、モールを強酸性物質に浸せば溶出すると言う仕組み。

ここで気づくと想うが、徳島大学の研究と、名古屋のTBR社のモールによるレアメタル吸着技術を合わせると、極めてシンプルに希少金属類を得る事ができるのではないか?
つまりレアメタルやレアアースを吸着したモールを「ベルオキシ化合物」で溶出させ事が可能かどうかの検証が必要だが、実現性は高いそうだ。

因みにTBR社は、元々、漁業用の組みひもロープの製造・販売を手がけてきた会社で、技術開発を続ける中、1本のひもから大量の糸を伸ばしてモールを作り、水につけたところ、微生物の格好の住み処となり、水質が浄化されたと言う成果を得て、これを商品化し水質浄化材「バイオコード」となり結実した。

TBR社のモールは、以前書いた「海水資源開発」&「環境破壊を極小化する「海水」資源の開発 」にも利用出来る。
既に日本原子力研究開発機構が、海水からウランやレアメタルを回収する研究プロジェクトにTBR社のモールが使用されており、約220種類のレアメタル吸着に成功している。さらに鉛やヒ素、水銀などの有害物質を吸着できることも確認できている。

これは、フクイチ(福島第一原発)から大量に海や湖などに放散した放射性ヨウ素や同セシウムを吸着させる事も可能だろう。
是非とも、徳島大学の研究とTBRのモールによって、有益な希少資源の獲得と、有害な化学物質や放射性物質の除去に役立てもらいたいものだ。