ついに脱ディスプロシウムのネオジム磁石材料が開発された。
しかも世界最高水準の保磁力性能!
戸田工業は2012年4月4日、世界最高水準の保磁力性能 Hcj1670kA/m(21kOe)を有するディスプロシウム(Dy)フリーのネオジ系希土類磁石材料を開発したと発表した。
ついに脱ディスプロシウムのネオジ磁石が登場した事となる。
しかも世界最高水準の保磁力性能HcJ 1670kA/m (21kOe)を有すると言うから中国側も心穏やかではないだろう。
何せディスプロシウムは、世界広しと言えども中国・華南意地域のイオン吸着鉱からしか産出しないため、脱中国化出来ない重希土類の一つであった。
それが、ディスプロシウム不要だというのだから、これは脱中国産レアアースの大きな成果と言える。
そのディスプロシウムは、2011年7月に、1キロ3000ドル(金属ディスプロシウム)の大台を突破。中国のレアアース輸出規制以前の2010年は平均250ドル前後で価格が推移していたが、今年2012年3月末現在でも2300ドル前後となっており、日本企業による脱レアアース技術の開発が進展すると、ディスプロシウムの今後の価格動向に注目だ。
さて、この脱ディスプロシウムのネオジ系希土類磁石は、既存の「水素化・相分解・脱水素・再結合プロセス」(HDDRプロセス)で生産されるので、低コストでの生産が可能であり、経済性、実用性に優れている。
戸田工業は、この脱ディスプロシウムのネオジム磁石の実用化で、現在年産50トンの生産能力を、2013年には年産500トンにする為、投資の検討中で、将来的には現在の20倍の生産能力年産2000トンを目指すという。
戸田工業の快挙以前から、日本企業における脱レアアース磁石の研究開発が進められていたが、特に日立金属がディスプロシウムの使用を半減した磁石を量産している。これは従来の磁石より重量比で平均4%含有させるジスプロシウムを2%程度少なできる技術であるが、戸田工業の脱ディスプロシウムのネオジム磁石登場で、今後の日立金属の動向が気になるところ。
戸田工業や日立金属とは一線を画す、脱レアアース磁石戦略を歩むのが日本電産。
日本電産は、大なり小なりレアアースを必要とする永久磁石製品から、レアアースを必要としない脱永久磁石戦略で市場の拡大を目論んでいる。
日本電産によるとスイッチトリラクタンス(SR)モーターのサンプル出荷を始めているが、従来のSRモーターは音や振動面の欠点があり、海外勢ではあるがEmerson Electricは以前から農業機械や建設機械の採用を目指して開発を進めていた。
日本電産はSRモーターの欠点を克服する為、インバータの制御を含むSRM制御技術を開発し、小型EVやHEV向けにSRMの性能を最大出力は44kW、最大トルクは86Nm、大回転数は12000回転/分を達成し、自動車向けに出荷可能な実用領域まで性能を向上させている。因みにSRモーターの大きさは、直径177mm、幅234mm、重量は26.5kgである。
日本電産以外では、SRモータを現在1000台/年を受注生産してい「明和製作所」(本社:福岡県糸島市)がある。
明和製作所は、SRモーターを今年から本格的に生産を開始する。同社は、昨年、約2億円を投資してEV用SRモーターの生産ラインを整備しており、年産1万を見込んでいる。
中国のレアアース輸出規制が、脱ディスプロシウム&脱永久磁石の技術開発を大幅に促進する発端だったが、日本の持てる技術力の総力を集めて、今後も磁石以外の分野での、レアメタル/レアアースの代替技術開発に邁進してもらいたい。