先日会社からの帰宅途中、電車に乗っていたときのことだ。乗って一駅目で目の前に座っていた女子が降りていった。ラッキーと思って、その席に座ると、隣のおばさんが、「くさ~」という。自分のことか、いやそんなはずは……。しかし、繰り返し「くさ~」といって、これ見よがしに鼻をつまんでいる。アラフィフのおやじだから、加齢臭でもするのかと、自覚症状のないままに気になっていたが、当のおばちゃんは、前かがみになっておもむろにバッグから本を取り出し、本でパタパタ仰ぎながら、こちらの顔を覗き込む。そのときバチバチと視線が交わってわかった。目が逝っている。脳が壊れている人だった。
そんな「くさ~」事件で思い出したのが、旭川喫茶店事件。90年代に層雲峡から入山し、トムラウシまで大雪山系を縦走したことがある。1日雨で停滞し、4泊5日の行程だった。車を旭川市内の無料の公園駐車場に停めたままにし、バスで移動し山歩きをしていた。下山したら、いつもなら真っ先に風呂に浸かっていたのだが、このときは、なぜかそうせずにまっすぐ放置していた車のところに戻った。ザックを車に積んで、近くにあった喫茶店に入った。行ったのは夏場だったのだが、この年は異常気象で、エアコンいらずの北海道がムシまくっていて、連日30度を超えていた。この日も30度を超えていたはずだ。店内に入ると、ウエイターがすぐに来ない。奥に姿が見えているのに、一向に来る気配がない。ジモティの常連以外は受け入れない店なのか? 歓迎されざる客なのか? などとこのときは思ったし、しばらくずっとそう思っていた。
しかし、あるとき山の神と話していた気づいた。
旭川喫茶店事件は、そう、お察しのとおり、私が臭すぎて、ウェイターがしばらく来なかったのだ。毎日汗だくで歩いていたから、レゲエのおじさん並に相当きつい匂いになっていたのだろう。ただそんな激臭は、自分ではわからないんだよねえ。皆さんも下界に下りたら、自分が相当臭いという自覚をもちましょう。ただちに風呂に入ることです!