2011年12月4日倉見山より撮影
先日自らの富士山登山をライブ中継していた方が滑落して亡くなられた。ご冥福をお祈りいたします。
今頃なぜこのニュースをとり上げるかといえば、このブログで何度かとり上げた栗城史多くんを想起された方が多かったようで、拙ブログを訪れて栗城くんに関する記事を読んでいかれたからだ。たしかに似ている。登山中はモノローグで自己演出をし、皆に賞賛されるような挑戦を続ける。そして取り返しのつかない事故。
事故後すぐにYouTubeの動画は削除されたようだが、いったんネットに上がったものは、あちこちにコピーが出回る。その動画を見てわかったが、彼はピッケルではなく、ダブルストックで登山をしていた。滑落直前には、「すべる」と何度も口にしていたので、アイゼンは装着していなかったか、軽アイゼンだったのかもしれない。
きちんとした冬山の装備をもたず、ましてや訓練をしていない、経験もないものが冬季の富士山にチャレンジしたとしか思えない。
吹きさらしの富士山は凍結しているところは多いだろう。山頂付近の気温は下界よりも22、23℃は低くなるから、間違いなく零下だし、風が強ければ体感温度はぐんと下がる。どんなに晴れていても過酷な環境なのだ。
またいったん滑落すると、仮にピッケルをもっていたにせよ、アイスバーンだと停止できない可能性はある。滑落停止の訓練をしていてもそうなのだ。
用意周到で臨んでも危険に満ちている冬季の富士山登山。40代後半という年齢(人生経験が豊富なのに)でありながら、なぜこんな無謀なことをしてしまったのか。無知からきているのか? それとも栗城くんのように引くに引けなくなったのか? たんなる自己顕示欲なのか? いずれにしても大きな教訓を残した事故であることには変わりない。
ちなみにベテラン登山家でさえもエベレスト遠征で、テントから不用意にテント用スリッパで外に出て滑落死していて、その映像が残されている。アイスバーンはそれほどまでに危険なのだ。一度滑りだすと、どんどん加速していくから、滑落直後に停止できないとまず助かることはない。停止に失敗すれば、好むと好まざるに関わらずカーレーサーを体験することになる。もちろん手足は複雑骨折し、頭を岩に打ちつければ、即死。想像するだに恐ろしい。
ここまで読んだら、この方の真似をしてみようと思う人はいないだろう。