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歌舞伎の世界では、残念なニュースが続き、勿体ないお二人の命の事を惜しくて仕方が無かった。それ程、歌舞伎通な私じゃないけれど、そんな私でさえお二人の存在感の大きさを、屋台骨を失ってしまった事を勿体ないお若い命と、ずっと思っていた。歌舞伎界は大丈夫なのだろうかとさえ・・・・・・。
そんな中、二月大歌舞伎のお招きを頂き、友達と二人で楽しんだ。前方の花道の横だったので、しっかり役者さんのお顔を肉眼で見られた。
初めての経験は、松本幸四郎さんの口上を観られた事。「せがれの事故で皆さまにご迷惑とご心配をおかけし・・・・・」命に関わる大事故だっただけにどんなに嬉しい思いで口上を述べられた事だろう。
ご自分より若輩のお二人の大役者、お仲間を失った悲しみを味わった後、喜びの口上も複雑だった事かと思う。
演目は「義経千本桜 吉野山」「新皿屋敷月雨暈」
屋号は「高麗屋」幸四郎さん、染五郎さん金太郎さん三代で演じていた。暗いニュースが多い中何とお幸せなご一家だろうと思った。
劇場には、幸四郎さん、染五郎さんの奥様も見えてお得意様にご挨拶をされていた。
私自身は幸四郎さんが、市川染五郎さんだった頃「♪野バラ咲いてる山路を~二人で歩いてた~♪」なんて自作の歌を都会派の格好良さで唄っていた頃からの、ファンと言えばファンであった。
口上を言う歌舞伎の発声とは全く違うけれど、彼が舞台に居る存在は大きく、高尚な物を観ている安堵感が有った。日生劇場で花道が有る歌舞伎と言うのは馴染んでいないけれど、貴重な物を観賞出来た喜びは大きかった。友達と夕食をとる時間の余裕も無く、寒い北風の中を帰宅したけれど、心は暖かだった。
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