たしか一昨日の昼のテレ朝のワイドショーである事件の逮捕現場のビデオを流していた。
これは最初から説明しなければならないのかも知れないが、録画もしていないので、正確な描写ではないかも知れない。
まず被害者の若い女性Aは新聞か何かの広告で、あるイベントに出席すれば報酬をもらえるというものを見てメールで連絡した。返事が来て面接すると、酒か何かに薬を混ぜたものを飲まされたらしく自分は眠ってしまった。目が覚めて気がついてみると現金や定期などがなくなっており、衣服もすこし乱れていた。
このことを母親に相談したところ、母親は一計を案じ、自分が若作りした写真を撮り、年もごまかして応募したところ、面接の知らせが来た。少なくともこの段階でこの母は警察に相談し、テレビ朝日にもメールで報告した。
面接の場所へはこの母親とAならびに「どんな危険があるか分からない」との理由でテレ朝のスタッフ(たしか)3名が同行した。
なおAとテレ朝スタッフは別室で待機していた。そして驚くべきことにこの犯人との会話中の犯人の顔は真正面から撮られていて、そのやり取りは仔細に見ることができた。
そして会話の途中で何をきっかけにしてかわからなかったが、被害者女性Aが出てきて、この犯人に怒っていたが、その際中だったかにこの犯人の財布からAの定期が出てきて、それがAの定期であるとしてAは激怒し、それが決定的証拠となったらしく犯人は犯行をあっさり認めて、求めに応じてたしか土下座までした。
この時点ではスタッフが入ってきて犯人を責めていた。そして警察にも連絡し、事前に相談を受けていた警察がやってきて連行した。
このビデオを見て受けた印象は、まずこれがあまりにもうまく行き過ぎているということであった。
たとえばAの母が面接に行ったバーのようなところはあらかじめそういうことがあるということを説明したうえで撮影許可を得ていたのであろうか。
そうした点はいまさておくとしても、非常に自分に納得がいかなかったのは、
これがいわゆる典型的な「おとり捜査」ではないかということである。
そしてこういう捜査のようなことを被害者とマスコミが協力して行うというのは果たして許されるのだろうか。犯人にはすでに前歴があり、その件では確か立件されて、Aの事件では放送の時点では「立件の予定(方針?)」ということだったと思うが、こうしたことがネックになって立件や裁判が難しくなるということはないであろうか。
私はこの犯人がしたことは許されないことであると思う。しかし、マスコミが特ダネや手柄をたてようとして捜査当局には禁止されているようなことを勝手にやったとしたら、それは非常にまずいことであると思う。
この事件に関しては警察もあらかじめというべきか、相談を受けていて、通報されたらすぐに現場に来たのだから、警察も決して無関係とはいえないだろう。警察はこの手法を容認したのか黙認したのか知らないが、いずれにしてもいろいろと問題がありはしないだろうか。
警察自体がやったことではないとは言え、仮にこれが「おとり捜査」といえるとしたら、これまで警察はいわゆる「おとり捜査」ができないためにどれだけ苦労してきたかということも考える必要があるだろう。
最近は「おとり捜査」に関しても、裁判所は容認するケースもあるようだし、最近もおとりでまずいことをしているようなメール・ドレスがわかったようなこともニュースにでていたように思うが、いずれにせよ、おとり捜査は日本では憲法31条に違反する場合が多いものと考える。
「おとり捜査」がいいとするなら、それならそれで、憲法も含め大胆な法改正が必要であろうと思われるが、これもかなり煩雑な作業になることが予想される。いずれにせよ、それならそれで法改正すべきであろう。
また犯人を連行する際、これがいわゆる任意同行だったようだが、いずれにせよその後どうなったのかも今は分からない。
繰り返すが自分はあの犯人の行為はけしからぬと思う。しかし、あのようなマスコミの行為は果たしていいのかどうかは疑問で、たしかスタジオにいた、弁護士に、あのビデオを流した後、意見を求めたようだが、これが「おとり捜査」の可能性があるとか、果たしてマスコミがそういうことをすべきかといった意見や疑問はまったくでなかった。
自分は法律はまったくのど素人であるが、「おとり捜査」にはその危険性もあるはずである。そうした議論はまったくなしにこういうことがたびたび起こるようになればまずくははないのだろうか
もちろんどんな事件でも警察に全て任せておいて大丈夫だとはいえそうもない状況が一番まずいのかもしれない