ドルフィンベルベット

高齢馬のケアと徒然日記

『終の信託』

2013年07月09日 12時34分01秒 | 読書日記
帰りがけに立ち寄ったブックオフで、この小説を見つけ、原作が朔立木ということを知って手に取りました
現役弁護士である彼?の作品は数も少ないのですべて読みました。

既に映画になり、宣伝は見ていましたが、この小説があの川崎K病院での事件と知り、さらに興味深く読みました。

物語は(検察からの呼び出しで)検察庁に入るところから、聴取が終わって、そのまま逮捕されてしまうところで終わりです
その中に、当事者である女医さんの回想と、どうしても検挙したい検事の策略が描かれています。

患者は末期の喘息(公害)で、自分の病期を悟り、主治医である医師に、苦しんで死にたくない、そして、管に繋がれて意識のない状態で延命せずに、その時には死期を決めて欲しいと託します。
そして、その時には特別な子守唄をうたって欲しいとも。

患者と医師は18年の闘病の中で厚い信頼関係ができていました。

その後、彼は心肺停止状態で病院に運ばれます。
ここで1時間も蘇生処置をして心臓が動き、6日後に自発呼吸が出ます。
ただ、すでに植物状態にありました。(※ただし脳死判定テストは未実施)
さらにはストレスによる胃潰瘍からの出血が出始めます。

その状態は、患者がもっとも望まないものであり、女医さんは気管チューブの留置目安(2週間)を機に、家族に抜管について話します。
もちろん、それが患者の最後になるということも伝えます。

彼女はそれまでに2度、同じ状況の患者の抜管をしたそうですが、その時には間もなくそして苦しまずに亡くなったとのことでした。

が、しかし、今回は抜管にてこずり(気管が狭くなったため)、さらに、抜管後に患者がひどく苦しみだしたのです。
そこで彼女は動揺し、その苦しみを取り除くために、鎮静剤、筋弛緩剤を致死量投与します。

この致死量の薬の投与が、殺人罪に問われたのです。

私は、これが罪かそうでないかということは言いませんが、私の家族だったら、感謝したと思います。
否、それ以前に、心肺停止状態だったときに立ち会えれば、1時間の蘇生は拒否したと思います。
※一般に30分以上心肺停止してからの蘇生は予後が悪い(多臓器:特に脳へのダメージ)

それはこの患者さんも望んでいたことじゃないのかな?とも思いましたが、そういう状態で運ばれてきたら、全力で蘇生してしまうのが医師なのでしょう。
なんともせつないです。

ちなみに、これが検挙されたのは事実から3年後で、内部告発によるものだったようです。
女医さんは最高裁で有罪となっています。
コメント (6)
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