以前読んだ、そらおっつぉろちー小説『無痛』
そして今回は『廃用身』。
あれー、この著者(久坂部羊氏)って医者だっけ?と驚いていたら、ちゃんと以前の記事に書いていました
http://blog.goo.ne.jp/alohadream/e/0236f439a80591b071138162f6a26375
前半は、デイケアの雇われ院長である主人公が、独自の奇想的治療(厳密には治療ではなくケアなのだそうですが)について、その導入や効果について原稿にまとめています。
読みながら、『終の信託』に引き続き、完全にフィクションと思いこんで、「あれー?こんな事件あったっけー?」とか本気で悩みました
廃用身とは病気などで麻痺して動かなくなった手足のことです。
運動麻痺はあっても痛みやしびれなどの感覚は残っていたり、移動や介護上、負担となることがあります。
そこで医師は廃用身の切断を思いつくのです。
しかし、廃用身を切断することは保険上はできないので、ニセの病名をつけて手術をする、完全な違法行為です。
そこに行き着くまでに葛藤を繰り返しながら、一人の患者が実施すると、その効果から次々と希望者が出てきます。
事故などで突然手足を失うのと違い、廃用身はそれ自体を苦痛に思う患者が多いことから、切断することで楽になり明るくなる、のだとか。
それから、手足の分の血流が脳に回り、知能が上がる、とも。
あまりにリアルで最もらしく、「あぁ、そうかも」なんて思ったりもしました
でも、いくら邪魔に思える手足でも、ボディイメージの変化を気にしない人はいません
本人も、家族も、周囲の人も。
後半はマスコミに叩かれてある事ない事を暴露され、自ら命を絶ちます。
彼の最後のメモには、「頭は私の廃用身」とありました
患者を想い、介護する家族や職員を想う誠実な医師、・・・なのですけどね。
『安楽病棟』を思い出しました。
この小説が書かれたのは2003年です。
今では神経や脳の再生医療もどんどん進化しています。
臨床への応用はまだまだ先かもしれませんが、廃用身という言葉が無くなる日もきっと来ると思います