長すぎる爪にご用心

 横でごろんごろんしたり毛繕いしたりしていたみゆちゃんの右前足の爪が、カーペットのループ状になった繊維に引っかかって、はずれなくなってしまった。あっちへ向いたりこっちへ向いたり身体をよじらせて困っているので、手を取って、はずしてやった。その手を見ると、爪が鋭く伸びている。
 あまり爪を使うことのない家の中の猫にとっては、鋭すぎる爪はかえって不都合である。以前、実家の外猫ポチが、部屋の網戸にかけた片手の、爪が網目に引っかかって、はずれなくなってしまった。困ったポチがもう片方の手で何とかしようとしたところ、結局両方の手が網戸に引っかかって動けなくなってしまった。たまたま部屋の中にいた父が見ていたから笑い話ですんだけれど、もしそれが誰も見ていないところだったなら、大事である。
 ポチは外猫で、ときには縄張りを守るために爪が必要であるだろうから、ほどほどの長さを残して切ってあるけれど、みゆちゃんの場合は、ほとんど完全室内飼いである。長いとじゃれられたときに人間も痛いし、本人も上のような不都合があるから、切れるチャンスがあるときに、できるだけ短く切っている。
 ところが、そのチャンスがなかなかない。起きているときはもちろんのこと、熟睡しているように見えるときでも、いざ爪を切ろうとすると、前足をすぐに身体の下へ引っ込めてしまうので、みゆちゃんの爪を切るのは至難の技なのである。今回もまた、どうせなかなか切らせてもらえないだろうなと半ばあきらめつつ、眠っているのを見計らってみゆちゃんの前足をそっと掴むと、予想外に起きる様子がない。肉球を軽く押して爪を出し、ぱちんぱちんと、あっけなくすべての指の爪が切れてしまった。
 みゆちゃんは、カーペットに爪が引っかかったことに懲りたのかもしれない。だけど、手を差し出して切って欲しいと言うことは猫のプライドが許さないから、熟睡して気づかないふりをして、爪を切られたのだろう、なんていう風に考えるのは、勝手に解釈しすぎなのだろうけれど。
コメント ( 8 ) | Trackback ( 0 )