楽屋のスピーカーから聞こえてくる、
先輩に対するすさまじい愚痴。
・・・って、
マイクがONになってるんだぞ!
劇場じゅうのスピーカーから流れてるぞ!
笑いながら聞いていた楽屋のみんなが、
はっと我に帰りました。
もし先輩に聞かれたらどうするんだ!
「止めに行く?」
「あ、うん。これはヤバいよね」
みんなが動き始めたところで、
「あと5分で舞台集合でーす!」
という舞台監督さんの大きな声。
そこでぶつっと途切れて、それでおしまい。
注意する暇もなく、
そのまま流れていきましたが、
次の休憩時間にも、
またぼそぼそという話し声が・・・。
「〇〇さん知ってます?」
「あ、△△の演出の?」
「あの人と仕事したことあります?」
「いや、ないな」
「絶対にやめたほうがいいですよ」
おいおい、また愚痴や悪口か?
それも、またまたマイクONだぞ!
それも!
どこかの演出家の悪口はいよいよマズいだろ!
「いやー、もうほんと、ひどいですよ。
毎日言う事違うっていうか、
こっちが言われた通りにしてるのに、
違うって文句言ってくるんだから」
「 まぁ演出もいろいろだしな」
楽屋でちょっとため息が漏れました。
「どうする?止める?」
「止めるしかないでしょ」
と、また動こうとした時に、
今度は聞き役の人(結局誰かわからず)が一言。
「だけど、こういう現場で、
そんな話はしないほうがいいぞ。
この仕事は信頼関係で成り立ってるんだから。
誰かに聞かれたりしたら、これからやりにくくなるぞ」
・・・はい。誰かどころか、みんな聞いてます。
まぁ、止めに行かなくても良さそうだと安心したものの、
これほど人の愚痴や悪口ばかり言っている若手君。
一人前になるにはまだ道は遠いなと、
みんな心の中で思ったのでありました。
いやしかし、ほんとに、マイクというヤツは、
どこで何の声を拾うかわかりません。
数年前。
そこそこ大きな劇場に出たときのことでした。
<つづく>
【オマケ写真】
とある公演の場当り現場。これが客席です。
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