最近特に懐かしく感じている「朝比奈の音」。
むろん朝比奈隆指揮する、オーケストラの音色のことだ。
70年代後半にFMから流れてきたチェリビダッケの音楽に刺激され興味を持ち、プライベートCDとやらを買いあさり、録音の良いものも、酷いものも聴きまくって、そして85年10月、ついにチェリの生演奏の洗礼を受け、どうしてチェリビダッケが録音に消極的だったかが、その時すぐに頭の中で理解できたように感じた。
音楽はスピーカから出てくる音だけが全てではないということを・・・
録音したものには、入りきらない部分が多くあるということを・・・
朝比奈のレコードにも当然ながら同じ事が言える。ライブ録りが多かった朝比奈のCDやレコード。確かに会場の雰囲気は伝わるようには思うが、こと演奏については、その会場にいて実際に聴いていた時とは印象がまるで違ってしまうことばかりで、がっかりすることばかり・・・
それでも、朝比奈の音楽、朝比奈の音を再び体験したい。CDを再生すると、独特の音楽の世界が広がっていく。
当時は、日本人にして19世紀ドイツ風の演奏スタイルとされた朝比奈の音楽。ドイツ人の指揮者よりドイツ的と言われていた朝比奈の音楽の最大の特徴は、各声部がどっしり大きく堂々としていること。特に低弦が安定して大きく聴こえ重厚な分厚い音色がホールを包み込む。だから、楽曲によってマッチするしないが歴然と表現されるが、一度朝比奈の虜になると、たとえフランス物であろうとも聴きたくなり納得してしまうだろう。
こんな音楽の構成だから、ドイツ物、特にベートーヴェンやブラームス、ブルックナーの楽曲にはぴったりとハマっていた。重厚で愚直であり、譜面に忠実を目指した朝比奈の演奏は、最近のやけにスマートで美麗な演奏を貧弱で物足りなく感じさせてしまうのだ。
晩年朝比奈は、世界最長老指揮者と言われ、メデイアに持てはやされてしまい、チケットも取りづらくなり、また聴衆の雰囲気もそれまでとは変わってしまい、アントンKは少し辛かったことを思い出すが、それでも演奏スタイルは、オケの能力の向上とともに変化していくものの、基本的な朝比奈節は最後まで健在だった。
今こうして思い返してみると、やはり朝比奈の演奏で一番好みなのは、70年代から80年代の頃の演奏になる。カラヤンや、ショルティ全盛のこの時代、この世界でも超一流とされる指揮者たちの演奏より、アントンKの心を打つ演奏は、圧倒的に朝比奈/大フィルの演奏だった。嘘だと言うなら聴いてみてほしい。当時のベートーヴェンやブルックナーのシンフォニーを・・・
オケは数段落ちるのに、どうして朝比奈の演奏の方が感動できるのだろうか?
先入観を排除して、自分に正直に心に問うた時アントンKは、やはり朝比奈の演奏を取る。この歳になるまで、どれだけ勇気づけられたかしれないが、これからも、自分の心の中では熱演が繰り広げられていくことだろう。
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