地方遠征先で撮影仲間に偶然出会い、今回の列車の詳細を知らされた。よくよく考えてみれば、つくばエクスプレスの新車、それの甲種回送というだけなのだが、機関車をわざわざ吹田区でEF6627号機に差し替えて、しかも特製のヘッドマークまで用意して運転させるという、「やらせ」振りに感動すら覚え気持ちを持っていかれたのである。
それでも心半ば、半信半疑でどこで待ち受けるかも決めることが出来ず、鉄道撮影の大家J氏のご意見を伺った。まあ顔を見て話し合えば、奮起することはわかっていたが、やはりというか、案の定気が付けば撮影地に心は向かっていた。
この日は台風接近に伴い、不安定な天候が続き、また日没も早いことから、西に行けば行くほど撮影には有利になることはわかっていたが、アントンKの許せるギリギリの選択地として函南を選んだ。この函南の地には思い出もたくさんある。もちろん話は、国鉄時代、ブルトレ全盛時代まで遡ってしまうが、富士山バックのブルトレを狙いに出向いた時、富士山の見え方で、この函南は僕等のセカンドポジションとなっていたのだ。予報を見て、明日は必ず晴れて富士山を拝めると確信して床に就いても、実際には道中に何度も裏切られた。晴れていても、富士を拝めるかは別問題だからだ。富士が綺麗に見えず、心が不完全燃焼の時、この函南の直線へとやってきて、トンネルを飛び出してくるブルートレインに気持ちをぶつけていたのだ。
何十年か振りの函南は、やはり変わり果てていた。富士山バックの名撮影地「竹倉」が撮影不可になった時期と同じ頃かもしれず、調べてみないと明確には語れないが、架線の支柱が木製から太いコンクリート製へと変わり、上下線間の仕切りロープ(通称タイガーロープ)が張られてしまうと、それ以降は全く疎遠になってしまっていた。もしかしたらJR化以降、今回の訪問は初めてかもしれない。そんな他愛もないことを妄想しながら列車を待った。
掲載写真は、そんな懐かしい想いを感じながら撮影した中の1枚。普通ここでこんな撮り方はしないだろう。昔は、踏切の向こう側の直線区間が撮影ポイント。今ではそこまで近づけずホームの西側よりからカメラを向ける。複線トンネルは当時と変わらなく見えるが、電柱、架線は張り巡り大きく様変わりしていた。ここで当時のブルートレインと同じポジションで、敢えて切り取ってみた。人気者の機関車が牽く甲種回送の画像は、今やSNSで五万と見られるから、それで楽しむのも現代の鑑賞法の一つだろう。アントンKは、もう横並びは卒業だ。独自性の強い新たな世界を目指したい。
2019-09-22 8862ㇾ EF6627 TX-3000 甲種回送 JR東海/東海道本線:函南にて
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