杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々〈2〉魔海の冒険

2010年06月24日 | 
リック・リオーダン作  金原瑞人・小林みき訳
ほるぷ出版

オリンポスの神ポセイドンと人間の母親との間に生まれたパーシーは、ある日学校で怪物に襲われる。ハーフ訓練所に戻ってみると、タレイアの松が何者かに毒をもられて枯れかかり、訓練所は危機に陥っていた。タレイアの松を復活させる魔法の道具を求めて、「魔の海」へと向かったパーシーの前に、クロノスの手下となったかつての友人ルークがあらわれる!新たに判明した家族の秘密を受け入れられないまま、ふたたび冒険へと向かうパーシーの行く先に待つものは―。(扉書きより)

映画が面白かったので、原作に興味を持ち、続編となる(2)から読み始めましたが・・主人公の年齢設定や細かいエピソードが映画とは異なるようで、これは(1)も改めて読んだほうが良さそうです。

シリーズになっているので、パーシーの成長と共に仲間が増えてやがて「決断の時」を迎えるというお話なのかな?その点では「ハリー・ポッター」の状況設定と似ているような。ただ、こちらはギリシア神話を現代のアメリカに移して、魔法使いならぬ神と人間のハーフという特殊能力を持つ少年少女を主人公群に設定しているのが興味をそそります。

ADHD(注意欠陥多動性障害)と難読症という人間界ではハンデとされる障害を持つパーシーは、いわゆる普通の学校では問題児扱いですが、ハーフ訓練所の仲間といるときには全く問題となりません。

今回は、アナベスやキュクロプスのタイソン(後に義兄弟と判明)と共に毒を盛られたタレイアの松と囚われの友人グローバーを救うべく「金の羊毛」を探す旅に出たパーシーたちの冒険行が書かれています。

前作で登場の裏切り者ルーク(ハリポタのドラコみたいな関係?)との対決はまたもや次巻に持ち越しですが、犬猿の仲のクラリサとの間には仲間という絆が生まれそう。 自分以外の「兄弟」の存在に戸惑いながらも友としてかけがえのない信頼で結ばれていくパーシーとタイソンの姿も好ましかったです。

現代の道具に形を変えた数々の神の使うアイテムもユニーク。今回はルークの父であるヘルメスがパーシーに与えた風を送る水筒や活力剤の小瓶、必要なものを入れたダッフルバッグなどが活躍します。

ヘルメスの助力の裏には父親としてルークを心配している気持ちがあり、パーシーの父であるポセイドンも表立っては何も声をかけなくても窮地の際にはさりげなく救いの手を差し伸べています。この物語は、親である神に対する思春期の子供たちの葛藤が裏テーマとも言えるかな

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

夏時間の庭

2010年06月24日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2009年5月16日公開 フランス 102分

パリ郊外の邸宅に家族が久々に集まり誕生日を祝った夏の日、母エレーヌ(エディット・スコブ)は自分が死んだら家も画家であった大叔父ポールの美術品コレクションもすべて処分するよう長男フレデリック(シャルル・ベルリング)に遺言する。一年後、母が急逝すると、愛着ある家や遺品を手放すことをためらうフレデリックだったが、それぞれアメリカと中国に生活の拠点を移している長女アドリエンヌ(ジュリエット・ビノシュ)と次男ジェレミー(ジェレミー・レニエ)の事情や、莫大な相続税という現実問題に直面し・・・。

かつてアトリエとして使われていた家の所蔵品としてオルセー美術館の全面協力のもと本物の美術品が使われているのも見所です。コローの風景画、ルドンのパステル画、アール・ヌーヴォーの家具デザイナーのルイ・マジョレルの作品やフェリックス・ブラックモンの花器などが日常使いされているという設定の贅沢さに美術品愛好家にはため息ものでしょう。

三世代にわたる家族の物語を、煌く夏の陽光と草木の柔らかな緑が爽やかな広大な庭とその奥に佇む瀟洒な一軒家が時の流れの中で静かに見つめているようでした。

かつては画家だった大叔父のアトリエと彼が遺した貴重な美術品コレクションを守ってきた母の小さな秘密とは、彼女と大叔父との関係でした。「思い出や秘密は私と共に消えてゆく」と考え、子供たちの将来を見越しそれぞれの負担にならないように生前に自分の死後の準備を進めていた母の気持ちも、思い出の残る家や美術品を出来れば手放したくない長男の気持ちも、外国に拠点を移して新しい生活を選択した弟妹の気持ちも、それぞれが胸に迫ってきます。遺産を巡って兄妹で争うのではなく、互いの気持ちを労わりあう姿にも心が温かくなりました。

時の流れや世代交代の中で変わって行く家族の姿と、永遠に変らない大切な思い出や家族の絆。それらが母から子へ、子から孫へと継承されていく象徴的なラストシーンにしみじみとした余韻が残りました。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする