粕谷 知世(著) 中央公論新社(刊)
大きな樫の木、瓦屋根、レンゲ草に、おひめさま…そして、春の日に出会う不思議。季節のおとないとともに成長する少女の物語。懐かしい風景の中、四季を通して風美が経験するちょっと不思議な出来事とは…少女の成長と家族を描いた物語。(内容紹介より)
「しゃばけ」シリーズの畠中恵氏がエッセイの中で紹介していて読んでみたくなりました。
物語は一人の少女の成長を追って、4つの章に分かれています。
『雛の夜』風美四歳の春
『祭りの夜』十一歳の夏
『月の夜』十五歳の秋
『年越しの夜』十七歳の冬
主人公である風美には病弱な弟と彼の面倒で忙しい母、仕事で家族とすれ違いの多い父、昔気質の働き者だけど気の強い祖母がいます。
幼いころは、弟が具合が悪くなる度に両親は彼にかかりっきりで、風美の面倒は祖母が見ていたのですが、幼い風美にとってはがみがみと怒る祖母は恐い存在であり、愛されている実感に乏しい相手でした。
古い大きな日本家屋の中で、日中一人きりで留守番をしていた彼女の友達は、パズルのお姫様や、トイレのタイルのパンダくんや、こけしやお雛様です。また仏間の写真の「お姉さん」も見守ってくれました。『雛の夜』ではそんな風美とお雛様の夜中のやりとりが書かれます。
やがて小学生になった風美は、空想の世界から学校の友達に目が向いていきます。「写真のおねえさん」が夭折した父の姉の稲子さんだったこともわかります。けれど、ある不幸な事件が起こり大切な友達が亡くなってしまいます。・・『祭りの夜』
『月の夜』では受験と反抗期を迎えた風美が、自分と言う存在について悩み考える章です。祖母の稲子さんに対する本当の思いを風美が知るにはもう少し時を待たねばならないけれど、両親の喧嘩に対して冷静に対処できるほどには大人になった彼女を見ることができます。
そして『年越しの夜』ではすっかり於いて記憶も混濁し始めた祖母の行方不明事件を挟み、自らの長年の寂しさに気付き、吐き出す風美がいました。逆に両親や祖母がどういう気持ちで自分に接していたのかも理解します。また弟の小さな秘密と彼の成長にも気付かされます。
祖母の稲子さんへの本当の思いが明かされるエピソードでは、『祭りの夜』の藤崎さんのお母さんにも重なる祖母の号泣する姿に「母」としての後悔や辛さ・悲しさを感じ、またそれが浄化されていく喜びをも感じることができた気がしました。
うん。人はやっぱり愛されて育っていくものなんだよ
大きな樫の木、瓦屋根、レンゲ草に、おひめさま…そして、春の日に出会う不思議。季節のおとないとともに成長する少女の物語。懐かしい風景の中、四季を通して風美が経験するちょっと不思議な出来事とは…少女の成長と家族を描いた物語。(内容紹介より)
「しゃばけ」シリーズの畠中恵氏がエッセイの中で紹介していて読んでみたくなりました。
物語は一人の少女の成長を追って、4つの章に分かれています。
『雛の夜』風美四歳の春
『祭りの夜』十一歳の夏
『月の夜』十五歳の秋
『年越しの夜』十七歳の冬
主人公である風美には病弱な弟と彼の面倒で忙しい母、仕事で家族とすれ違いの多い父、昔気質の働き者だけど気の強い祖母がいます。
幼いころは、弟が具合が悪くなる度に両親は彼にかかりっきりで、風美の面倒は祖母が見ていたのですが、幼い風美にとってはがみがみと怒る祖母は恐い存在であり、愛されている実感に乏しい相手でした。
古い大きな日本家屋の中で、日中一人きりで留守番をしていた彼女の友達は、パズルのお姫様や、トイレのタイルのパンダくんや、こけしやお雛様です。また仏間の写真の「お姉さん」も見守ってくれました。『雛の夜』ではそんな風美とお雛様の夜中のやりとりが書かれます。
やがて小学生になった風美は、空想の世界から学校の友達に目が向いていきます。「写真のおねえさん」が夭折した父の姉の稲子さんだったこともわかります。けれど、ある不幸な事件が起こり大切な友達が亡くなってしまいます。・・『祭りの夜』
『月の夜』では受験と反抗期を迎えた風美が、自分と言う存在について悩み考える章です。祖母の稲子さんに対する本当の思いを風美が知るにはもう少し時を待たねばならないけれど、両親の喧嘩に対して冷静に対処できるほどには大人になった彼女を見ることができます。
そして『年越しの夜』ではすっかり於いて記憶も混濁し始めた祖母の行方不明事件を挟み、自らの長年の寂しさに気付き、吐き出す風美がいました。逆に両親や祖母がどういう気持ちで自分に接していたのかも理解します。また弟の小さな秘密と彼の成長にも気付かされます。
祖母の稲子さんへの本当の思いが明かされるエピソードでは、『祭りの夜』の藤崎さんのお母さんにも重なる祖母の号泣する姿に「母」としての後悔や辛さ・悲しさを感じ、またそれが浄化されていく喜びをも感じることができた気がしました。
うん。人はやっぱり愛されて育っていくものなんだよ
