杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

新釈 走れメロス

2010年06月29日 | 
森見登美彦 著  祥伝社 発行

あの名作が京都の街によみがえる!?
「山月記」中島敦
「藪の中」芥川龍の介
「走れメロス」太宰治
「桜の森の満開の下」「百物語」森鴎外
の5篇が生まれ変わった!

名作家の作品を現代の京都を舞台にどうしようもない大学生たちの青春物語に仕立て上げる力量に素直に驚きました。登場人物たちが各物語にリンクして出てくることで、繋がりを持たせてあるので、作家の違う5つの物語が一つの物語の章になってしまうのが愉快です。
「走れメロス」以外ちゃんと読んだことがないのがちょっと悔しい。
いずれ原作も読もうという気になりました

山月記
まずはアパートにこもり、ひたすら小説を書き続ける大学生斎藤周太郎が登場。彼はどの物語の中にも名前が出てくるキーパーソンになっています。
己の才能の限界を知り行方不明となった男の話。

藪の中
文化祭の映画制作にまつわる監督(鵜山)、主演俳優(渡邊)・女優(長谷川)、後輩がそれぞれの立場から振り返る形式です。

走れメロス
「真の友情」を示すため、古都を全力で逃走する芽野史郎と彼が戻ってこないことを信じる親友の芹名。彼らの屈折した友情をユーモアたっぷりに描いています。

桜の森の満開の下
恋人を得て、彼女のことを書くことで人気小説家となった男が、それに比例して小説への情熱と彼女への愛情を失っていく話。「哲学の道」の桜並木が象徴的役割を果たしています。

百物語
5編の中の登場人物がほとんど出てきます。主人公は作者(森見登美彦)自身という設定も原典と同じ構成です。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする