杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

僕はイエス様が嫌い

2022年10月12日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2019年5月31日公開 78分 G

祖母と一緒に暮らすため、東京から雪深い地方の小学校へ転校してきたユラは、同級生たちとおこなう礼拝に戸惑いを感じていた。礼拝の習慣や友だちとも慣れていったある日、お祈りをするユラの目の前にとても小さなイエス様が現れる。ユラは願いを必ずかなえてくれるイエス様が持つ不思議な力を次第に信じるようになっていく。(映画.comより)


22歳の若手監督・奥山大史が、脚本、撮影、編集を手がけた、初の長編作品。

星野由来(佐藤結良)は、祖父(二瓶鮫一)が亡くなって独りになった祖母(ただのあっ子)と同居を決めた両親(秋山健一、木引優子)と東京から雪国の町に引っ越してきます・・・ってそうなんだ(^^;

由良が通うことになったのは近所にあるクリスチャンの学校でした。いやいや、どう見ても私立ですね。普通公立じゃ??と思ったらこの話は成立しないわけで・・。
学校には礼拝堂があり、皆自分の聖書を持っています。その独特な雰囲気に気押されるばかりの由良は、晩御飯の時に家族に「友だちできた?」と聞かれつい「うん」と嘘を付いてしまいます。小さなプライドですね😊 

翌日、礼拝堂で「友だちができますように。アーメン」とお祈りした由良の前に小さなイエス様(チャド・マレーン)が現れます。礼拝堂を出ると目の前に一羽のニワトリがいて、それを探しにきたクラスメイトの大隈和馬(大熊理樹)と出会い友達になります。

晩御飯の食卓で友だちの名前を聞かれた由良は「和馬!」と答えます。すると嬉しそうに「今度家に連れていらっしゃい」と言われます。
お風呂に現れたイエス様に「お金を下さい」とお願いしてみると、おばあちゃんが「おじいちゃんのへそくり見つけたから」と千円札をくれました。

翌日学校でクラスメイトたちが話していた流星群を和馬と二人で見る約束をして、夜の教室に出かけますが、ちっとも見えません。そこで由良はこっそりイエス様にお祈りをすると急に沢山の流れ星が見えて大喜びします。

家に遊びに来た和馬と人生ゲームで遊んでいるうちに、和馬の家に別荘があると知った由良は行きたいとせがみます。クリスマスイブの日、和馬のお母さん(佐伯 日菜子)に別荘に連れて行ってもらって、二人で沢山遊びます。敬虔なクリスチャンの和馬のお母さんは優しくていつも笑顔です。

ある日、由良と和馬は登校前に近くの神社に行きます。和馬はサッカーでたくさん点がとれるようにお祈りしたと言いましたが、由良は「願い事は人に話すと叶わないんだよ」と教えません。もしかしたら由良も同じことを願ったのかな。サッカーの試合で和馬は活躍しますが、由良は上手く出来ず面白くなくて帰ってしまいます。和馬は由良を気にしながら一人で下校の途中、坂道で転がったサッカーボールを追いかけて車に撥ねられてしまいます。

翌日。教室で先生(大迫 一平)は「お祈りしましょう」と言い、皆で和馬の回復を祈りました。お見舞いに行ける状態ではないと先生が言っていたけれど、居ても立ってもいられず病院に向かった由良は、管に繋がれ意識のない和馬に話しかけ手を取ろうとしますが、誰かの声が聞こえて病室を出ます。廊下で電話していたのはすぐに駆けつけて来ないお父さんに怒る和馬のお母さんでした。
家に帰った由良は初めて本気で祈りますがイエス様は現れません。礼拝堂でも教室でも真剣に祈りましたがそれでもイエス様は出てきませんでした。

和馬は亡くなってしまいました。和馬の机には先生が飾った白い花が置かれていました。先生から和馬のお別れの会で弔事を読んで欲しいと言われ承諾した由良は「先生。お祈り意味なかったね」と呟きました。

由良はおばあちゃんから貰った千円で、和馬が一番好きだと言っていた「青い色」の花を買い、白い花の代わりに飾りました。

お別れの会で、由良は何度も消して書き直した原稿を淡々と読み上げます。そこに小さなイエス様が現れますが、最前列に座る憔悴しきった和馬のお母さんが目に入った由良は、思いっきりイエス様を叩きつぶしました。

早朝に目覚めてしまった由良はおばあちゃんと張り替えた障子に指で穴を開け、そこから外を眺めました。「サッカーすき?」という声が聞こえ、二人の子供(由良と和馬だね)が雪の校庭へ駆け出す姿が見ます・・・。

一人の少年が出会った友人との短い思い出を淡々と描いた作品ですが、そこに「神様」を介在させているのが異色です。この神様はイエス様でなくても仏様でも良いとは思いますが、困ったことやお願いごとがあると「神様にお願い」するのは誰しも経験があるのではないかしら?

由良は最初は遊び半分でお願いしますが、たまたまその願い事が叶うんですね。でも本気で友だちのことをお願いした時には叶わなかった。現実なんてそんなものですが、その理不尽さを彼はイエス様を「叩き潰す」ことで怒りをぶつけました。

それでも由良の「お別れの言葉」には「大人になっても友だちでいよう」と結ばれています。生身の身体は消えても心の中の存在は消えないことに彼は気付いたのでしょう。
ラストの「穴」から見えた光景はもしかしたら神様がくれたのかも😉 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする