延伸工事が完成したリニア実験線の周辺では既に水枯れという深刻な環境問題が各所で発生している。
初めてこの問題が報告されたのは、1999年の大月市猿橋町朝日小沢地区で、住民が簡易水道の水源としていた沢が枯れた。
2008年にリニア実験線の延伸工事が始まると、翌年、笛吹市御坂町の水源である一級河川の天川が、さらに2011年夏には上野原市秋山の棚の入沢が枯れた。この無生野地区の棚の入沢には、2011年まで尺(約30cm)サイズのイワナとヤマメが泳いでいたというが、今は乾いた川底の砂を晒している。
これらの事実で分かるように地下深く巨大トンネルを掘ることによって地表の水は地下へ抜けてしまうのである。
そこで話は大井川へ戻るが、越すに越されぬ大井川といわれたのは江戸時代のことであって、近年では常に水不足の状態が続いていた。
その理由というのは、電力開発の結果である。ご承知のとおり水力発電は川を堰き止めてダムを作り、水の落差を利用して水車を回して発電するのである。だからダムに蓄えられた水は発電した後で川へ戻されればむしろ流水量は安定するのである。
ところが大井川の場合はここに問題がある。1927年(昭和2年)、大井川本川源流部に田代ダムが完成し、田代第一発電所(認可出力:6800kW)・田代第二発電所(認可出力:21000kW)が稼動した。この田代ダムは富士川水系早川の保利沢ダムへ導水をしており、大井川と富士川を跨いだ水力発電が行われた。大井川の水はトンネルを通して山梨県側へ送られているのだ。
田代ダムから取水される水量は完成当時の1924年には毎秒2.92トンであった。だが1955年(昭和30年)に東京電力は静岡県に対して毎秒4.99トンの取水量増量を申請、許認可を受けた。だが、この取水量増量は下流の自治体には知らされていなかった。そして取水量増加に伴い田代ダムより下流の大井川は、全くの無水区間となったのである。いわゆる「川枯れ」である。
当時、大井川水系には田代ダムを始め電力会社管理ダムや取水堰堤が数多く建設され、水力発電に利用するため各所から取水していた。このため大井川の水量は急激に減少し1961年(昭和36年)の塩郷ダム完成によってダム下流約20km区間が完全に流水途絶したことにより、一層深刻な事態となった。
近年の大井川の平均流水量は30.9 m³/s(神座観測所1991年~2003年(平均・平水))である。このうちの2.0m³/sが減少するとなると約6.5%にあたる大きな数字となる。
今回のリニア新幹線のルート決定についても、誰が何時決めたのか知らされていない。先ごろ、掛川市の松井三郎市長は「掛川市は生活・農業・工業用水のすべてを大井川に頼っており、JRには減る2トン分を大井川に流すような工事をしてもらわなければ困る」と発言。
牧之原市の西原茂樹市長も「下流はすべて大井川に頼っている。流量減について全く知らされないまま、2年前ずさんにルート決定された」と疑念を述べたそうであるが、自治体の首長をしてそうした発言をするのであるから、私のような市井の凡人にはそうした情報が届くはずがない。
環境影響評価準備書については、静岡市が県に、県がJR東海に、意見書を提出する流れになっており、流域9市町が直接意見することはできない。と、すれば静岡市は流域市町の意見集約を行い適切な意見書を提出する責任がある。
静岡県はさらにこれら市町の意見に加えて県として独自の意見を出す必要があるのではないか。大井川の水を二度と枯らすようなことがあってはならないのである。
初めてこの問題が報告されたのは、1999年の大月市猿橋町朝日小沢地区で、住民が簡易水道の水源としていた沢が枯れた。
2008年にリニア実験線の延伸工事が始まると、翌年、笛吹市御坂町の水源である一級河川の天川が、さらに2011年夏には上野原市秋山の棚の入沢が枯れた。この無生野地区の棚の入沢には、2011年まで尺(約30cm)サイズのイワナとヤマメが泳いでいたというが、今は乾いた川底の砂を晒している。
これらの事実で分かるように地下深く巨大トンネルを掘ることによって地表の水は地下へ抜けてしまうのである。
そこで話は大井川へ戻るが、越すに越されぬ大井川といわれたのは江戸時代のことであって、近年では常に水不足の状態が続いていた。
その理由というのは、電力開発の結果である。ご承知のとおり水力発電は川を堰き止めてダムを作り、水の落差を利用して水車を回して発電するのである。だからダムに蓄えられた水は発電した後で川へ戻されればむしろ流水量は安定するのである。
ところが大井川の場合はここに問題がある。1927年(昭和2年)、大井川本川源流部に田代ダムが完成し、田代第一発電所(認可出力:6800kW)・田代第二発電所(認可出力:21000kW)が稼動した。この田代ダムは富士川水系早川の保利沢ダムへ導水をしており、大井川と富士川を跨いだ水力発電が行われた。大井川の水はトンネルを通して山梨県側へ送られているのだ。
田代ダムから取水される水量は完成当時の1924年には毎秒2.92トンであった。だが1955年(昭和30年)に東京電力は静岡県に対して毎秒4.99トンの取水量増量を申請、許認可を受けた。だが、この取水量増量は下流の自治体には知らされていなかった。そして取水量増加に伴い田代ダムより下流の大井川は、全くの無水区間となったのである。いわゆる「川枯れ」である。
当時、大井川水系には田代ダムを始め電力会社管理ダムや取水堰堤が数多く建設され、水力発電に利用するため各所から取水していた。このため大井川の水量は急激に減少し1961年(昭和36年)の塩郷ダム完成によってダム下流約20km区間が完全に流水途絶したことにより、一層深刻な事態となった。
近年の大井川の平均流水量は30.9 m³/s(神座観測所1991年~2003年(平均・平水))である。このうちの2.0m³/sが減少するとなると約6.5%にあたる大きな数字となる。
今回のリニア新幹線のルート決定についても、誰が何時決めたのか知らされていない。先ごろ、掛川市の松井三郎市長は「掛川市は生活・農業・工業用水のすべてを大井川に頼っており、JRには減る2トン分を大井川に流すような工事をしてもらわなければ困る」と発言。
牧之原市の西原茂樹市長も「下流はすべて大井川に頼っている。流量減について全く知らされないまま、2年前ずさんにルート決定された」と疑念を述べたそうであるが、自治体の首長をしてそうした発言をするのであるから、私のような市井の凡人にはそうした情報が届くはずがない。
環境影響評価準備書については、静岡市が県に、県がJR東海に、意見書を提出する流れになっており、流域9市町が直接意見することはできない。と、すれば静岡市は流域市町の意見集約を行い適切な意見書を提出する責任がある。
静岡県はさらにこれら市町の意見に加えて県として独自の意見を出す必要があるのではないか。大井川の水を二度と枯らすようなことがあってはならないのである。