日々是好舌

青柳新太郎のブログです。
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柚子湯して 南瓜を食ふて 冬至かな

2016年12月21日 13時02分23秒 | グルメ
 日本には、古来から季節の節目などにお供え物を飾る風習がある。たとえば、ひな祭りには菱餅、端午の節句の柏餅、夏の土用にはウナギなどの「う」のつく食べ物、十五夜には月見だんごなどといった類のものだ。

 その風習のひとつに、冬至の運盛りがあり、 冬至の七種と呼ばれる食べ物をお供えしていた。

【冬至の七種(ななくさ)】

・南瓜(なんきん)※かぼちゃ
・蓮根(れんこん)
・人参(にんじん)
・銀杏(ぎんなん)
・金柑(きんかん)
・寒天(かんてん)
・饂飩(うんどん)※うどん

 一見すると共通点が浮かばないが、よく見ると「ん」という文字が2回ずつつく食べ物である。

 この他にも大根、蜜柑、蒟蒻、昆布など「ん= 運」のつく食べ物をお供えしていた。

 「ん」のつく食べ物は「運盛り」といわれて縁起をかついだり、また「いろはにほへと」の47音が「ん」で終わることから、「ん」が物事の終わりをあらわすといった「一陽来復」の願いも込められているのである。


 もう一つの冬至の風習に柚子湯がある。柚子には、 血行を促進する効果があり、風邪予防に良いとされている。

 寒さ厳しい冬を健康に過ごすため、冬至に栄養豊富なかぼちゃを食べ、柚子湯に入るという風習は夙に有名である。

 他にも、ゆずの香りが「邪気払い」になるという説や、万一何かあっても、「融通が利く(ゆうずう=ゆず)」という言い伝えもあります。

 我が家も今日は柚子湯に浸かり、南瓜を食うことになる。

鮭突いて開悟大内無辺流

2016年12月12日 13時15分22秒 | 日記
 

 江戸時代になると,槍は武士のもつ武具として,またたしなむべき武術として非常に重要な位置を占めるようになり,腰の二刀とともに武士階級を象徴するようになった。流派も数多く出現するが,素槍では,大内無辺の無辺流,竹内藤一郎の竹内流,中山源兵衛吉成の風伝流など,鎌槍では,奈良宝蔵院の僧胤栄の宝蔵院流(これは高田派,中村派,礒野派などに分派する),鍵槍では,内海六郎右衛門重次の内海流,佐分利猪之助重隆の佐分利流,管槍は,伊東紀伊守祐忠の伊東流,小笠原内記貞春の日本覚天流,津田権之丞信之の貫流などがおもな流派である。江戸時代初期にほぼ完成をみた槍術は,中期から後期にかけて技や理論もくふう研究され,とくに練習法の進歩はめざましく,双方が防具を着けて仕合稽古を行うようになった。

 無辺流の流祖は出羽国横手郡大内庄(現秋田県横手市)の人、大内無辺(生没年不詳。天文-永禄(1532-70)のころ)。年少のころより戸倉河畔で成長し、川に遡上する鮭を突き捕るのが業で、それより槍術を開悟した。

 流祖は平鹿の真人山(秋田県横手市)に祈念して霊夢をうけたと言い伝えている。「無辺風月眼中眼、不尽乾坤燈外燈、柳暗花明十万戸、敲明処々有人鷹」の頌をもって必勝の極意をさとって流名とし、幻槍の伝を奥とした。

 木槍試合をすること百二十三回、敗れたことわずか三度だったという。写本『無辺流槍手鑑』が伝わっている。その子上右衛門、孫清右衛門とよくその業を継ぎ、清右衛門の門人 椎名靭負佐(しいなゆきえのすけ)は大坂夏の陣に従軍して功名をたて、その門人 小泉七左衛門吉久は大坂に住み無辺流を広めた。

 一方、無辺の甥の山本刑部宗茂は、越後国(新潟県)村松から江戸に出て山本無辺流を唱えたが、その孫加兵衛久茂は名手の聞こえ高く、1637年(寛永14)柳生宗矩の別邸においてその妙技を三代将軍家光の台覧に供したのをはじめ、しばしば台覧の栄を受け、1667年(寛文7)には男久明(ひさあきら)・久玄(ひさはる)を伴って将軍家綱(いえつな)の台覧を賜り、同年12月ついに御家人に登用され、廩米(くらまい)200俵を給せられた。このほか羽州鶴岡の田村八右衛門秋義を祖とする無辺無極流など、幾多の分流が全国に広がりをみせた。

 鮭を突き捕る銛の技から槍術の一流を立てた大内無辺のような人物こそ名人・達人というのであろう。

人一倍 持っているのは 土鈴です

2016年12月12日 11時09分23秒 | 日記


 人類がいつの頃から鈴を用いているのかについて確たる定説があるわけではない。しかし、縄文時代の遺跡などから焼き物の鈴、所謂「土鈴」が出土し、弥生時代には銅鐸の存在が知られている。古墳時代に作られた埴輪の人物や馬や犬には鈴をつけたものがあり、古墳からは金銅や白銅製の鈴のついた馬具などが出土している。

 文献的には『日本書紀』の顕宗紀の置目という老婆に関する記述に「縄の端に鐸を懸けて鳴らし、取次の者に到着を知らせよ」と詔したとあるのが古いようだ。

 律令国家が成立すると駅馬伝馬の制度が整備されるが、このときに出来たのが駅鈴である。駅鈴は官吏が地方へ公務で出張するときに伝符とともに朝廷より支給されたものである。この鈴の威力たるや絶大で、官吏は鈴を鳴らすことによって官吏たる身分を示し、駅に着いて伝符を示せば、次の駅までの馬や舟や人足を用意させることができた。その内容は、官吏一人に対して駅馬一疋を給し、駅子と呼ばれた人足二人が随行し、うちの一人が駅鈴を持って馬を引き、他の一人は官吏と馬の警護をしたのである。

 鈴は縄文時代に胡桃の実や豆の莢を振ると音がでることから着想を得て作られた道具というのが有力な説のようだが、私は鈴の割れ目から胎児を孕んだ女体を模した物ではないかと勝手に解釈している。

 土鈴の一般的な作り方は、先ず、粘土を丸めて中に入れる玉を作る。これを紙や布や木の葉などの燃えるもので包んでおいて、それに粘土をかぶせて成形し、割れ目の部分を切り取り、乾燥した後に焼成すれば燃えるものは灰になって割れ目からこぼれ出るので中空の鈴ができるという寸法である。金属で鋳造する場合も似たような手法ではないかと思われる。

 近代において鈴を愛した人で最も有名なのは伊勢松阪の人で国学者の本居宣長であろう。彼は鈴を愛して古鈴を収集し、自らの住居を鈴屋と号していた。宣長のところに集められた鈴は青銅製や鉄製の由緒あるものである。

 さて、いつもながらの冗長な前置きはこれくらいにして私の趣味の土鈴蒐集について申し上げよう。私が蒐集しているのは江戸時代以降に各地の郷土玩具や縁起物として作られている土鈴であるが、例外として台湾のタイヤル族の魔除けの鈴や唐招提寺の推古鈴や駅鈴のレプリカなど金属製の鈴も僅かながらある。

 私は若年の折りに横浜市南区の弘明寺界隈で数年間暮らした。薄給の身であったから東京銀座の勤務先まで往復する以外はほとんど外出も出来なかったのだが、時折、路線バスに乗って近くの鎌倉へは遊びに行った。あるとき鎌倉の鶴岡八幡宮近くの土産物屋で鳩をあしらった焼き物の鈴を見つけ記念にと思って一つ買い求めた。思い起こせば今からざっと四十五年も前のことになる。この鳩土鈴はその後もずっと私の傍らにあって転居すること十四回目の今の住居でも居間の飾り棚に大事に並べられている。

 その後も旅先などで土鈴を見つけると買って帰ったものがざっと三〇〇個ほどもあるだろうか。居間の壁に設えた棚に所狭しと並んでいる。その一つ一つに旅の思い出があるわけだが今ではすっかり忘れてしまったものもある。

 今この原稿を書きながら憶えているものを幾つか拾ってみよう。

 「虫切の鈴」は、甲府市御岳町にある金櫻神社の鈴だが、最近作る人が途絶えたと仄聞した。土鈴五個を紅白の糸で結び、子供の腰に付けておき、これが割れると「虫が切れた」と喜ぶというお呪いの鈴である。金櫻神社は「日本三御嶽」の内の「花の御嶽」と呼ばれ、虫切の鈴は日本三土鈴の一つとされる。

 「英彦山ガラガラ」は、大和の大峰山、出羽の羽黒山と並ぶ修験道の三大霊場の一つである九州の英彦山の鈴で、これも日本三土鈴の一つに数えられている。五個の小さな素焼きの土鈴に青と朱で彩色し、藁しべで無造作にくくった素朴なもので、振るとガラガラと鳴るからガラガラと呼ぶのである。「英彦山ガラガラ ガラガラ鈴は 魔除け虫除け男除け ホラセ 娘年頃 英彦山詣で 鈴をながめて思案顔 ホラセ♪♪」この「英彦山ガラガラ踊り」という歌の作詞者は作家の野坂昭如氏である。

 唐津くんちの赤獅子青獅子」の土鈴は、明日が曳山という前の日に唐津神社の隣の曳山展示場で購入した。「赤獅子青獅子浦島太郎、義経鯛山鳳凰丸飛龍、金獅子武田上杉頼光、珠取鯱七宝丸♪♪」と子供が唄うように現存する十四の曳山の一番目と二番目を模った土鈴である。この「唐津くんち」というのも「長崎くんち」、「博多おくんち」と並び「日本三大くんち」の一つである。

「大井神社の干支土鈴」は、日本三大奇祭の一つ「島田の帯祭り」で知られる静岡県島田市の大井神社の鈴で十二支セットでいただきたいと社務所へ申し出たら若い巫女さんが一瞬びっくりしたような表情を浮かべたことを憶えている。

 「高砂族の魔除けの鈴」は、台湾の烏来温泉へタイヤル族の民族舞踊を見に行ったときに見つけて土産に買った。真鍮を鋳造したもので呪いの模様が描かれ肉厚に出来ている。この鈴は音色もきれいで大きさも手ごろなので紐をつけて腰に吊るし、安倍川上流の山奥で林道工事をしたときに熊除けの鈴として使った。

 何しろ三〇〇個ほどもあるのだから他にも色々あるのだが限が無いからこの辺で端折っておく。

 土鈴について興味のある方は岐阜県郡上市白鳥町の「日本土鈴館」を訪ねるとよい。ここ には日本各地の土鈴一万六千点以上を展示しているから壮観である。

◆ さびしいときは土鈴を鳴らす 白兎