◆宿六と呼ばれて久し梅雨籠り
(よみ)やどろくとよばれてひさしつゆごもり
宿六とは「宿の碌でなし(ろくでなし)」の略で、『宿』は妻が夫のことを他人に言う際に使う俗称である(現代だと『あの人』『うちの人』など)。つまり、宿六とは仕事をしない甲斐性なしの夫など、ろくでなしな夫を妻が他人に罵る際に使う言葉である。馬鹿亭主など、こうした夫を罵る言葉は時折親しみを込めて使われることもあるが、宿六も同様に親しみを込めて使われる場合もある。季語は「梅雨籠り」で夏。
◆海匂ふ港小路の夏つばめ
(よみ)うみにほふみなとこうぢのなつつばめ
焼津漁港や用宗漁港の風景です。季語は「夏つばめ」で夏。
◆望郷の祭囃子を口ずさむ
(よみ)ぼうきょうのまつりばやしをくちずさむ
神社の祭礼の際に、山車(だし)や屋台の上などで行われる囃子。多く太鼓・笛を主にして、鉦(かね)をあしらう。祇園祭の囃子は「コンチキチン」。季語は「祭囃子」で夏。
◆泡に噎せ旅のラムネに涙ぐむ
(よみ)あはにむせたびのらむねになみだぐむ
昔、松本城で飲んだラムネが美味しくていつまでも記憶に残っている。季語は「ラムネ」で夏。
◆吉野家の牛で乗り切る土用かな
(よみ)よしのやのうしでのりきるどようかな
土用の丑の日には「う」の付く食べ物を食うのがよいとされている。そこで鰻を食うのだが近頃ではシラス鰻が不漁で鰻の価格は高騰している。「う」の付く食べ物は、梅干し・瓜・饂飩・ウズラの卵など幾つもあるから鰻が食えずともちっとも困らない。季語は「土用」で夏。春夏秋冬それぞれに土用はあるが、普通、土用といえば夏の土用 のことである。