一般質問の通告を提出したあとは、担当課とのヒアリングある。
その直前に、携帯から着信のメロディが流れた。
見たことのない番号だった。
島根の・・・という女性の声におもわず、
ていちゃんに何かあったの? と、訊き返していた。
彼女の知り合いの人が、わたしの名前を検索してくれて
議会の議員一覧から携帯の番号を知ったという。
やはり、彼女はていちゃんのおつれあいだった。
ていちゃんは、3年前に亡くなったという。
元気に島根で暮らしていると思っていた健さんは
年賀状を出し続けていたのだ。
彼女は、健さんからの年賀状が届くと、
大好きな健さんからの年賀状だよ・・・と、
ていちゃんに語り掛けながら、仏壇に供えていたという。
て
いちゃんは、原発の下請けの会社で働いていた。
定検の仕事で敦賀に来たら、
八新へ顔を出すのが一番の楽しみだと言っていた。
健さんも弟のように、ていちゃんを可愛がっていた。
いっしょに敦賀マラソンに出場したり、
旅行にも行った。
まじめでやさしくて、
どこか飄々とした雰囲気を漂わせていた、ていちゃん。
島根でおつれあいに出会い、結婚して家庭を築いた。
そのあとは、原発の仕事を止め、島根で別の仕事についていた。
でも、福島の原発事故のあと、会社から要請があり
原発の仕事に戻ったらしい。
亡くなった場所は、東海村だったという。
おつれあいは、ていちゃんからいつも
敦賀の話を聞かされていたという。
健さんにていちゃんが亡くなっていたことを
伝えてほしいと泣きながら言っていた。
すぐに健さんに電話して、番号も伝えた。
うそやろ・・・といったまま絶句する健さん・・・
6時過ぎ、雨がポツリポツリ、車のフロントガラスを打ちだした。
家に向かいながら次第に強くなる雨を見ていたら
急に、涙が込み上げてきた。
家に帰りつくと、カウンターに座る健さんの大きすぎる背中が
なんだか小さく見えた。