秋になると

2005-09-30 22:09:56 | 折りに触れ思うこと
【神無月の頃】 ~第十一段

 神無月の頃、栗栖野(くるすの)といふ所を過ぎて、ある山里にたづね入る事侍りしに、遥(はる)かなる苔の細道をふみわけて、心細く住みなしたる庵(いほり)あり。木の葉に埋(うづ)もるる懸樋(かけひ)の雫(しずく)ならでは、つゆおとなふものなし。閼伽棚(あかだな)に菊・紅葉など折り散らしたる、さすがに住む人のあればなるべし。  かくてもあられけるよと、あはれに見るほどに、かなたの庭に大きなる柑子(かうじ)の木の、枝もたわわになりたるが、まはりをきびしく囲ひたりしこそ、少しことさめて、この木なからましかばと覚えしか。 

(現代語訳)    十月の頃、栗栖野という所を通り過ぎて、ある山里にたずね入ることがあり、はるかに続く苔むした細道を踏み分けていくと、ひっそりと人が住んでいる草庵があった。木の葉に埋もれている懸樋から落ちる水のしずくの音のほかに音を立てるものはない。閼伽棚には菊や紅葉などを折って散らし置いてあるのは、それでもやはり住む人があるからなのだろう。 こんなさびしいところでも住むことができるのかと、しみじみ思って見ているうちに、向こうの庭に、大きなみかんの木で、枝もしなうほどたわわに実がなっているのがあり、人に盗まれないように周囲を厳重に囲ってあるのは、少し興ざめがして、この木がなければどんなによかったかと思ったことだ。

 高校の古典で習ったこの一節が好きで忘れられず、一字一句とは云いませんが空で覚えていました。でも、徒然草だとは知りませんでしたし(^0^;) たわわに実っていたのは柿だと思っていました(..;) 
この季節になるとこの一節を思い、したり顔で~神無月の頃栗栖野といふところを過ぎて~と悦に入っていたのであります。
  
ナナカマドはいよいよ鮮明な朱となり、長くのびたススキの穂は夕暮れに映え、秋が深まっていきます。

神無月の頃・・・長い夜は嫌いなんですよね。

最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
早や、十月 (captain-jack)
2005-10-01 00:23:27
おお~、どすこい! 土俵になってる。



徒然草ですか、良い調子の名文が多いですよね。私も高校のころ買った黄色くなった角川文庫まだ持ってます。



ナナカマド、大好きなんですけど、関東当たりでは気温が高すぎて生育できないみたいです。(悲)



長い夜は・・・ゆっくり飲みましょうよ。

返信する
ごっつぁんです (asagao007)
2005-10-01 01:00:41
秋色を探していたらこれになった。ウン 満足!

 

そうですね

「あっしにはぁ~ 生涯お酒という強ぇ~味方があったのだぁ~」



いよっ! 親方! と言うところで長い夜も勘弁してやることにします。
返信する
秋色ですか~ (ぷるん)
2005-10-01 20:25:06
凄い!

土俵入り?で迫ってきましたか~(笑)

暑かった夏のけじめで気が引き締まりました



10月1日、今日、家の会社が、5ケ所目の施設をオープンさせました。代表責任者が、親友なのですが、随分の忙しさと苦労をしての期限ぎりぎりのオープンでしたのでひとごとでない感無量となり、涙ウルウルで・・・お花を送らせて頂きました。



<○○スタッフ一同様。一致団結して、明るい雰囲気作りをめざして頑張って下さい>



(思ってもいない、突然の届いた花と、メッセージを見て感激し、全員で思わず花に拍手をしてしまいました)と、涙声でお礼の電話ありまして、それを聞いた私も、又、涙、涙でした。くじけず、あせらず、頑張って欲しいと、思います。~何だか秋なんですかね?

涙っぽいヨ~

返信する
いいお話を・・・ (asagao007)
2005-10-02 11:51:00
夜勤明け、顔も体もボロボロで帰ってきました(◎-◎;) 何だかいいお話ですね。

じんと来るのは秋のせいか?ナニのせいか?涙腺が緩いのは良いことだと思いますよ。どうぞそのまま・・・
返信する

コメントを投稿