なんだかせつなくて

セックスってなんなんだろう。
快楽のためだけなのか。
愛を確かめるという行為なのだろうか。
欲求を満たすものなのか。

よくわからない。

しなければしないで通るものなのだから。


１０年前、手術することになった。
一番不安だったのは、私のはず。
なのに、一番不安がったのは亭主。
オロオロし、自分の不安を誰かにわからせるかのように、来る人、会う人ごとに、私に手術のことをしゃべった。
そして、二度と私とできなくなるかのよう、私を求めた。
私は、そんなことよりも、ただ抱きしめて欲しかった。
求めては欲しくなかった。
静かにしていたかった。
拒絶すれば、次の瞬間から生活に支障をきたすほど、私の精神バランスが壊れるほどの、重い空気が立ち込め、どうして拒絶するのかという尋問にあう。
夫婦としても、セックスに疑問をもち、あきらめとつけた。


無事手術もすみ、帰宅した。
まだ、体力も戻らず、寝たり起きたりの生活。
禁断の生活をその間しいられていた亭主は、我慢できないのかそんな状態の私を、また求めた。
当然、私もそう思っているかのように・・・。
思っている、いない以前の問題だと思う。
重い空気と、その後の生活の支障、諸々もこと。
すでに、生活の中で取得している我慢との様々な駆引きを、瞬時にするすべを持ち合わせていた。


そんな亭主でも、いいところや優しいところはもちろんある。通常の生活の中では、仲のよい夫婦であり家族であることにはかわりはない。
ただ、セックスに関しては、疑問をもちつづけている。
できることならば、家庭に夫婦間にセックスは持ち込んでほしくない。と心の中では思っている。
そんな思いを伝えることをしない、自分自身は何なのだろうかと思う。
余分な風波を立てたくはないのは確かだが。


時折、どうしようもない悲しさや寂しさに襲われるとき。
一人、自室のベットの中で、どうして私には抱きしめていてくれるだけの人がいないのだろうと、涙にくれる。
幼子のように、泣き疲れて寝てしまうまで。