西山 透明水彩
大竹です。今回ご紹介させて頂くのは西山さんの作品です。いつもサラッと描いていつの間にか水貼りを剥がされているので、なかなか写真が撮れずブログアップを逃していましたが、この度ようやくチャンスに恵まれました!
絵画は中々やめ時を見極めるのが難しく、描きすぎるとかえって台無しになってしまう事もあります。水彩画は特にその傾向があり、絵の具を重ねすぎてしまうと色が濁ってしまいます。西山さんはミオスでもベテランで、長い間透明水彩に取り組まれているだけあり、そのやめ時がしっかり見極められていますね。どこを沢山描いて、どこをサラッと仕上げるか、その画面のバランスの取り方もお見事です。
例えば左の絵は、見所でもある小屋と近くの木は色を濃いめに乗せ、地面や背景は色を薄く滲ませて塗っています。サラッと塗っているだけでも、奥に木々がある事や平ではない地面の質感がよく伝わってきますね。これを1本1本すべてしっかり描たり、べったりと地面を隅まで塗ってしまうと、この空気感は損なわれてしまっていたでしょう。何より、絵の中で何が主役なのかがハッキリとしています。
また、右の絵も紙の白を残し方が非常に上手いですね!水面の煌めきや、少し雲がかかった空の様子などが紙の白という"描いていない"部分から伝わってきます。水の青色や奥の山々も色の滲みと感触がとても美しいですね。透明水彩の良さが引き出されています。川の流れる水音や、澄んだ空気の匂いまでも感じられるようです。奥にかかる橋の赤色も、自然物の柔らかい色合いの中でアクセントになっており、画面を引き締めてくれています。その橋の描写も、遠くにある物なのでハッキリと描きすぎず、けれど橋と分かる絶妙な描き込み具合になっていますね!
冒頭でいつもサラッと描いて、と書きましたが、サラッと描いて1枚の絵として完成させるまでに西山さんは何十枚も練習と下準備を重ねられています。本番よりも練習と下準備の方が長いくらいです。描くのにある程度慣れてきた方も、今一度西山さんのように1枚の絵の為に下準備に時間を掛けてみてはいかがでしょうか?