石山 アクリル
大竹です。今回ご紹介させて頂くのは水曜クラスの石山さんの作品です。お友達ご夫婦の写真を見ながら制作されています。
寒色の青を基調としながらも、柔らかな筆遣いと仲睦まじいご夫婦の笑顔により、画面からは暖かさが感じ取れます。人物画を描かれたことがある方にはお分かり頂けると思いますが、人の肌の複雑な色合いを表現するのは中々難しいものです。石山さんの作品では、皮膚の下にある血液の赤みや、影も濁らずに色が作られています。影の色はただ暗くする以外にも、彩度(鮮やかさ)を落としたり、色味を変える事で表現する事もできます。石山さんの作品が温もりに満ちているのも、暗すぎない影の作り方が影響しているのでしょう。また、髪や髭を黒だけではなく紺色が使われているのも良い工夫ですね。洋服の色や影とマッチして、全体にまとまりが生まれています。
眼鏡やスカーフ、帽子などの小物もよく観察して描かれていますね。面を意識した色の塗りにより、しっかりと立体を感じる事が出来ます。細かい所ですが、衣服や帽子の色の変化など非常に美しいですね。絵具そのものの色の美しさも引き出されているように思います。
元の写真が撮られた場所は日差しの強い真夏の海辺だったので、ハイライトの飛ばし方に大変苦労されたそうです。しかも、アクリルを透明水彩のように薄塗りで使われたので、技巧が難しく時間が掛かりました。その強いハイライトのお陰で画面にメリハリが生まれ、より主役である人物がクッキリと浮かび上がっています。人の目は明暗差が強い部分に惹かれやすいので、顔周辺に強い光が入る事で、見た人によりご夫婦の表情が印象的に残る事でしょう。
自分と無関係の人や、好きでもない人をここまで心を込めて描くことはできないでしょう。作品から、ご夫婦の仲だけではなく、作者とご友人夫婦の温かな関係も伝わってきますね。