室井 透明水彩
大竹です。本日ご紹介させて頂くのは室井さんの水彩作品です。入会後の基礎デッサンが終了し、初めてチャレンジした透明水彩画だそうです。笑顔にピースの可愛らしいおばあちゃんの肖像画ですが(すごく似ています!)、写真を見ながらプレゼントする為に制作されていました。
発色の良い透明水彩の特徴を活かし、色を重ねすぎたり、混ぜすぎないよう塗られているのでしょう。絵の具も濁らず全体的に柔らかい色合いでまとまっています。背景の青や緑は、1色を濃淡を作って塗ることで単調にならないよう工夫されていますね。油絵にはない、水彩の美しい滲みがなんとも魅力的です。
帽子やシャツも丁寧に形を描かれており、絵を通じて作者の制作姿勢が見えてくるようです。帽子のつばやシャツの襟、手のひらなどは影をしっかり作り立体感を出していますね。そしてメインとなる人物の顔は凹凸を細かく追い、明暗を捉えています。一番出っ張っている鼻や人中の右側は光が当たり明るい為、色を重ねず薄く塗ったまま残し、目頭周辺のくぼみや鼻の左側、ほうれい線などは影で暗くなっているので色を重ねて濃くしています。人の顔の立体感を表現する上で押さえるべきポイントをきちんと捉えて描かれていますね。
背景と人物の関係も、奥の背景は所々に画用紙の白を残しながら薄く塗り、手前の人物は塗り残しのないようしっかりと絵の具を重ねて塗っていく事で、平面の紙の上で前後感を表現しています。初めての透明水彩という事で、慣れない絵の具の扱いに苦労されたかと思いますが、水彩らしい柔らかく優しい作品になりましたね。
仕事がお忙しく、月に1・2回しか来られないことも多いですが、それでも仕事帰りに通われる情熱に脱帽です。この絵は額装して、無事におばあちゃんに渡せたそうですが、とっても喜んでくださったそうで私も嬉しく思います!