秦野 鉛筆
マユカです。今回は秦野さんの作品をご紹介します!
繊細な描写が目を惹くこちらのデッサン。布や鏡の直線を視線誘導に使い、構成されています。モチーフを上から見下ろしている構図になっていますが、これは実際に高い椅子に座って描かれました。元の形の先入観が邪魔をしてしまうため、形をとるのが難しい構図も自然な視点で表現されています。見下ろすことで、モチーフの一つである鏡を、布のように下に敷いても活かすことができ、立てかけて使った時とは違う表情を見せてくれています。
以前秦野さんが描いていらっしゃった水彩画は、優しく自然な光を感じる暖かな作品でしたが、今回のデッサンでも同じく優しい光を感じることができます。画面を構成しているメインモチーフはもちろんのこと、背景の布やモチーフの下に敷かれた鏡等、空間を構成する物の隅から隅まで丁寧な筆運びで描かれ、全体にしっかりと手を入れつつも主役である骸骨、ビン、植物の三つは特に細かく描きこまれているため、まるで写真のようなピントのつき方をしています。骸骨の石膏は、石膏特有の粉っぽさすら感じさせるほどのマットな質感の描きこみが素晴らしいですね。輪郭線をあまり描かずに、骨の入り組んでいる目元を表現しているためか、とても自然な雰囲気です。
ドライフラワーも、これは花でしょうか。穂の先の方にはぎっしりと詰まった花弁、よく見るとこの1枚1枚ですらしっかりと描かれています。ここまで描きこんでくると、線のようになってしまい、立体感が消えてきてしまうことが多いのですが、さすがは秦野さん。むしろしっかりと丸く、コロッとした印象の植物に仕上がっています。
デッサンを描く視点が変わると、普段とはまた違った表情が見えてきます。こういった見下ろす構図は「俯瞰(フカン)」というのですが、臨場感が生まれたり、空間を広く見せたりといった効果があります。その分描く難易度は上がってしまうのですが、挑戦してみる価値はありますので、皆さんも是非見下ろすような構図で作品を作ってみてくださいね。