杉本 岩絵具・銀箔・金箔/パネルに和紙
花粉症マジ最悪です、一平です!本日は水曜クラスの杉本さんの日本画をご紹介します。
猛々しく咆哮する虎の表情を切り取ったこちらの一枚、初日本画とは思えないくらい自在に画材を操っていますね…。瞳の金箔と牙の銀箔もいやらしくなく使われているので非常に上品でありながら野生の力強さも感じられて素晴らしいです!普通の黄色い虎ではなく、青い虎として描いているのも中国神話に登場する神獣のような特別感を演出しています。そして画面の中ではほとんど顔だけを描写していますが、絵を見ている人に絵の外側にきちんと虎の身体をイメージさせる確かなデッサン力の高さを感じます。実はこれはかなり難しい事なのです。
動物でも人間でも顔だけ描いて!と言われると意外と皆さん描けたりするものですが身体を描くとなると腕が不自然な長さだったりおかしな方向に関節が曲がっていたり、急に難易度が上がります。なので身体が描きたくないから顔だけ大きく描いて絵力を保たせよう、という人がたまにいますが(勿論それも作戦の一つですので悪いことでも何でもありませんよ!)そういった方は表情は感じられるけれども中々画面外の身体を感じない、という事が多いのです。ですが杉本さんのこちらの虎も大胆に身体をカットしている構図なのに、描いていないはずの身体を感じるのです!僕の勝手なイメージでは、前足で踏ん張って少し低姿勢になっていて今から獲物に飛びかかろうとしているような、身体だけでなくそんな場面まで絵を見ていると感じます。もう一度言いますが、描いていないのに、です。人間の脳とはなんとも不思議ですが、ここまで脳みそに想像させているのは杉本さんのデッサン力の高さがあってこそ!こんなにも繊細に虎の模様や毛の流れを表現しているのに、ちゃんと立体感を感じますよね。瞳もただ金箔を貼っただけでなく、瞼に近くなるにつれて暗くなっている。舌などの口内を暗めにすることでヒゲの明るさと銀色の牙の鋭さがより際立ちます。そういった細かい気遣いが後々絵に大きな影響を与えるのです!そろそろ皆さんも画面外に描いていないはずの身体が見えてきましたか?
最終的にとても縁起が良さそうな作品に仕上がったので、寅年の時だけとは言わず来年以降も是非ご自宅に飾って欲しいですね、家宝確定!