モノ作り・自分作り

東横線 元住吉 にある 絵画教室 アトリエ・ミオス の授業をご紹介します。
美術スタッフが、徒然に日記を書いています。

自分の意思をもっと投影しよう!

2022-11-12 17:22:56 | 大人 油絵・アクリル


立野 油彩

岩田です。今回は立野さんの油彩をご紹介します。
ベースがほぼ黒といった背景にライオンが一匹佇んでいるという風景を描いた作品。

この絵の元になっている写真を見ると、まだ鬣が生えそろっていない若いライオンが群れを出され、さてこれからどう生きていこうかといった感じに映ります。

絵を近くで見てみると、黒っぽい背景の中に何色も使って草原の草が描かれているのが分かります。色使いも良く考えられていて、綺麗だなと思います。
主役のライオンの体に使っている色もかなり複雑。例えばプルシアンブルーのような青色のベースに透明色のパーマネントイエローをグレーズしてみたり、濁った色を上から乗せてみたり、背景とは異なった色の遊びをしています。

全体を見た時に前後の空間は考えられているけれど、ライオンのいる位置がここで良いのかとか、背景の左右の明度の変化など、もっと自分の意図があって良いのです。そうすることで更に深みや面白味が出てくるでしょう。

例えば、以前描いた朽ちかけた家の中に気が茂っている様な、ちょっと不思議な絵があるのだけど、今回の作品と比べると作者の意図がもっと感じられるんです。
こうしたら更に面白くなるかな?といった意志を画面に投影していくと、もっともっと良くなると思っています!

作品を画面に近づけて詳しく解説しています!是非こちらもご覧になって下さい。
立野さんのYouTubeはこちら

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注目の1作

2022-11-11 10:52:15 | 大人 油絵・アクリル


箕輪 油彩

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは箕輪さんの油彩作品です。今までご自宅で油絵を描かれたこともあったそうですが、アトリエで本格的に油彩を習って描かれはのはこれが1枚目です。
アトリエの壁に飾ってある間「どうやって描いているのか?」と、油彩を経験されている殆どの方が注目されていましたので、今回は描き方や技法について解説させて頂きたいと思います。少し長くなってしまいましたが、油彩を始めたての方や、制作でお悩みの方の手助けとなれば幸いです。

まず色についてですが、リンゴの下に敷かれている白い布に注目してみましょう。”白い”といってもチューブから出したままの白が使われている場所は殆どありません。見てみますと、グレーがかった水色、黄土色、緑、青といった白とはかけ離れた色の方が多く使われています。それでも、それらを全体で見てみるとちゃんと白い布だと感じる事ができますね。白い布に限らず、油彩では赤いものは赤、と単純に塗るのではなく、様々な色味を含ませながら塗る事で深みを出す事が出来ます。(小学生の油絵紹介動画でも、色を少しずつ変えながら描くやり方が紹介されていましたね)では、この布地に使われている色にはどの様な理由があるのでしょうか。
まずグレーや水色ですが、グレーは白い布の影を思い浮かべた際、最も想像される色かと思います。しかし、白とグレーの無彩色(鮮やかさのない色、モノクロやグレー)だけでは味気なく薄っぺらい印象となってしまう為、影の部分に青みを加算しています。影に青色を使用する理由は様々ですが、光源が太陽光の場合は空の青の光が反射して青くなる・影の部分は温度が低いので、冷たいイメージを持たせる為などがあります。(コチラのツイート分かりやすいです)
次に黄土色や緑・赤ですが、これらは同じ空間にある物の色を組み込んでいます。黄土色は棚の木、緑や赤はリンゴの色ですね。おない空間に置いてあるものに関連した色を入れる事で、画面の中で色が馴染みやすくなります。もちろん、同じ色をそのまま使うのではなく、彩度を落としたりオイルで薄く溶いて塗ったりして馴染ませています。

また、筆の跡をあえて残す様に塗っていく事で、デッサンの様に物の形を説明することも可能です。こちらのリンゴも、形に沿って筆が走っているのが分かりますね。下の布地や棚板も、闇雲に筆を走らせるのではなく、デッサンで色を塗っていくとしたらどの様に鉛筆を走らせるかを考え、それと同じ様に筆を動かしていくと良いでしょう。特に布地は、シワや弛みによって色々な方向から筆を走らせる必要がありますので、箕輪さんの作品でもシワの形を筆跡で説明する様に描かれています。

メインのリンゴの周りがうっすらと緑がかっているのは、緑が赤の補色(色相環で正反対に位置する色の組み合わせ)だからですね。薄く塗ってある事でリンゴの赤色をより鮮やかに見せ、主役を目立たせる為の工夫が施されています。この補色の関係は、例えば油彩で下地を塗る際、モチーフの補色を塗っておく事で、上から塗られた色を鮮やかに見せるといったやり方にも応用ができます。


リンゴの光を反射している部分は、ハイライトの白を厚めに塗り、1週間乾かしてからオイルたっぷりの透明色の赤でおつゆ掛け(グレース)したので、透明感があります。油絵でも、オイルで絵の具を薄めて塗る事で、水彩絵の具の様に下の色を透かしながら塗る事も可能です。
影は染料のように鮮やかな青を下地に置き、乾いてからリンゴの色が反射した茶色系の影を塗って、青を透かして見せているので、美しい影の色になりました。また、左と右の光源の違いで色味も変えています。



画面左部分です。布地を見てみますと、出っ張って明るい部分の絵の具は、影になっている暗い絵の具の上に被せる様に塗られているのがお分かりでしょうか?光の方が上から被さるので、塗っていく順番も奥(影の部分)から手前(光の部分)にしています。ただ色を塗るのではなく、色を重ねる順番も意識していくと、より立体感のある画面となるでしょう。

布の後ろにある背景の壁は奥に感じさせる為に、絵の具を厚く塗り重ねないようにしています。また、布地には赤や青、緑といった白とは離れた色を賑やかにのせていますが、壁にはこげ茶や黒といった近似色でまとめていますね。こうした部分も前と奥の差を出すテクニックの1つでしょう。

色の他に、明暗差にも注目してみましょう。布地は光が当たって明るい部分と、影になっている暗い部分が点在しています。その反面、背景に明暗差は殆どなく、ほの暗く纏められています。明暗差がハッキリしているほど、人の目にはそれらが近くにある様に見えてきますので、暗く纏められは背景はより奥に見えてきます。



こちらは下半分です。棚板の奥の空間の処理ですが、この絵の中で棚板の下は一番奥に続いている(距離が遠い)ので、明暗差も全く作らず、色もほぼ黒で纏められています。ただ、単純に真っ黒に塗るのではなく、青や茶色を下地に置いてから黒で塗り重ねられているのでしょう。よく見てみますと、おつゆがけの様な跡も見えますね。絵の具の厚みやマチエール(絵肌の調子・絵の具による凸凹など)も全く作らずに仕上げているので、その差でも空間感を演出されています。下の暗い空間以外の部分には、最初にパレットナイフでパンにバターを塗る様に絵の具をキャンバスに塗り、厚みの差をつけていたと思われます。

長くなってしまいましたが、それでも書ききれないほどこの1作の中に様々な技術が盛り込まれています。箕輪さんの勤勉な制作姿勢には我々も背筋が伸びる思いになります。
もちろん、今回ご紹介させて頂いた技法が全てではなく、時には全く正反対なやり方や技法で描かれている作品も沢山あります。今後、他の作品を鑑賞する際には、今回の技法と同じ要素があるのか、それとも全く違うのか、そういった部分に着目されてみるのもまた勉強になるかと思います。

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試行錯誤、時々ひとやすみ

2022-11-10 23:44:50 | 学生


全員中1 上段左から まなは コピック・色鉛筆 / 心菜 色鉛筆
下段左から 依澄 色鉛筆 / アドア 透明水彩・クレヨン

裁縫にハマりつつあります。マユカです!今回は中学1年生4名の作品をご紹介します!それぞれの使いやすい画材で、思い思いのイラストを描きました。何度も下書きを繰り返し、時に人体クロッキーや、フカン、アオリという構図の描き方を学び、時におしゃべりしつつ、長い間イラストに取り組んでいましたが、ようやく満足のいく一枚が出来たのでしょう。それでは一人ずつご紹介していきます!

まなはは、コピックというアルコールペンを使用し、悪魔の羽が付いた青年を描きました。影や細かい所は色鉛筆で仕上げ、自然なグラデーションを表現しています。背景の星形の照明が、全体的にブルーでまとまった画面の差し色になっており、温かさも感じる光を出しています。また、髪はツヤを残しすぎるとプラスチックに似てしまうことがあるのですが、色鉛筆を使用したおかげか、髪の質感が良く出ていますね。風になびく様子も、細く、ランダムに揺れているように描くことででサラサラ感が出せています。まなはは、話しながらでも集中して筆を進められる性格なので、4人の中でもかなり早くに構図を決め、描き始めていました。別のことをしながらでも、しっかりと集中できるその姿勢は見習いたいものがあります。

心菜は、駅のホームにあるベンチの風景を描いています。背景は苦手だと本人は言っていましたが、手前の椅子はもちろん、後ろにある看板までしっかりと描きこんであり、こだわりを感じます。看板の文字が読めないようになっているのも、世界観を感じられて良いですね!そしてベンチの上には開封された手紙が置いてあります。この手紙は一体どうしてこんなところにあるのでしょうか。何か大変な事が書いてあったのでしょうか。それともただの忘れ物でしょうか。普通の風景にも、一つ意味深なものが置いてあると、何かストーリーがあるのではと考えてしまいます。心菜はかなり構図やテーマで悩んでいました。最初は男の子が屋上にいたり、難破した海賊船を描いてみたりと、下書きを誰よりも慎重に進めていました。一枚にかける情熱が伝わってきます。

依澄は、ふわふわと漂う女の子とたくさんの動物を描いています。下書きは鉛筆で描いていましたが、色鉛筆で塗るにあたって、下書きを少しずつ消しながら線画を虹のグラデーションになるように、頻繁に色を変えながらゆっくり描き進めていきました。苦労の甲斐あって、鉛筆の黒くにじんだ線のない、鮮やかな画面になりましたね!女の子と共に周りを漂う動物は、踊ったり、遊んだり…マイペースに自由な依澄らしい動物たちだなぁと思います。こんなにもかわいらしい絵ですが、女の子の体にくっついているのは…御札でしょうか。一見するとなんの変哲のない絵でも、よく見ると意味が分かる?依澄の作品からはそんな雰囲気がします。

アドアは、海辺に座ってこちらを見つめる儚げな青年を描きました。水彩の淡い色合いやにじみをうまく使い、夕暮れ時のノスタルジックな雰囲気を美しく表現できています。特に海に関しては、その透明度や、波うち際の細かな影や水しぶきなど、クレヨンのはじきを利用して丁寧に描写しているため、海の深さや、しぶきの濡れそうな感じがしっかりと伝わってきますね!写真ではかなり強めに写っていますが、ひざや指先の血色が透けて見えている感じが、キャラクターの生きている感じや、肌の白さが伝わってくる表現です。アドアの元気な性格からは想像できないほど繊細に描かれている今回の作品ですが、アドアも何度も下書きを描き、構図やキャラクター、ポーズを考え、ノートにたくさんアイデアを出していました。

イラストを真剣に描こうと思うと、どうしても1枚に悩む時間が長くなってしまいます。テーマや構図や、描きたいものを探したりと、試行錯誤を重ね、お喋りしながらの制作だったため、毎回ちょっとした女子会のようになっていましたが、最終的にそれぞれの個性が光る、素敵な作品が完成しました!次の作品も楽しみにしています!

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ショッピング日和な風景

2022-11-09 23:50:58 | 大人 油絵・アクリル


赤松 アクリル・色鉛筆

ようやく布団を冬掛けにしました、ナツメです。今回は水曜午前クラスの赤松さんの作品を2枚ご紹介します!どちらも店舗の外観を正面から描かれました。昭和の頃の白黒写真から、ご自身でおしゃれと感じるものを選出して、着彩しています。

1枚目は赤いロゴが印象的ですね。形の殆どが垂直・水平の直線で構成されているため、ショーウィンドウに並ぶマネキンや布の曲線が目を惹きます。また、周囲には明度が低い色や彩度の高い色を置いているのに対して布にはピンクや水色といった淡く明るいパステルカラーを配色されています。地面や空の明るく彩度の高い色などはチープな印象になってしまいがちな非常に扱いの難しい色なのですが、隣にワンクッションの落ち着いた色を置いて使いこなしています、流石です!

2枚目はレトロな喫茶店を描かれました。まず面白いと思ったのは坂の黄色一色の四角いタイルと喫茶店の形や色のまばらなタイルが対比のように描かれているところです。一直線にタイルが列をなし整然としている街の中、喫茶店の遊び心を感じるようです。ドアに手をかけている女性はこれから入ろうとしているのでしょうか、店内の景色にまで想像が及びます。看板の書体などを見ると落ち着いていて洒落た雰囲気のお店に思えますが、上の壁面の彩度の高い水色からは新しさや清潔で整ったような印象も受けますね!

2枚とも白黒に赤松さんの色彩感覚で色を乗せたものになりますが、一つの建物しか描かれていないのにも関わらずこんなお洒落な店舗が並んでいるんだろうなと周りの風景も思い浮かんできます。休日を捧げたくなるような、歩いていて楽しい気分にしてくれそうですね。赤松さん監修&デザインの繁華街、いつの日かできて欲しいです!

赤松さんの以前の作品はこちら

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浮かぶ姿に見えるもの

2022-11-08 19:30:53 | 大人 油絵・アクリル


大坪 油彩

冬の足音と共に私には卒業論文の締切も顔を覗かせ始めました、ホノカです。
今回は月曜大人クラスより大坪さんの油絵のご紹介です。覗き込むような姿が愛らしい猫を描いたこちら。飼い猫ではなく、可愛いと思った猫の写真を選んだとのことでしたが、その愛くるしさが十二分に伝わる素敵な作品です!

正方形のキャンバスに描かれる無機質な通路、その中を歩く血の通った動物、壁面は冷たく感じる青系の色が用いられ、対比が面白いです。気ままな猫の心には飼い主の存在なんて元々ないのかもしれませんが、人工で均衡の取れた景色の中を自由に過ごす様は、普段から自らの興味のある方へのらりくらりと歩き回る、そんな縛られない過ごし方が想起できるようです。
鑑賞するこちらを通り越して少し先を見据える目には、何が見えているのでしょうか?自らが猫より小さくなってしまい、その大きさに驚くような気持ちにも、もしくは自らも猫になってしまい、狭い道を探検していたら遭遇してしまった、そんな出会いへの考えも膨らんで楽しい気分にさせてくれます。

魚眼レンズで見たような立体感も面白いですね。大坪さんに伺ったところ、元々瞳は左右で同じくらいの大きさになっていたものを、よりこちらを覗き込んでいる様子に見せるために片方を大きくしたとのことでした。確かに左右で差があることでよりきょろっとした瞳の可愛らしさが強調された感じがしますね。また、猫の全身をキャンバス内に収めることで、小さい場所に入りたがる猫の特徴も抜け目なく表れています。
閉塞感漂う窮屈な壁には、後退色である青みの色を使うことで奥行きを出し、かがんだ姿勢も相まって顔がこちらに飛び出している印象に。反対に猫が見ている右上の壁は明るく照らされていることで、自然と視線もそちらに向き、奥から手前へ抜けた印象を空間に作っています。

アトリエの壁にあるこの作品を見ると、週を重ねるごとに徐々に猫が浮き出てくるように、また壁にこの通路が繋がっているかのように感じられ、制作途中も楽しく鑑賞させて頂きました!
およそ半年程かけて制作されていましたが、長い間お疲れ様でした。次回の作品も完成を楽しみにしております!

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受賞おめでとうございます!

2022-11-07 22:48:30 | 講師・生徒さん展覧会


Rika. 鉛筆デッサン

オバラです。12年以上前からミオスに通われて、途中からチケット制で参加し、今は主にデッサンを描かれていらっしゃるRika.さん。
彫刻を始められてからミオスに来る回数は減りましたが、それでも基礎は疎かにしないよう鉛筆デッサンを続けられる姿勢には頭が下がります。
しかも生活する自宅で石を掘ることがどれだけ大変かは、想像に難くありません。周り(家族・部屋)に対する配慮(音・汚れ・傷・ゴミ)が大変なので、制作物に傾ける情熱が削がれてしまうことも多い事でしょう。油絵のような匂いも気を使いますが、石も本当に大変です。制作中の未完成作品・完成作品を置いておく場所も相当幅を取りますし、重いですしね。
そんな苦労が報われるような、嬉しいご報告を頂きました!下記に頂いたメールと共に、展覧会情報を添付します。

石彫「渦」が、第78回ハマ展で『伊勢山皇大神宮賞』を受賞しました。
ちなみに、これは一回完成だ…と思ってから土台をひっくり返して彫っています。
自分の既成概念を壊すつもりで。
そうしたら、動きが出ました。

第78回ハマ展
2022年11月2日(水)~11月13日(日) 10:00~17:00
横浜市民ギャラリー(入場無料)横浜市西区宮崎町26-1

受賞おめでとうございます!本当に嬉しく思います。
これからのデッサンは、羽毛の柔らかさは無視した固まり感を、木炭やチャコペンなどで表現されてはいかがでしょうか?より彫刻製作に活かせると思います。タッチの方向はノミの動きを意識してみましょう。

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その深い世界観

2022-11-05 18:01:52 | 大人 油絵・アクリル


馬込 油彩

岩田です。
今回は、馬込さんの油彩をご紹介します。15号の比較的大きいサイズ、4カ月程を費やした作品です。
3人のお婆さんが大きな木の下で密談をしているような写真が元になっています。いつもそうですが馬込さんの世界観が絵から滲み出ています。
以前の展覧会の講評の際には、何も言うことは無いので、こののまま描き続けて下さいとお伝えした記憶があります。

作者の世界観で言えば、妖気漂うというか、おどろおどろしいというか、ヨーロッパ的な怖さのようなものを感じます。
作品を近くで見ると、元の写真と比べ、木の茂り方が既におどろおどろしい。そこには、様々な色が重ねられ、絵の具の立体的な表情を駆使していますし、背景のブロックの色も含め、とても深味があります。
言い換えると実に多様な色の集合体なので、とても複雑に見えてくるのです。
それは意図しているというより、多分感覚的な行為。結果、全体で見ると実に深い世界観が出来上がっているのですね。

表面的に見るとマットな質感の壁面に対して、木や老婆はダンマルの艶を活かして描いている。そうした所も作者の強い拘りを感じる部分です。

私はそんな馬込さんの絵がかなり好きです。
もし抵抗がなければ、一度展覧会をやってみてはどうでしょう。そうすることで、自分の絵を更に客観的に見られると共に、色々な人の意見を聞くこともできるでしょう。

最後に、この作品は実は元の写真に対して、光の設定を変えています。
ただその設定が不自然に見えているのだけが残念。画面の中に、箱庭的空間をもっと明瞭にイメージして欲しい。
絵の中の多様な質感の変化、艶があるところ、ないところの違いと共に、的確な光の設定による手前から奥への自然な変化も大事にしていきましょう。
これからも、その独自の世界を楽しみにしています。

YouTubeはこちら

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柔らかく優しい作品

2022-11-04 20:50:15 | 大人 水彩


室井 透明水彩

大竹です。本日ご紹介させて頂くのは室井さんの水彩作品です。入会後の基礎デッサンが終了し、初めてチャレンジした透明水彩画だそうです。笑顔にピースの可愛らしいおばあちゃんの肖像画ですが(すごく似ています!)、写真を見ながらプレゼントする為に制作されていました。

発色の良い透明水彩の特徴を活かし、色を重ねすぎたり、混ぜすぎないよう塗られているのでしょう。絵の具も濁らず全体的に柔らかい色合いでまとまっています。背景の青や緑は、1色を濃淡を作って塗ることで単調にならないよう工夫されていますね。油絵にはない、水彩の美しい滲みがなんとも魅力的です。
帽子やシャツも丁寧に形を描かれており、絵を通じて作者の制作姿勢が見えてくるようです。帽子のつばやシャツの襟、手のひらなどは影をしっかり作り立体感を出していますね。そしてメインとなる人物の顔は凹凸を細かく追い、明暗を捉えています。一番出っ張っている鼻や人中の右側は光が当たり明るい為、色を重ねず薄く塗ったまま残し、目頭周辺のくぼみや鼻の左側、ほうれい線などは影で暗くなっているので色を重ねて濃くしています。人の顔の立体感を表現する上で押さえるべきポイントをきちんと捉えて描かれていますね。
背景と人物の関係も、奥の背景は所々に画用紙の白を残しながら薄く塗り、手前の人物は塗り残しのないようしっかりと絵の具を重ねて塗っていく事で、平面の紙の上で前後感を表現しています。初めての透明水彩という事で、慣れない絵の具の扱いに苦労されたかと思いますが、水彩らしい柔らかく優しい作品になりましたね。

仕事がお忙しく、月に1・2回しか来られないことも多いですが、それでも仕事帰りに通われる情熱に脱帽です。この絵は額装して、無事におばあちゃんに渡せたそうですが、とっても喜んでくださったそうで私も嬉しく思います!

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描いて、時々休んで

2022-11-03 21:17:25 | 小学生 絵画

早くもこたつに入りたい。マユカです!今回は10月の小学生カリキュラムの、鉛筆デッサンについてお話していきます。
11/1のブログでもホノカ先生が授業の様子や、描き方のポイントをお話してくれているので、そちらも是非ご覧ください。

こうして並べてみると、同じようなかぼちゃを見ながら描いているにも関わらず、それぞれの目線の高さや、筆圧。影の濃さなど、細かく違う所によって個性が出ているのが、よくわかりますね!
見本として置いていたかぼちゃが小さめで、鮮やかなオレンジをしていたため、「これって本物?」「食べられるの?」等、友達と話しながら実際に触って質感を確かめ、ついている傷や汚れなどを、少しずつ描いていきました。そういった細かなところまで丁寧に拾って描いた結果、立体感のあるゴロっとしたかぼちゃに、自然らしさが追加され、本物そっくりなかぼちゃに寄せることができました。

ただ、やはり長時間集中していると、眠くなってしまったり、なんだか筆が進まなくなってくるものです。皆がデッサンに飽きてきた頃、小原先生が、「餅じゃ~!」と皆に真っ白な練りゴムを配り、みんなでもちもち、ねりねり。誰が一番長く伸ばせるかな?と、伸ばして競ったりしました。練りゴムをもらってご機嫌に息抜きができたので、またデッサンに集中し、どんどんと描き進めていくことができました。
私も課題をやっていく上で、数時間ごとに好きなことをして一息つくのですが、そうすることでまた違うアイデアが浮かんだり、心機一転頑張ろう、とやる気を出しているため、絵を描く上で、メリハリは大事だなぁと改めて感じました!

今回かぼちゃを描いてみて、複雑な形のモチーフでも球や立方体などの簡単な形に置き換えて考えることで、立体感をしっかりと表現できることが分かりましたね。他にも鉛筆の持ち方や影の塗り方、形のとり方など、今後デッサンを描くうえで大切なことをいっぱい知ったと思うので、いつかまたデッサンをする時には、描き方を思い出してくださいね!

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衝撃のままに

2022-11-02 23:36:57 | 学生


彩加 高3 『idol』 アクリル

毎朝寒くて布団から出られません、ナツメです。本日は木曜学生クラスの彩加の作品をご紹介します!

以前からイラストレーションを描き続けていて、今回もアクリルで制作しました。まず一番に目を惹くのは蛍光ピンクの髪の女の子。実は肌の黄色と黄緑も蛍光色の絵の具を使っているため目が痛くなってくるほど鮮やかです。そしてド派手な女の子の頭上にはお釈迦様とマリア様が。比較的柔らかめの色合いで描かれ、仏教とキリスト教、違う宗教の神様が一枚の絵に同時に存在しているというなんとも不思議な構図となっています。

これは一体どんな絵なんだ?と疑問に思うかもしれません。この記事を書くべく本人にインタビューをしたところ、「アイドルに感銘を受けた時の心情を描きました」と言っていました。以前の日本画でも題材に選ぶほどアイドルが好きで、ライブにも行っているという彩加ですが、「推しアイドル」のパフォーマンスを観た時に救われた!という気持ちになったそうです。その気持ちを形にする時にマリア様を描こうと思っていたら、いつのまにかお釈迦様も増えていたとのこと。無意識の内に神様を増やしてしまうほど(!?)強い衝撃だったのでしょう、2人の神様がいるのも納得です。

今までははっきりとムラなく塗ることができるというアクリル絵の具の特徴を活かした平塗りが多かったのですが、今回は水彩のように水で薄めて柔らかな滲みを作ったり、筆の動きを使って荒めのタッチで絵の具を重ねたりなど、一枚の絵の中に様々な表情を作りました。線の情報としては神様の方が多くなっていますが、彩度やコントラストは自分(の心象)の方を強くすることで、心を打たれている自分の内部の心情であることも上手く表現しています!

1人の人間に制作までさせてしまうアイドルのパワーも、その衝動から1枚の絵を描き上げてしまう彩加の情熱も素晴らしいですね!色選びもですが、彩加の作品は明確に伝えたいことがあるためか引っかかる画面作りに長けているように思います。イラストレーションは非常に自由な自己表現ですが、その中でも人の心に残るような作品を制作出来ることは誇りに思って欲しいです。

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狙いどころはどこ?

2022-11-01 20:52:08 | 小学生 絵画

ホノカです。ハロウィンから1日明けてしまい、もう11月になってしまいました。この時期はあっという間にお店がクリスマス仕様になる瞬間が面白くて好きです。
本日は10月の小学生のカリキュラム『鉛筆デッサン』の様子をご紹介します。
大人クラスや学生クラスでは、入会したばかりの頃に基礎デッサンを行うので、一度は経験する道ですが、小学生クラスでは学校の授業でもなかなか無い体験です。
初回では立方体、もしくはブロックを描いて面によって光の当たり方が異なることや、鉛筆の持ち方、影の付け方などの簡単なデッサンの技法について学びます。その次には、宙に浮いたボールを描き、四角いブロックには無い反射光や、つるつるした表面にするために擦ることで、表面の質感を表現出来ること実感してもらいます。そして最後はハロウィンらしく、カボチャのデッサンを行いました。

今回のデッサンの授業でのポイントは、『1番手前になっている(自分に近い)部分に明度差をつける』でした。言葉だけだと分かりづらいですが、カボチャを一度単純な立方体だと考えると、光は上面に最も当たり、側面も光から遠い部分は影になるため暗くなります。その中で、カボチャの1番手前は影を暗め+光を白めに、濃淡を意識して隣り合わせで描くことで、白と黒で明度差が生まれ、二次元の紙に描いたカボチャに飛び出すような、三次元的な立体感が生まれます。
この差を付けるという部分が難しく、差が激しすぎて、模様のように見えて影にならなかったり、逆にカボチャのどの場所にも明度差がありすぎて、どこが一番飛び出しているのか分からなかったりと、立方体の時はみんなよく描けていた部分でも、表面が丸みがあるために自然に差を付けるのが難しく、苦戦していましたね。

また、光と影も苦難した部分ですが、カボチャはその形も難しくなっています。皮を剥いたミカンのように、山なりになっているカボチャの形には、ほとんどの生徒たちが一度はつまずいていました。ですが、だ円を縦に描いてみたり、アルファベットのCを意識して描いたりすることで、お花の様にヘタを中心に広がった形にならず、正確な形でカボチャが描けたのではないでしょうか。さらに、実際にカボチャを手に取って見ることも出来たので、表面が意外とボコボコしていたり、ヘタを真上から見ると五角形になっていたりすることも、自分で見て確認して描けたため、よりリアルに仕上がっていますね!

簡単な立方体から球体、そしてカボチャと段階を踏むことではじめてのデッサンとは思えない完成度に仕上がりましたね!また、最終週ではカボチャを描き上げた生徒に血ノリをプレゼント!リアルに描けたカボチャを狙う、ホラーな教室になってしまいました...

デッサンで身につけられる能力は他の絵画や、立体作りにも存分に活かせる力です。今回勉強したことを今後のアトリエの授業でも活用してほしいですね。

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