琉球新報11月19日付朝刊の3面に〈辺野古移設 沖合修正を「容認」 首脳会談でオバマ氏〉という見出しの記事が載っている。
〈【ワシントン共同=杉田雄心】オバマ米大統領が13日の鳩山首相との首脳会談で米軍普天間飛行場移設問題について、日米政府間合意の「完遂が必要」と指摘した上で、沖縄県側が求めている代替滑走路建設地の沖合修正に関しては「調整することも可能だ」と述べ、容認する考えを示唆していたことが17日、分かった。複数の日米関係筋が明らかにした。
オバマ氏は会談で普天間問題の日米合意に関し「そのまま完遂する必要がある」と述べると同時に「一部の懸念については調整することも可能だ」と強調した。同発言は会談後の共同記者会見や日本政府のブリーフィングでは公表されなかった〉
これはもっと大きく扱われてもいい記事ではなかろうか。先の日米首脳会談では、普天間飛行場移設問題については踏み込んだ議論はなかった、と報道されていた。しかし、オバマ大統領は沖合への「微修正」容認を〈示唆していた〉というのだ。米国政府の”落とし所”といわれてきた「微修正」案を、オバマ大統領が首脳会談で公式に取り上げ、〈容認する考えを示唆〉したということは大きな意味を持つ。鳩山首相に決断を迫ることはなかったとはいえ、実際にはかなり踏み込んだ議論をしていたと言えるのではないか。オバマ大統領の発言が〈会談後の共同記者会見や日本政府のブリーフィングでは公表されなかった〉というのは、日本政府が反響を懸念して米国政府に、共同記者会見では触れないよう頼み込んだのだろう。
オバマ大統領が首脳会談で直々に「微修正」容認を発言したというのだから、日米閣僚級作業グループで米国側代表のルース駐日大使らがどのような対応をとるかは明かだ。米国側が「嘉手納統合案」を受け入れる可能性がないというのは、岡田外相も承知のことだろう。”検証作業”でお茶を濁して、辺野古現行案「微修正」を結論として出してくるのは目に見えている。作業グループにとって問題なのは結論の内容ではなく、それを出すタイミングであろう。
来年度予算との関連で年内に出さざるを得ないとすれば、それは来年1月24日の名護市長選挙にどのような影響を与えるか。作業グループが一番に考慮するのはそこではないか。辺野古現行案の「微修正」という結論を心待ちにしているのが、仲井真知事であり島袋名護市長である。二人がどれだけ批判を浴びても現行案の「沖合移動」にこだわり、「県外移設」への転換を拒否し続けているのは、いずれ鳩山首相も米国側の「微修正」案を容認する、と読んでいるからだろう。
しかし、作業グループが年内にそのような結論を出せば、来年1月の名護市長選挙ではそれを認めるか否かが直接の争点となる。「微修正」案を支持する候補者が落選し、反対する候補者が当選すれば、作業グループの結論が名護市長選挙で否定されたことになり、鳩山首相は結論を受け入れることが難しくなる。それを考慮して、閣僚級作業グループも名護市長選挙の動向を見ながら結論を出すタイミングを見計らうのだろう。もっとも、沖縄県民の意思とは関係なく強行する、となればタイミングは関係なくなるだろうが。
19日の県内紙には、来年の名護市長選挙に立候補を表明していた比嘉靖氏と稲嶺進氏との間で覚え書きが交わされ、比嘉氏が降りて稲嶺氏を野党統一候補にすることに決まった、との記事が載っている。両氏の間で交わされた「覚書」は以下の内容である。
名護市長選挙にあたっての覚書
二〇一〇年一月二十四日執行予定の名護市長選挙で、稲嶺進、比嘉靖の両予定候補者は、市長選挙にあたり、名護市民への公約とし、以下の通り合意したので、ここに覚書を交わす。
一、「辺野古、大浦湾の美しい海に新たな基地は造らせない」「名護市に新たな基地はいらない」という信念を最後まで貫くことを市民の皆様に約束する。
二、名護市の「閉塞的現状」を打破し、現在の利権にまみれた市政を刷新するため、「市民の目線でまちづくり」を行い、公平、公正で透明性の高い行政運営を行う。
三、以上の点を実現するため、比嘉靖は稲嶺進を統一候補とすることに同意する。稲嶺進はこの覚書を遵守する。
二〇〇九年十一月十八日
稲嶺ススム後援会
新基地建設反対・くらしと平和を守る市民の会
立会人
統一候補者となった稲嶺氏は「覚書」の一で、辺野古新基地建設反対で後には引かない姿勢を打ち出している。当初は辺野古新基地建設について曖昧な姿勢だった稲嶺氏が、ここまで反対の姿勢を明確にしたのは、野党議員団のはたらきかけや比嘉氏が立候補したことによるものである。これで辺野古新基地建設を推進し、沖合移動を求める現職の島袋市長と、それに反対する稲嶺氏との間で一騎打ちとなる公算が大きくなった。
この一本化に島袋市長陣営がわじゃみくさりている(しかめっ面をしている)様が目に浮かぶが、鳩山首相や岡田外相、北沢防衛相、小沢幹事長ら民主党中央の反応はどうだろうか。民主党沖縄県連が推薦する稲嶺氏に一本化が決まって、素直に喜んでいるだろうか。
鳩山首相がこれまで〈沖縄県民の民意〉を強調し、〈名護市長選挙の結果を見て〉云々と発言してきたのは、名護市長選挙が三つ巴となって現職有利、という分析をしていたからではないか。つまり、現職の島袋市長が再選されたら、それを名護市民の〈民意〉として自らの公約破棄の理由にしようとしているのではないか。鳩山首相や岡田外相、北沢防衛相らの発言を見ていて、私はそう疑念を抱いてきたし、今も抱いている。はたして今回の一本化に鳩山首相をはじめ閣僚らはどのような反応を示すであろうか。その建て前と本音を注視したい。
鳩山首相の言う〈民意〉について言えば、普天間基地の辺野古「移設」に対する名護市民の民意は、すでに12年前の市民投票で出ている。その民意がこれまで裏切られ、踏みにじられてきたのだ。私に言わせれば、鳩山首相が〈沖縄県民の民意〉を云々するのは、問題のすり替えにすぎない。本来問われるべきは、「最低でも県外」と発言して、普天間基地の県外・国外移設を衆議院選挙で主張した自らの公約を、鳩山首相が守るか否かなのだ。それを〈沖縄県民の民意〉に従うかのような顔をして、名護市長選挙の結果によって自らの態度を決定するかのように言うのは、問題をすり替えて公約への責任を曖昧にし、かつ公約破棄の口実を探しているようにしか見えない。
鳩山さんは、島袋市長が勝ったら〈名護市民の民意を尊重する〉と言ってアメリカの「微修正」案を受け入れて、稲嶺さんが勝ったら〈県知事選挙で県民の総意も見たい〉と言って先延ばしするはずよ。私の周りではそういう声すら聞こえる。鳩山首相は公約実現のリーダーシップを放棄することで、自ら信用を失っている。
これから名護市では激しい選挙戦がたたかわれるだろうが、名護市民がこのような重い課題を負った選挙を繰り返したたかわされるのは、日米同盟の重要性を言いながら米軍基地の負担を引き受けようとはせず、沖縄に米軍基地を集中させて普天間基地の県内「移設」=たらい回しを強いている日本政府並びに日本人の多数意思によるものだ。宮里政玄氏(沖縄対外問題研究会代表)がいう日米間の〈ペッキング・オーダー(鶏の小突きの序列)〉の最下位にあって、名護市民は再び三度、重い選択を強いられている。
〈【ワシントン共同=杉田雄心】オバマ米大統領が13日の鳩山首相との首脳会談で米軍普天間飛行場移設問題について、日米政府間合意の「完遂が必要」と指摘した上で、沖縄県側が求めている代替滑走路建設地の沖合修正に関しては「調整することも可能だ」と述べ、容認する考えを示唆していたことが17日、分かった。複数の日米関係筋が明らかにした。
オバマ氏は会談で普天間問題の日米合意に関し「そのまま完遂する必要がある」と述べると同時に「一部の懸念については調整することも可能だ」と強調した。同発言は会談後の共同記者会見や日本政府のブリーフィングでは公表されなかった〉
これはもっと大きく扱われてもいい記事ではなかろうか。先の日米首脳会談では、普天間飛行場移設問題については踏み込んだ議論はなかった、と報道されていた。しかし、オバマ大統領は沖合への「微修正」容認を〈示唆していた〉というのだ。米国政府の”落とし所”といわれてきた「微修正」案を、オバマ大統領が首脳会談で公式に取り上げ、〈容認する考えを示唆〉したということは大きな意味を持つ。鳩山首相に決断を迫ることはなかったとはいえ、実際にはかなり踏み込んだ議論をしていたと言えるのではないか。オバマ大統領の発言が〈会談後の共同記者会見や日本政府のブリーフィングでは公表されなかった〉というのは、日本政府が反響を懸念して米国政府に、共同記者会見では触れないよう頼み込んだのだろう。
オバマ大統領が首脳会談で直々に「微修正」容認を発言したというのだから、日米閣僚級作業グループで米国側代表のルース駐日大使らがどのような対応をとるかは明かだ。米国側が「嘉手納統合案」を受け入れる可能性がないというのは、岡田外相も承知のことだろう。”検証作業”でお茶を濁して、辺野古現行案「微修正」を結論として出してくるのは目に見えている。作業グループにとって問題なのは結論の内容ではなく、それを出すタイミングであろう。
来年度予算との関連で年内に出さざるを得ないとすれば、それは来年1月24日の名護市長選挙にどのような影響を与えるか。作業グループが一番に考慮するのはそこではないか。辺野古現行案の「微修正」という結論を心待ちにしているのが、仲井真知事であり島袋名護市長である。二人がどれだけ批判を浴びても現行案の「沖合移動」にこだわり、「県外移設」への転換を拒否し続けているのは、いずれ鳩山首相も米国側の「微修正」案を容認する、と読んでいるからだろう。
しかし、作業グループが年内にそのような結論を出せば、来年1月の名護市長選挙ではそれを認めるか否かが直接の争点となる。「微修正」案を支持する候補者が落選し、反対する候補者が当選すれば、作業グループの結論が名護市長選挙で否定されたことになり、鳩山首相は結論を受け入れることが難しくなる。それを考慮して、閣僚級作業グループも名護市長選挙の動向を見ながら結論を出すタイミングを見計らうのだろう。もっとも、沖縄県民の意思とは関係なく強行する、となればタイミングは関係なくなるだろうが。
19日の県内紙には、来年の名護市長選挙に立候補を表明していた比嘉靖氏と稲嶺進氏との間で覚え書きが交わされ、比嘉氏が降りて稲嶺氏を野党統一候補にすることに決まった、との記事が載っている。両氏の間で交わされた「覚書」は以下の内容である。
名護市長選挙にあたっての覚書
二〇一〇年一月二十四日執行予定の名護市長選挙で、稲嶺進、比嘉靖の両予定候補者は、市長選挙にあたり、名護市民への公約とし、以下の通り合意したので、ここに覚書を交わす。
一、「辺野古、大浦湾の美しい海に新たな基地は造らせない」「名護市に新たな基地はいらない」という信念を最後まで貫くことを市民の皆様に約束する。
二、名護市の「閉塞的現状」を打破し、現在の利権にまみれた市政を刷新するため、「市民の目線でまちづくり」を行い、公平、公正で透明性の高い行政運営を行う。
三、以上の点を実現するため、比嘉靖は稲嶺進を統一候補とすることに同意する。稲嶺進はこの覚書を遵守する。
二〇〇九年十一月十八日
稲嶺ススム後援会
新基地建設反対・くらしと平和を守る市民の会
立会人
統一候補者となった稲嶺氏は「覚書」の一で、辺野古新基地建設反対で後には引かない姿勢を打ち出している。当初は辺野古新基地建設について曖昧な姿勢だった稲嶺氏が、ここまで反対の姿勢を明確にしたのは、野党議員団のはたらきかけや比嘉氏が立候補したことによるものである。これで辺野古新基地建設を推進し、沖合移動を求める現職の島袋市長と、それに反対する稲嶺氏との間で一騎打ちとなる公算が大きくなった。
この一本化に島袋市長陣営がわじゃみくさりている(しかめっ面をしている)様が目に浮かぶが、鳩山首相や岡田外相、北沢防衛相、小沢幹事長ら民主党中央の反応はどうだろうか。民主党沖縄県連が推薦する稲嶺氏に一本化が決まって、素直に喜んでいるだろうか。
鳩山首相がこれまで〈沖縄県民の民意〉を強調し、〈名護市長選挙の結果を見て〉云々と発言してきたのは、名護市長選挙が三つ巴となって現職有利、という分析をしていたからではないか。つまり、現職の島袋市長が再選されたら、それを名護市民の〈民意〉として自らの公約破棄の理由にしようとしているのではないか。鳩山首相や岡田外相、北沢防衛相らの発言を見ていて、私はそう疑念を抱いてきたし、今も抱いている。はたして今回の一本化に鳩山首相をはじめ閣僚らはどのような反応を示すであろうか。その建て前と本音を注視したい。
鳩山首相の言う〈民意〉について言えば、普天間基地の辺野古「移設」に対する名護市民の民意は、すでに12年前の市民投票で出ている。その民意がこれまで裏切られ、踏みにじられてきたのだ。私に言わせれば、鳩山首相が〈沖縄県民の民意〉を云々するのは、問題のすり替えにすぎない。本来問われるべきは、「最低でも県外」と発言して、普天間基地の県外・国外移設を衆議院選挙で主張した自らの公約を、鳩山首相が守るか否かなのだ。それを〈沖縄県民の民意〉に従うかのような顔をして、名護市長選挙の結果によって自らの態度を決定するかのように言うのは、問題をすり替えて公約への責任を曖昧にし、かつ公約破棄の口実を探しているようにしか見えない。
鳩山さんは、島袋市長が勝ったら〈名護市民の民意を尊重する〉と言ってアメリカの「微修正」案を受け入れて、稲嶺さんが勝ったら〈県知事選挙で県民の総意も見たい〉と言って先延ばしするはずよ。私の周りではそういう声すら聞こえる。鳩山首相は公約実現のリーダーシップを放棄することで、自ら信用を失っている。
これから名護市では激しい選挙戦がたたかわれるだろうが、名護市民がこのような重い課題を負った選挙を繰り返したたかわされるのは、日米同盟の重要性を言いながら米軍基地の負担を引き受けようとはせず、沖縄に米軍基地を集中させて普天間基地の県内「移設」=たらい回しを強いている日本政府並びに日本人の多数意思によるものだ。宮里政玄氏(沖縄対外問題研究会代表)がいう日米間の〈ペッキング・オーダー(鶏の小突きの序列)〉の最下位にあって、名護市民は再び三度、重い選択を強いられている。