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海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

原発事故と軍事基地

2011-04-13 11:05:37 | 米軍・自衛隊・基地問題
 経済産業省原子力安全・保安院が12日に、東京電力福島第一原発の事故の暫定評価をレベル7に引き上げた。原子力安全委員会は〈3月23日の時点でレベル7に相当する危険性があると認識していた〉(4月13日付琉球新報)としているのだから、4月10日に行われた統一地方選挙への影響を考えてここまで発表を引き延ばしたのではないか、と考える人は多いだろう。
 もっと早い時期にレベル7と発表していれば、住民の避難もそれに合わせて対応していたはずだ。日本政府、原子力安全・保安院は、福島第一原発周辺の住民の安全よりも、選挙に向けた政治的利害と原子力産業の利益を優先した、そう見られて当然である。

 政府が住民の安全よりも政治的利害を優先するのは、沖縄の基地問題においても同じである。1996年4月12日に米軍普天間基地の全面返還が発表されてから15年が経過した。自公政権下で、返還ではなく「県内移設」という形で進めたが故に、普天間基地をめぐる取り組みは破綻した。この間、沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故も発生し、普天間基地の周辺住民は事故の危険と騒音被害に日々さらされてきた。
 今、菅政権は自公政権と同じ愚をくり返そうとしている。昨年5月の「日米合意」に基づいて、名護市辺野古崎への普天間基地「移設」を進めようとしている。東日本大震災や福島第一原発事故の影響によって、具体的な工法や位置の決定など作業日程は遅れそうだが、一方で、日米両政府は被災地に在沖海兵隊を送って活動を宣伝し、沖縄での「県内移設」に向けて世論作りを行っている。
 しかし、それがうまくいくと思ったら大きな間違いだ。被災地での米軍の活動を沖縄県民も評価している、だから「県内移設」を受け入れてくれる、と考えるのは、自らの願望を投影した甘い分析であり、短絡的な判断でしかない。仲井真知事でさえ、被災地での米軍の活動と普天間基地問題は別の話、と述べて「県外移設」の姿勢を崩していない。被災地での活動とからめて辺野古「移設」を進めようという追求は、沖縄ではまったく通用しないばかりか、逆に、被災地住民の苦しみを政治的に利用するものとして反発を生むだろう。

 原発も軍事基地も、日常的に危険にさらされ、いざ事故が発生すれば最大の被害を受けるのは周辺にすむ住民である。周辺住民の生命や安全を二の次にして、政府が政治的利害を優先することは愚劣極まりない。電力の安定供給や国の安全保障という「大義名分」を振りかざし、負担と犠牲を特定地域に集中させることで、大の虫を生かすために小の虫を殺す、という論理がまかり通る。真っ先に否定されるべきは、その論理である。原発事故も普天間基地の全面返還も、周辺住民の安全を最優先して早急に取り組まれるべきものだ。




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2 コメント

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Unknown (いまでなくていつ?)
2011-04-13 20:16:00
木下黄太さんのブログに被災者受け入れに関する沖縄県の担当者の応対の非人間性が書かれています。
(石巻で救援活動する医師の方の記事)
是非ご一読ください。

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木下氏のブログを読んで (目取真)
2011-04-14 16:13:08
 情報提供有り難うございました。
 木下黄太氏のブログで小野沢医師の文章を読みました。そのあと沖縄県の受け入れ窓口に電話をかけ、担当者と話しました。罹災証明申請書のコピーは住居を失った被災者を受け入れているので確認のため必要。5人集まったらというのは団体割引を使っているため。申込書はFAXで送ることも可能とのことでした。
 同制度では現在72件の受け入れが決まり、47名が沖縄に来ているとのことでした。県が打ち出した受け入れ人数は3000人で、現状では落差がありすぎます。受け入れ期間は4~5月ですので、このままでは目標を大きく下回るでしょう。
 5人集まるまで待つのがネックになっていないか。希望者がもっと沖縄に来られるように基準を見直す必要はないか。被災者は書類の準備も大変な状況にある。待ちの姿勢ではなく沖縄県の担当者を被災県に送り、積極的に呼びかけや書類準備、移動などの手助けをすべきではないか。そのための予算なら県民は支持するはずだ。そういう意見を言いましたが、検討されるかは分かりません。
 仲井真知事は当初、被災者数万人を受け入れるとマスコミに発表しました。しかし、岩手県、宮城県、福島県との調整がうまくいかずに引っ込めました。そのあと航空券や宿泊料も県が負担し、被災者3000人を受け入れるとしていますが、被災地の実態に即した取り組みにはなっていないようです。このままでは何万人、何千人という大きな数字を打ち出してPRしただけで、実効は伴わない結果になりそうです。
 沖縄県にはもっと被災地の実態に即して対応してほしいと思いますが、だからといって沖縄県の担当者の対応が「非人間性」を露呈したとは私は考えません。被災地で苦闘している医師の苛立ちは分かりますが、書類不要で受け入れを許可し、なおかつ沖縄から被災者を個別的に迎えに行くのは無理です。
 書類の準備や空港までの移動を手助けするボランティア体制を被災地でどう作り出すか、その具体的な努力が急務です。
 
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