『週刊現代』4月3日号に〈スクープ やっぱり県内だった!計画立案者が実名で明かす 普天間基地移設「これが秘密交渉の全貌だ」〉という記事が載っている。普天間基地の最終的な「移設」先として政府が「勝連沖人工島移設案」を出している。その提唱者である沖縄商工会議所名誉会頭の太田範雄氏に取材したものである。
同記事によれば、太田氏が「勝連沖案」を最初に民主党に提示したのは、〈鳩山政権が誕生した直後だった〉という。太田氏は昨年10月15日には小沢一郎民主党幹事長とも面会し、「勝連沖案」に好意的な反応を得たという。
〈勝連沖案が政府内で検討されていることは、3月に入って初めて明るみに出たのだが、実は、民主党と太田氏は、昨年から水面下で勝連沖への移設案について検討を重ねてきたのである。
非常に繊細な問題であったため、外に漏れた瞬間にすべてが台無しになる可能性もあった。民主党内でもこの案は厳重に取り扱われたという〉(37~38ページ)。
太田氏が十数年前から計画していたという「勝連沖案」は、新聞等でも報道されているように、勝連沖に最大で1000ヘクタールを埋め立てた人工島を造り、3600メートルの滑走路を2本建設。普天間基地に加えて航空自衛隊那覇基地、米軍那覇軍港施設、キャンプ・キンザーを移転させるというものである。
同記事で太田氏は、〈海底から土砂を吸い上げれば、普天間基地を移設するために必要な敷地程度なら、わずか2年で完成します〉と述べている。太田氏はこの人工島で沖縄の基地問題の解決を図るだけでなく、〈沖縄経済の自立・発展のために役立てたい〉という。海上基地と同時に民間物資の物流拠点や航空機の修繕場として活用し、沖縄を〈東アジア、東南アジアを中心に、世界中から貨物が集まる国際カーゴ〉にするのだという。
さらに太田氏は次のように語っている。
〈「…現在の計画では、この人工島の建設には、PFI方式(公共施設の建設・維持管理・運営等を、民間の資金・技術を活かして行う方法)を採用し、約2兆円とみなされる建設費用の大半を民間から調達する予定です。つまり、人工島の整備・基地建設にかかる費用は民間企業が出資しますが、代わりにそれらを軍が使用する際、国にリースとして貸し出す、という形をとるのです」
この方式をとることで、うるま市には国からの補償金に加え、法人税も確保することができ、莫大な収入がもたらされるという〉(40ページ)。
今どき〈約2兆円と見なされる建設費用の大半〉を民間から調達できるのか。すぐにそういう疑問が湧くが、同記事を読んでいると、太田氏の頭の中はバブルの時代のまま時間が止まっているようだ。すでに沖縄県やANAが那覇空港の国際物流拠点化を進めているが、それとの整合性はどうなるのか、という疑問も湧く。
太田氏が人工島を物流拠点にするという場合、飛行場や港湾施設を米軍・自衛隊・民間で共用することになるだろう。しかし、そういうことが可能なのか。民間の船舶や航空機が頻繁に出入りすれば、乗員に紛れてテロリストが潜入し、破壊工作を行う可能性がある。米軍はそう考え、民間との共用を拒否するはずだ。9・11以降、沖縄の米軍基地も警戒態勢が強化された。対テロ戦争を進める米軍が、太田氏が主張する物流拠点としての利用を認めるとはとても思えない。
こういうバブル時代の幻影を追っているような案が今になってよみがえり、それに乗っかって政府方針が立てられるという、何とも異様な状況が現出している。だが、太田氏の大風呂敷に躍らされるうるま市民や沖縄県民はどれだけいるだろうか。
太田氏の頭の中で時間は止まっていても、この十数年の間に埋め立てや環境保護に対する沖縄県民の意識は変わっている。基地とリンクさせた振興策が地域を豊かにしないばかりか、住民を分断、対立させて苦しめることも知った。漁業や観光業から見ても海は貴重な財産であり、後の世代のためにも残していかなければならない。そういう意識が広く共有されるようになってきた。
むしろ変わりきれていないのは、基地と経済振興をリンクさせることで利益を得てきた一部の政治家や経済人たちなのだ。基地被害に加えて国や地方自治体の財政危機、自然環境の破壊がこれだけ深刻になっても、基地とリンクさせた大規模開発を行おうとしている。
まさに過去の遺物としか思えない太田氏の案がもっともらしく語られ、政府方針に活用されること自体、鳩山政権の行き詰まりと愚かさを示している。政府は太田氏の案を換骨奪胎して具体的な案を作るのだろうが、沖縄の海を大規模に埋め立てて、新しい米軍基地を建設する案が実現することなどあり得ない。平野官房長官はうるま市議会の議員を東京に呼び出して面談し、抱き込み工作を進めているが、市民を分断して対立と混乱に陥れるような画策は止めるべきだ。
同記事によれば、太田氏が「勝連沖案」を最初に民主党に提示したのは、〈鳩山政権が誕生した直後だった〉という。太田氏は昨年10月15日には小沢一郎民主党幹事長とも面会し、「勝連沖案」に好意的な反応を得たという。
〈勝連沖案が政府内で検討されていることは、3月に入って初めて明るみに出たのだが、実は、民主党と太田氏は、昨年から水面下で勝連沖への移設案について検討を重ねてきたのである。
非常に繊細な問題であったため、外に漏れた瞬間にすべてが台無しになる可能性もあった。民主党内でもこの案は厳重に取り扱われたという〉(37~38ページ)。
太田氏が十数年前から計画していたという「勝連沖案」は、新聞等でも報道されているように、勝連沖に最大で1000ヘクタールを埋め立てた人工島を造り、3600メートルの滑走路を2本建設。普天間基地に加えて航空自衛隊那覇基地、米軍那覇軍港施設、キャンプ・キンザーを移転させるというものである。
同記事で太田氏は、〈海底から土砂を吸い上げれば、普天間基地を移設するために必要な敷地程度なら、わずか2年で完成します〉と述べている。太田氏はこの人工島で沖縄の基地問題の解決を図るだけでなく、〈沖縄経済の自立・発展のために役立てたい〉という。海上基地と同時に民間物資の物流拠点や航空機の修繕場として活用し、沖縄を〈東アジア、東南アジアを中心に、世界中から貨物が集まる国際カーゴ〉にするのだという。
さらに太田氏は次のように語っている。
〈「…現在の計画では、この人工島の建設には、PFI方式(公共施設の建設・維持管理・運営等を、民間の資金・技術を活かして行う方法)を採用し、約2兆円とみなされる建設費用の大半を民間から調達する予定です。つまり、人工島の整備・基地建設にかかる費用は民間企業が出資しますが、代わりにそれらを軍が使用する際、国にリースとして貸し出す、という形をとるのです」
この方式をとることで、うるま市には国からの補償金に加え、法人税も確保することができ、莫大な収入がもたらされるという〉(40ページ)。
今どき〈約2兆円と見なされる建設費用の大半〉を民間から調達できるのか。すぐにそういう疑問が湧くが、同記事を読んでいると、太田氏の頭の中はバブルの時代のまま時間が止まっているようだ。すでに沖縄県やANAが那覇空港の国際物流拠点化を進めているが、それとの整合性はどうなるのか、という疑問も湧く。
太田氏が人工島を物流拠点にするという場合、飛行場や港湾施設を米軍・自衛隊・民間で共用することになるだろう。しかし、そういうことが可能なのか。民間の船舶や航空機が頻繁に出入りすれば、乗員に紛れてテロリストが潜入し、破壊工作を行う可能性がある。米軍はそう考え、民間との共用を拒否するはずだ。9・11以降、沖縄の米軍基地も警戒態勢が強化された。対テロ戦争を進める米軍が、太田氏が主張する物流拠点としての利用を認めるとはとても思えない。
こういうバブル時代の幻影を追っているような案が今になってよみがえり、それに乗っかって政府方針が立てられるという、何とも異様な状況が現出している。だが、太田氏の大風呂敷に躍らされるうるま市民や沖縄県民はどれだけいるだろうか。
太田氏の頭の中で時間は止まっていても、この十数年の間に埋め立てや環境保護に対する沖縄県民の意識は変わっている。基地とリンクさせた振興策が地域を豊かにしないばかりか、住民を分断、対立させて苦しめることも知った。漁業や観光業から見ても海は貴重な財産であり、後の世代のためにも残していかなければならない。そういう意識が広く共有されるようになってきた。
むしろ変わりきれていないのは、基地と経済振興をリンクさせることで利益を得てきた一部の政治家や経済人たちなのだ。基地被害に加えて国や地方自治体の財政危機、自然環境の破壊がこれだけ深刻になっても、基地とリンクさせた大規模開発を行おうとしている。
まさに過去の遺物としか思えない太田氏の案がもっともらしく語られ、政府方針に活用されること自体、鳩山政権の行き詰まりと愚かさを示している。政府は太田氏の案を換骨奪胎して具体的な案を作るのだろうが、沖縄の海を大規模に埋め立てて、新しい米軍基地を建設する案が実現することなどあり得ない。平野官房長官はうるま市議会の議員を東京に呼び出して面談し、抱き込み工作を進めているが、市民を分断して対立と混乱に陥れるような画策は止めるべきだ。
この人の影響はどうなんでしょう?
この人も勝連案を昔から提案していましたが。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20100405ddm003010107000c.html
要は太田氏の提案を補強したのがエルドリッジ報告書というわけですね。