(添付画像):"Ann Lewis from Yahoo Info."
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* 長編小説『フォワイエ・ポウ』の過去掲載分、「全34回」、、(ご参照希望の方、こちらから入れます!)
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長編連載小説「フォワイエ・ポウ」6章
著:ジョージ青木
1(客のマナーと店の方針)-(4)
「カウンター?ボックス?どちらにおかけになりますか?」
いつものかたち通りの挨拶をしながらも、直ちに客の好みの席を選ばせるように誘導し、案内する。
「私たちも、カウンターにする?カウンターがいいよね?」
やや年上のリーダー格の女性は、連れの女性の了解を取るまでもなく、カウンター席に座り始める。
さっそく本田は、2人に飲み物の注文を聞いた。
リーダー格の女性は、バーボン。当然といえば当然だが、バーボンは銘柄指定で、ジャックダニエルを注文。もう1人は、ジントニックを注文した。
「わたしたち今日初めてお伺いします。私は、真理子。こちらは、知子。漢字は、しんりの「まり」、知るの「ともこ」・・・」
本田も直ちに、自己紹介する。
「本田です。まりこさん、ともこさん、宜しくお願いします」
本田に対して、真理子ひとりがしゃべっている。
「こちらこそ、宜しくお願いします。もっと早く来たいと思っていました。ウイークデーは仕事です。それで今日、初めて来ました。日曜日にお店開いているの、知らなかった」
「はい、お盆とお正月を外せば、年中空けていますからどうぞお越しください」
「先週の日曜日、お店のぞいたのですが、団体さんで満席だったから、のぞいただけで直ぐに帰っちゃった・・・」
「あ~ ごめんなさい。先週の日曜日は、たまたま予約がありまして、結婚式の披露宴の二次会がありまして・・・」
「そうなんだ、だからあんなに賑やかだったんだ・・・」
「そう、貸切状態でしてね、予約の20数人のお客様だけでした。な~に、こんな事は2月間で1回あるかどうか、めったに無い事でして、、、。いつも日曜日は、がら空きですよ。ですから、ご遠慮なくいらして下さい」
「毎週日曜日にカラオケの練習に来ますから、よろしくお願いします」
「カラオケの練習!」
本田好みのセリフである。
「何と、この店に来ていただく理由は『カラオケの練習』、この趣旨、いいですね。是非、是非、日曜日に思いっきりカラオケの練習やってください!」
女性客2名の来店と合わせ、入れ替わりに竹ちゃんが帰ろうとした。しかし本田が彼を引き止めた。
マスターの本田と女性客との会話が一通り落ち着いた段階で、真理子は竹ちゃんにも話しかけた。本田はすかさず竹ちゃんこと竹本を女性客達に紹介する。
遠慮がちな竹本に対し、真理子から声をかけた。
「竹本さん、おねがいします。店のドアの外まで、玉置浩二の歌きこえていましたよ。すてきな声ですね、ちょっとハスキーな声で」
「うわ~、はずかしいな」
彼は、確実に照れている。
真理子は、さらにたたみかけて来た。
「どうぞもう1曲、玉置さんの歌を聞かせてくださいよ」
「そう、もう1曲分、竹ちゃんのカラオケの予約が残ってますよ!」
一旦カラオケのコインボックスに百円玉を二枚入れてしまうと、誰かがカラオケを歌わなければならない。
「さあ、竹ちゃん! 歌った歌った。ここで引っ込んではいけないよ」
遠慮する竹本に対し、本田は巧みに気合をかけ、見事に彼をその気にさせる。
恥かしがりながらも、竹本は歌った。
今夜、彼の歌った歌の中でも、最も出来の良い歌になった。竹ちゃんは乗りに乗っていた。彼自身の流儀を発揮して彼独特の真心を込め、哀調のある玉置の歌を歌いきった。結果は、すばらしい出来栄えであった。それは熱唱というより、絶唱であった。
竹本の歌を聞きながら、
(ウム、竹ちゃんは大きくなった。成長した!今までの彼とは何かが違っている・・・)
と、本田は思った。
歌の巧い下手のうんちくを言うような本田ではなかった。初めて竹本と出会った当初の彼と、今夜の彼と単なる比較の問題である。竹本自身の僅かな成長ぶりに、本田は心から拍手を送った。
(細かい事はどうだっていい。竹ちゃん、この調子でがんばれよ、前に進んでくれ・・・)
竹ちゃんの熱演に続き、女性客の2人からもカラオケの歌が続出した。
真理子は、さすがに歌が上手だった。「フォワイエ・ポウを、カラオケの練習場にしたい」といった彼女は、プロ歌手以上の歌唱力を発揮した。
約20曲のカラオケが連続し、日曜日だというのに深夜過ぎても、連中は歌い終わらなかった。
さらに2~30分が過ぎた。
「あ~今夜は楽しかった。マスターごめんなさい。でも、ちょっと歌いすぎた・・・」
「そんな事ない、だいじょうぶですよ。どうぞごゆっくりしてください」
「いいえ、今夜はこのあたりで、そろそろおひらきにします」
「・・・」
「マスター、ありがとうございました。私たちのお会計、お願いします」
真理子から声が出た。
手元の時計に視線を移せば、すでに店仕舞いしてもおかしくない時間になっている。
適度に酒を呑み進めながら思いっきりカラオケを歌い、時間を見計らって切り上げる。
飲み屋遊びを切り上げる呼吸も間合いも、いかにも場数を踏んで磨き上げられたもの。カウンターの中に立つ本田にとって、客である真理子の洗練された間合いは、お洒落と表現するにふさわしい粋なマナーであった。
<・続く・・>
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<添付画像>:「アン・ルイス」
アメリカ人と日本人のハーフとして生まれ、英語をFirst Languageとして、日本の中のアメリカという環境で育った。日本でいうところの小中学校の頃、いわゆるオールディーズポップスだけでなく、1960~'70年代にかけてのクリームやツェッペリン等をリアルタイムで聴いて育つ。その、自らが体験したROCKを、日本語で、日本のメロディーで表現するために、自らの音楽を「Kayo-Rock」と呼称し、現在のJ-POPのルーツとなった。 オールディーズポップスから学んだ、ポップでメロディアスなボーカル。 ハードロックから得たダイナミックでビート感あふれるハードなギターサウンド。 そして、女を歌う詩。これがアン・ルイスの音楽です。 最近では、ファッション、インテリア、アクセサリー、ペット・グッズと幅広い分野でデザイン&プロデュースで活躍中。 その才能をブイブイ言わせて発揮しています。 1956/6/5 神戸生まれ。
1971/2/25 シングル「白い週末」でデビュー。
おもな代表曲:グッド・バイ・マイ・ラブ、LINDA、恋のブギウギトレイン、 六本木心中、あゝ無情、WOMANなど(資料引用):"Ann Lewis from Yahoo Info."
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著:ジョージ青木
1(客のマナーと店の方針)-(4)
「カウンター?ボックス?どちらにおかけになりますか?」
いつものかたち通りの挨拶をしながらも、直ちに客の好みの席を選ばせるように誘導し、案内する。
「私たちも、カウンターにする?カウンターがいいよね?」
やや年上のリーダー格の女性は、連れの女性の了解を取るまでもなく、カウンター席に座り始める。
さっそく本田は、2人に飲み物の注文を聞いた。
リーダー格の女性は、バーボン。当然といえば当然だが、バーボンは銘柄指定で、ジャックダニエルを注文。もう1人は、ジントニックを注文した。
「わたしたち今日初めてお伺いします。私は、真理子。こちらは、知子。漢字は、しんりの「まり」、知るの「ともこ」・・・」
本田も直ちに、自己紹介する。
「本田です。まりこさん、ともこさん、宜しくお願いします」
本田に対して、真理子ひとりがしゃべっている。
「こちらこそ、宜しくお願いします。もっと早く来たいと思っていました。ウイークデーは仕事です。それで今日、初めて来ました。日曜日にお店開いているの、知らなかった」
「はい、お盆とお正月を外せば、年中空けていますからどうぞお越しください」
「先週の日曜日、お店のぞいたのですが、団体さんで満席だったから、のぞいただけで直ぐに帰っちゃった・・・」
「あ~ ごめんなさい。先週の日曜日は、たまたま予約がありまして、結婚式の披露宴の二次会がありまして・・・」
「そうなんだ、だからあんなに賑やかだったんだ・・・」
「そう、貸切状態でしてね、予約の20数人のお客様だけでした。な~に、こんな事は2月間で1回あるかどうか、めったに無い事でして、、、。いつも日曜日は、がら空きですよ。ですから、ご遠慮なくいらして下さい」
「毎週日曜日にカラオケの練習に来ますから、よろしくお願いします」
「カラオケの練習!」
本田好みのセリフである。
「何と、この店に来ていただく理由は『カラオケの練習』、この趣旨、いいですね。是非、是非、日曜日に思いっきりカラオケの練習やってください!」
女性客2名の来店と合わせ、入れ替わりに竹ちゃんが帰ろうとした。しかし本田が彼を引き止めた。
マスターの本田と女性客との会話が一通り落ち着いた段階で、真理子は竹ちゃんにも話しかけた。本田はすかさず竹ちゃんこと竹本を女性客達に紹介する。
遠慮がちな竹本に対し、真理子から声をかけた。
「竹本さん、おねがいします。店のドアの外まで、玉置浩二の歌きこえていましたよ。すてきな声ですね、ちょっとハスキーな声で」
「うわ~、はずかしいな」
彼は、確実に照れている。
真理子は、さらにたたみかけて来た。
「どうぞもう1曲、玉置さんの歌を聞かせてくださいよ」
「そう、もう1曲分、竹ちゃんのカラオケの予約が残ってますよ!」
一旦カラオケのコインボックスに百円玉を二枚入れてしまうと、誰かがカラオケを歌わなければならない。
「さあ、竹ちゃん! 歌った歌った。ここで引っ込んではいけないよ」
遠慮する竹本に対し、本田は巧みに気合をかけ、見事に彼をその気にさせる。
恥かしがりながらも、竹本は歌った。
今夜、彼の歌った歌の中でも、最も出来の良い歌になった。竹ちゃんは乗りに乗っていた。彼自身の流儀を発揮して彼独特の真心を込め、哀調のある玉置の歌を歌いきった。結果は、すばらしい出来栄えであった。それは熱唱というより、絶唱であった。
竹本の歌を聞きながら、
(ウム、竹ちゃんは大きくなった。成長した!今までの彼とは何かが違っている・・・)
と、本田は思った。
歌の巧い下手のうんちくを言うような本田ではなかった。初めて竹本と出会った当初の彼と、今夜の彼と単なる比較の問題である。竹本自身の僅かな成長ぶりに、本田は心から拍手を送った。
(細かい事はどうだっていい。竹ちゃん、この調子でがんばれよ、前に進んでくれ・・・)
竹ちゃんの熱演に続き、女性客の2人からもカラオケの歌が続出した。
真理子は、さすがに歌が上手だった。「フォワイエ・ポウを、カラオケの練習場にしたい」といった彼女は、プロ歌手以上の歌唱力を発揮した。
約20曲のカラオケが連続し、日曜日だというのに深夜過ぎても、連中は歌い終わらなかった。
さらに2~30分が過ぎた。
「あ~今夜は楽しかった。マスターごめんなさい。でも、ちょっと歌いすぎた・・・」
「そんな事ない、だいじょうぶですよ。どうぞごゆっくりしてください」
「いいえ、今夜はこのあたりで、そろそろおひらきにします」
「・・・」
「マスター、ありがとうございました。私たちのお会計、お願いします」
真理子から声が出た。
手元の時計に視線を移せば、すでに店仕舞いしてもおかしくない時間になっている。
適度に酒を呑み進めながら思いっきりカラオケを歌い、時間を見計らって切り上げる。
飲み屋遊びを切り上げる呼吸も間合いも、いかにも場数を踏んで磨き上げられたもの。カウンターの中に立つ本田にとって、客である真理子の洗練された間合いは、お洒落と表現するにふさわしい粋なマナーであった。
<・続く・・>
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アメリカ人と日本人のハーフとして生まれ、英語をFirst Languageとして、日本の中のアメリカという環境で育った。日本でいうところの小中学校の頃、いわゆるオールディーズポップスだけでなく、1960~'70年代にかけてのクリームやツェッペリン等をリアルタイムで聴いて育つ。その、自らが体験したROCKを、日本語で、日本のメロディーで表現するために、自らの音楽を「Kayo-Rock」と呼称し、現在のJ-POPのルーツとなった。 オールディーズポップスから学んだ、ポップでメロディアスなボーカル。 ハードロックから得たダイナミックでビート感あふれるハードなギターサウンド。 そして、女を歌う詩。これがアン・ルイスの音楽です。 最近では、ファッション、インテリア、アクセサリー、ペット・グッズと幅広い分野でデザイン&プロデュースで活躍中。 その才能をブイブイ言わせて発揮しています。 1956/6/5 神戸生まれ。
1971/2/25 シングル「白い週末」でデビュー。
おもな代表曲:グッド・バイ・マイ・ラブ、LINDA、恋のブギウギトレイン、 六本木心中、あゝ無情、WOMANなど(資料引用):"Ann Lewis from Yahoo Info."