逆オイルショック―バブル連鎖経済の終焉が日本経済を襲う
真壁 昭夫【著】
価格 \1,620(本体\1,500)
祥伝社(2016/05発売)
最近この手のタイトルの本が何冊か登場しているが、そのうちの1冊である。
この著者の真壁昭夫氏はロイターとかでときどき記事を書いているのを見る。
本業は大学教授。
信州大学経済学部教授なのだが、この信州大学経済学部というのがクセモノで、ずいぶん前の話になるが、中の人(信州大学経済学部の学生)によれば
「うちは東大卒でなければ先生にはなれないみたい。けど東大卒でない人は若干名いる。なぜ東大卒でない人でもやっているのかフシギだが、よほど優秀な人なのか?」
とのことだった。
ちなみにこいつはその東大卒でないのに教授というレアケースの人である。
まあそれはいいとして。
この本を読んでみた。
買わなければよかったと思った。
なぜか?
ロイターの記事を流し読みしているヤツだったら知ってることしか書いてなかったからだ。
とりあえず買う前に本屋で最初の10ページくらい立ち読みしてみよう。
そこで
「知らないことがたくさん書いてある! すごくためになりそう!」
と思ったなら買ってもいい。
それなりにコンパクトにまとまっているので多少あなたのためにはなろう。
しかし
「そんなこと知ってるわい!」
と思った人。
あなたにとっては終始そんな調子なので買わなくていい。
つまりこの本はそれくらい内容が入門的すぎる。
べつに中身が入門的すぎたとしても、読み物としておもしろければそれでもいい。
だがそうでもない。
たとえばドイツ銀行の劣後債についてチラリと触れているが、ほんとにチラリと触れているだけだ。
これの顛末を知ってるとクソワロタ的な話であり大変おもしろいのだが、その部分は全く書いていない。
(当blog読者の某氏には酒の席で少しお話ししましたな)
他にもフォルクスワーゲンの中国へのポジションの異常なかたよりようについてもチラリと触れているが、ほんとにチラリと触れているだけだ。
これらは作者の知識が無いからそうなったわけではない。
おそらく我輩より詳しく知っている。
だがそのおもしろいところはちゃんと書いてない。
この本は一般論に終始する傾向が強すぎて小話がないから読み物としてもビミョーなのだ。
これがピケティーの”21世紀の資本論”だとかになれば全く反対である。
この本はファッションで買ったヤツにとっては懲罰的なほど文字数があり、ものの見事に本棚にファッションとして飾られているケースのほうが多いのではないかと思われるが、しかし著者の主張を裏付ける小話が山のようにギッシリと詰まっていて読んでておもしろい。
だがこの本はそうじゃないんだよ。
この傾向の最も顕著なところは第四章の「逆オイルショック下の資産運用術」のところかと思われる。
なんと中身は
> 専守防衛に徹すること
と
> 落ちてくるナイフを掴んではいけない
の56バイトでだいたい説明できてしまうのだ。
ほら、あなたも
「そんなこと知ってるわい!」
って言いたくなったでしょ?
ただ、この章のタイトルとこの要約がどう結びつくのかよくわからない人は買うと多少ためにはなろうかと。