(この絵はGONZO公式サイト(※1)より)
週末にGONZOのBLASSREITERを見ていた。
昼か夜かもよくわからなくなるほど延々と憑りつかれたかのように見入っていた。
まえに1話だけ見てスルーしてたのは大失敗だったと後悔するほど面白かった。
後半はそれほど良くできていた。
http://www.youtube.com/watch?v=Iu3usSSQ_74
BLASSREITERの第1話は↑ここでタダで見れる。
まずこれだけ見てみよう。
これを見て思う感想はこうだ。
何だかわからんムサいオッサンが主人公で、いまいちパッとしないビミョーなねぇちゃんがヒロインのようだ。
敵さんはCGで描いたショッカーみたいな改造人間みたいなヤツらのようだ。
恐らくこいつらは世界征服だとか世界滅亡だとかを目論む悪の組織の作り出した怪人なのだろう。
それを主人公一味率いる正義の味方たちが同じく改造人間みたいなのに変身して戦うものなのかな。
ううむ、毎回新しい怪人が現れてそれを正義の味方たちが叩き潰すという、そんな勧善懲悪的なストーリーっぽいな。
状況証拠からいうとアニメとCGで作った仮面ライダーみたいなもんか、主人公もライダーなだけに。
しかも1話だけ見るかぎりだと、妙に辛気臭いわりには熱い描写があまりにも控えめすぎる。
・・・と、わたしはそう思った。
したがってスルーしてしまった。
ちなみにこれは全くもって正しくない。
第1話で出てくる主人公臭いムサいオッサンは主人公ではなく、ヒロイン臭いいまいちパッとしないビミョーなねぇちゃんはヒロインでもない。
敵は必ずしもショッカーみたいな改造人間が毎話ごとに行儀良く1人づつ登場するわけではないし、それは最初のころだけでおしまいだ。
悪の組織も正義の味方の組織も出てくるには出てくるが、これも単なる勧善懲悪に終始させない作りこみになっている。
このアニメはある種の進化というものがテーマの1つになっているような気がする。
戦隊モノのように、単に力で敵を圧倒して悪いヤツらを叩き潰すだけがストーリーではない。
進化する敵よりもさらに早く人類が進化し、進化の上回ったほうが相手を倒す。
進化とはいっても、戦隊モノのように新しい巨大ロボに乗り換えるような単なる焼き増しでおわらせてはいない。
GONZOお得意のCGについても触れないわけにはいかないだろう。
CGのデザインがまあまあ凝っているのは言うまでもない。
そこは見たまんまということで特記しない。
特記したいのは慣性の表現についてだ。
例えば・・・
人がバイクに乗ったときのサスペンションがしなる表現。
車が高いところから飛び降りたときの筐体がしなる表現。
バイクが制御を失って滑って転倒する表現。
そういう慣性の表現が特に良くできている。
ほとんどの作品はここまで慣性を表現しない。
こういた指数関数的な減衰振動が起きていそうだと感じられるような秀逸な表現はほとんどなく、あったとしてもちょっと表現してみました的なものに終始している。
例外的にギャルゲーのおっぱいのゆれ(※2)だけは秀逸なものもまま見るが、まあそれは置いといて(笑)。
たまにポリゴンの作品でそういう減衰振動を表現しようとしているものもある。
しかし、何だか風船がフワフワしているかのような質量を感じられない残念な仕上がりになっているものも良くみる。
特にポリゴンのエロゲとかにそういうのが多い。
そういうのとは質量の感じ方が天と地ほども違うのだ。
ただ、1つ残念なところもある。
空中で物を投げたり相手を蹴っ飛ばしたりする表現。
大きな質量を打ち出したときの反動が表現されていない。
相手を蹴っ飛ばしたら自分は逆方向へ向かう力が働く。
高校物理でいうところの運動量保存の法則を無視しているとでも言おうか。
しかしこれは作り手の怠慢ではない。
ほとんど全てのアクションものではそこまで表現しない。
しかし他の全てのアクションものではそこまで気にはならない。
逆にいうとBLASSREITERはそういう細かいところが気になるほど慣性の表現が秀逸すぎるのだ。
また、ベタないいかただが、正義の味方の葛藤というのが最大の見所にもなっている。
多くのロボットアニメや戦隊モノでは、正義の味方はどこからともなく現れて、何の報酬も受け取らず何の賛辞も必要とせず戦いが済むと人知れず去っていく。
そこは勧善懲悪モノの致命的な欠点でもある。
なぜ正義の味方はどこからともなく現れるのか。
なぜ何の報酬も受け取らず何の賛辞も必要とせず戦うのか。
BLASSREITERはそれに対する1つの答えを示している。
人に虐げられ辛酸をなめさせられても、それでも人類を救おうとする主人公。
なぜ主人公をしてそうさせるのか。
それは後半を見なければわからない。
ちなみにわたしには命に代えても守りたい人など無い。
だからこそ人類に虐げられたら速攻で悪の組織の側に寝返ることも冷静に考えたら否定しきれない。
まあ少なくとも正義の味方などというボランティア活動など早々にやめてしまうだろう。
この作品で受けている扱いを見ると特にそうだと思う。
しかし主人公はそうはしない。
単なる勧善懲悪では見られない葛藤がそこにある。
正義の味方はかっこいい。
幼稚園児ころには誰しもがそう思う。
しかし真にかっこいいのは正義の味方だからではない。
正義の味方を続けられるその屈強な精神、それが真にかっこいいモノなのだ。
だからこそBLASSREITERの主人公はかっこいい。
それは後半も含めて全部見なければ理解することができないものだ。
BLASSREITERはよくできている。
後半は実に熱いし実に泣ける。
後半になればなるほど登場人物は輝いて見える。
しかし序盤だけではその展開になりそうだとは誰も想像だにすることができない。
タダで見れる1話だけ見てスルーした人は全部見てみてはいかがだろうか。
蒼穹のファフナーくらい前半と後半で大きく違うといったら、わかる人にはご理解いただけようか。
【※1】
GONZO公式サイト内の作品紹介
http://www.gonzo.co.jp/works/0803.html
【※2】
あずさと千早のおっぱいを科学する
http://blog.goo.ne.jp/beamtetrode350b/d/20090924