なんだかんだ言ってさくさく観てしまうこのドラマ。
お気に入りさんも出てないのになぜなんだ?
やっぱ面白いってこと?
《あらすじ》
息子に剣を振り上げたクムワは、近臣の制止に我にかえった。
「お前を思ってため息をつく母を哀れとは思わぬのか」
父の言葉に、後悔の涙を流し、震えるチュモン。
「この子ともども追放してください!
この子は怠け者で愚かで、浅はかな子です」
ユファの直訴にはうなずかず、棒たたきの罰を命令する。
しかしそれを第一王子のテソが止めた。
「明日はタムル弓を探しに行かなければなりません。罰は延期してやってください」
三人の王子は、扶余を起こした始祖の持っていたという神器タムル弓を見つけ、
気をもらってこなければならないのだ。
許されたチュモンは、母の言うとおり、弓を見つけて心を入れ替えると決心する。
一方テソとヨンポは、この旅の途中でチュモンを亡き者にしようとたくらんでいた。
三人の旅が始まった。
どんなに苦しくても、王子の身分を明かしてはならない。
旅は順調に見えたが、チュモンが先頭に立って馬を走らせているあたりから、
雲行きがあやしくなった。
霧の出た山中で、チュモンは道に迷ってしまう。
「兄上~道に迷ってしまったようです……」
心細そうに後ろを振り向くチュモンだったが、兄たちの姿はなかった。
チュモンは驚いて引き返そうとするが、馬ごと底なし沼にはまりこんでしまった。
兄たちは、そんな危険を承知の上でチュモンを置き去りにしたのだ。
ずぶずぶと体が沈んでゆく。
泥を飲み、頭の先まで沈んでしまったチュモンの手に、鞭の先が絡みついた。
とっさにつかんだ鞭に引きずられ、チュモンは意識不明のまま底なし沼から引き上げられた。
チュモンを助けたのは、商団を率いるヨンタバルの娘、ソソノである。
目を覚ましたチュモンは、ソソノが女だと知って不思議な気持ちになる。
ソソノは男勝りで、チュモンの言い訳にも、嘆願にも耳をかさない。
「お前は私に借りがあるはずだ。何で返す?」
「今は何も持っていないから、お前の僕(しもべ)になるよ。
ただ大事な用があるから、2,3日自由にしてくれないか?」
「バカじゃないのか、お前?」
チュモンは縛られたまま商団にひかれていった。
ソソノは、この取引が初めてになる新米行首である。
扶余で鍛えられた刀剣と槍を、辺境の部族に売る算段だ。
しかし、取引相手はソソノを甘く見て、品物をぶんどろうと攻撃を仕掛けてきた。
「射よ!」
こうしたことも予期して、弓矢隊が矢を放つ。
側近のウテも武芸の達人。たちまち部族兵は制圧されてしまった。
「ウテ兄、みな殺してくれ」
ソソノは非情に言い放つが、年長のウテは手をくだそうとしない。
「殺すなら自分でおやりなさい」
ウテの無言の圧力に負け、ソソノは部族兵を放免してやった。
一部始終を見ていたチュモンは、生意気な口をきいた。
「心の狭い行首だな。情けをかければ恩返しされることもあるだろうに。
許してやったあいつの方が行首となるにはふさわしいだろうよ」
ウテの目がぎらりとひかり、剣のきっさきがチュモンの喉に突きつけられた。
「口だけは達者なやつだな。出しゃばるな。殺すぞ」
「人を縛っておいて脅すなんて卑怯だぞ!勝負しろ!」
ソソノは面白がってその申し出を受けた。
荷運びの男と闘って勝てば自由にしてやり、望みをひとつ叶えよう。
チュモンは必死で闘った。途中、もうあきらめてしまおうかと思ったが、
ソソノの訳知り顔を見て奮起した。
そしてチュモンは男を殴り倒し、自由を手にしたのである。
タムル弓が眠るという山まで連れてきてもらい、チュモンは自由になった。
「訳あって名乗れなかったが、私はチュモンというんだ。
扶余の王子だ。私を訪ねてくるがよいぞ」
自信満々にソソノにささやいたチュモンだったが、ソソノには一笑にふされてしまった。
それはそうだ。こんなに情けない男が大国の王子だなどと、誰が信用するだろう?
自由になったチュモンは、元気いっぱいタムル弓の眠る洞窟に向かう。
その途中、疲れて寝込んでいると、人の声で目を覚ました。
ふとみると、兄たちが岩の反対側で休んでいるではないか。
声をかけようとした時、話の内容が聞こえてきて、チュモンは耳を疑った。
兄たちは、自分を殺すつもりで山中に見捨てたのだ。
その心根がばれないよう、普段はチュモンをかばったり、親切にしてくれていたのだ。
チュモンは声を殺し、泣いた。
なんとしてでもタムル弓を見なくては。
チュモンは一生懸命に山を登っていった。
地図にかかれた暗号も解読し、苦労を重ねて神器の眠る洞窟にたどりつく。
その弓は大きかったが、チュモンは楽々と弦を張り、
弓を引いてみた。
と、その途端、弓は真っ二つに折れてしまったのだ。
呆然とするチュモンだが、そのまま帰途につくしか手立てはなかった。
宮殿では、チュモンは死んだとされ、大変な騒ぎになっていた。
捜索を命じられて王子たちと兵が出陣しようとしたその時、
ほこりまみれのチュモンが城へ帰ってきた。
「きっと帰ってくると信じていましたよ。タムル弓は見てきたのね?」
「はい……」
ただ、弓を折ってしまったことは母にも言えなかった。
宴が始まり、三人の王子は父の前に呼び出された。
「タムル弓はどうであった?」
クムワは息子たちにたずねた。
「素晴らしい弓でした」
「お前のことだ、引いてみたくなったであろう?」
「はい、弦をはり、引いてみました」
テソはなんなく答えた。
「わたくしも、兄上よりは苦労しましたが弦をはり、引きました」
ヨンポもそう言った。
しかし、このふたりの言葉はまったくの嘘なのである。
どんな弓でも弦を張り、引いてしまうテソを持ってしても、
タムル弓はまったくしなることがなく、弦を張ることすらできなかったのだ。
クムワはうんうんとうなずき、チュモンにきいた。
「お前はどうだ?」
躊躇していたチュモンであったが、こう答えた。
「私は、恐れをなして逃げ帰ってしまいまして、山にすらたどり着かず戻ってきてしまいました」
母の失望ははかりしれない。
「お前は私に嘘をついていたのね?!」
「いいえ、嘘はついていません。
私はタムル弓を見ました。そして弦をかけ弓を引くと、真っ二つに折れてしまったのです。
そのこと以上に兄上たちが恐ろしくて。
兄上たちは、先頭にいた私を見殺しにしたのです。
私の死を望む彼らの前で、弓を見たと言えますか。
母上、私はどうしたらよいのでしょう」
チュモンの目から、涙がこぼれた。
(つづく)
いやいや~、思ってもみなかった展開だった。
第一王子のテソは悪いな~。
悪意を隠せる腹黒さ。
賢くて悪いが、ツメが甘い男。
第二王子のヨンポは悪いけど単純。
こいつはツメというより脇が甘いタイプ。
テソっていいやつ?と思ってしまった自分が悔しい。
でもさ、王妃もこいつら兄弟も、
そもそも愛されたかったのに愛されなかった寂しい奴らなわけよ。
同情の余地はあると思うんだな。
奴らにしてみれば、ユファとチュモンこそが王宮に巣くった蛇のような存在なわけで。
チュモンは知らないけど、ユファは確固たる野心を持って
ここにいるわけですからねえ。
チュモンに声をかけられた侍女は棒たたきの上、追放の憂き目に。
これはひどい。
せめてユファが、なんらかの金を渡してやったと信じたい。
そうじゃなきゃ、80話もある物語のうちのどこかに登場して復讐するんじゃないか。
もし私だったらね、
さいわい清いままだから、修行して呪術師になってチュモンを呪ってやるわ。
こないだからそうですけど、物語の唐突さがなんかいいですよね。
「明日はタムル弓を探しに行かねばなりません」とか
突然言い出されて、観ているこっちはハァ?てなもんです。
いつ決まったんだ、そんなこと。
通過儀礼ってことなんだろうけど、たいした説明もなく粛々と進むストーリー。
この親切すぎない設計が、適度な緊張感を生んでおります。
えっ?何それ?何それ?と言いながら物語に食らいついてゆく感じ。
そうかと思うと、兄弟とチュモン、それぞれの、
弓にいたる道程をしっかり辿ってゆく繰り返し描写の妙。
一見冗長な気もするのだが……。
これが「昔ばなしの定石」を踏まえていて面白い。
和洋問わずそうなんだけど、
三人の兄弟(あるいはふたりの姉妹)が同じ命題を持って冒険に行くというのはよくある話。
そして語り手は、その行程を省略することなく、愚直に辿り、語る。
繰り返しの面白さはお話の楽しみのひとつ。
チュモンの場合は、兄と比べて未熟な分、蛇やら滑落などがプラスされていて、
微妙な差異が楽しい。
(ちょっとめんどくさいけど、ちゃんと謎解きも同じように説くし、穴の開いた木も見つける)
こうした「昔ばなし」的構造が、王と王子の問答の場面にも生きている。
弓を引いたと嘘をついた兄たち。
王は、それを嘘と見抜いているのでは?と視聴者は感じたことだろう。
そして、ひとりだけ本当のことを言ったチュモンが、
王に賞賛され、名誉を取り戻すのだと期待したのではないだろうか?
少なくともわたしはそう思ったのだが……。
チュモンは本当のことを言わない。
臆病者と罵られてもいい。
自分を殺したいほど憎んでいる兄の前で本当のことは言えない。
だって怖いから。
わし、呆然。
おいおいチュモンよ、それでいいのかよ~。
いや、それでよい。
だってこのお話、80話もあるんですよ?
こんな序盤も序盤でチュモンが立派になってどーすんだって話っしょ。
冷静に考えたらそうなんですが、
なんかチュモンが本当のことをいわなかったことについてびっくりいたしました。
アーサー王と円卓の騎士ではありませんが、
兄たちががんばってもびくともしなかった弓の弦を
チュモンがやすやすとかけたのは事実。
そして扶余の始祖の弓を折った、ということは、
チュモンが英雄の資質を持ち、
しかも新しい国をつくる者だという暗示なのではないでしょうか。
それはおいそれとは言えないやね。
まして兄に対しては……。
チュモンは旅の過程で、少しは賢くなった様子ですな。
泥を飲んでまでの迫真の演技は見応えがあったし、
岩の陰で声を殺して泣いている様子も胸を打ちました。
あほで軽薄であっても、育ちがいいもんですから、
人を疑うってことを知りません、この男は。
好かれていないのはうすうすわかっていたがこれほどとは……。
しかもテソ兄までが……。
自業自得とはいえかわいそうですね。
ソソノに「俺実は王子なんだ!おまえ気に入ったぞ!」とかっこつけて告ったはいいものの、
全然信用されていないのはご愛敬。
女好きなところは生まれ持った性格なんでしょうか。
お父さんとは似てないな~。
でもがんばって殴り合いの勝負には勝ったし、
泣いたけどタムル弓をちゃんと見つけたし、
少しずつ成長していってると思います。
母のような気持ちでながい物語を見ていきたい気持ちになりました。
がんばるのですよ……チュモンや……。
お気に入りさんも出てないのになぜなんだ?
やっぱ面白いってこと?
《あらすじ》
息子に剣を振り上げたクムワは、近臣の制止に我にかえった。
「お前を思ってため息をつく母を哀れとは思わぬのか」
父の言葉に、後悔の涙を流し、震えるチュモン。
「この子ともども追放してください!
この子は怠け者で愚かで、浅はかな子です」
ユファの直訴にはうなずかず、棒たたきの罰を命令する。
しかしそれを第一王子のテソが止めた。
「明日はタムル弓を探しに行かなければなりません。罰は延期してやってください」
三人の王子は、扶余を起こした始祖の持っていたという神器タムル弓を見つけ、
気をもらってこなければならないのだ。
許されたチュモンは、母の言うとおり、弓を見つけて心を入れ替えると決心する。
一方テソとヨンポは、この旅の途中でチュモンを亡き者にしようとたくらんでいた。
三人の旅が始まった。
どんなに苦しくても、王子の身分を明かしてはならない。
旅は順調に見えたが、チュモンが先頭に立って馬を走らせているあたりから、
雲行きがあやしくなった。
霧の出た山中で、チュモンは道に迷ってしまう。
「兄上~道に迷ってしまったようです……」
心細そうに後ろを振り向くチュモンだったが、兄たちの姿はなかった。
チュモンは驚いて引き返そうとするが、馬ごと底なし沼にはまりこんでしまった。
兄たちは、そんな危険を承知の上でチュモンを置き去りにしたのだ。
ずぶずぶと体が沈んでゆく。
泥を飲み、頭の先まで沈んでしまったチュモンの手に、鞭の先が絡みついた。
とっさにつかんだ鞭に引きずられ、チュモンは意識不明のまま底なし沼から引き上げられた。
チュモンを助けたのは、商団を率いるヨンタバルの娘、ソソノである。
目を覚ましたチュモンは、ソソノが女だと知って不思議な気持ちになる。
ソソノは男勝りで、チュモンの言い訳にも、嘆願にも耳をかさない。
「お前は私に借りがあるはずだ。何で返す?」
「今は何も持っていないから、お前の僕(しもべ)になるよ。
ただ大事な用があるから、2,3日自由にしてくれないか?」
「バカじゃないのか、お前?」
チュモンは縛られたまま商団にひかれていった。
ソソノは、この取引が初めてになる新米行首である。
扶余で鍛えられた刀剣と槍を、辺境の部族に売る算段だ。
しかし、取引相手はソソノを甘く見て、品物をぶんどろうと攻撃を仕掛けてきた。
「射よ!」
こうしたことも予期して、弓矢隊が矢を放つ。
側近のウテも武芸の達人。たちまち部族兵は制圧されてしまった。
「ウテ兄、みな殺してくれ」
ソソノは非情に言い放つが、年長のウテは手をくだそうとしない。
「殺すなら自分でおやりなさい」
ウテの無言の圧力に負け、ソソノは部族兵を放免してやった。
一部始終を見ていたチュモンは、生意気な口をきいた。
「心の狭い行首だな。情けをかければ恩返しされることもあるだろうに。
許してやったあいつの方が行首となるにはふさわしいだろうよ」
ウテの目がぎらりとひかり、剣のきっさきがチュモンの喉に突きつけられた。
「口だけは達者なやつだな。出しゃばるな。殺すぞ」
「人を縛っておいて脅すなんて卑怯だぞ!勝負しろ!」
ソソノは面白がってその申し出を受けた。
荷運びの男と闘って勝てば自由にしてやり、望みをひとつ叶えよう。
チュモンは必死で闘った。途中、もうあきらめてしまおうかと思ったが、
ソソノの訳知り顔を見て奮起した。
そしてチュモンは男を殴り倒し、自由を手にしたのである。
タムル弓が眠るという山まで連れてきてもらい、チュモンは自由になった。
「訳あって名乗れなかったが、私はチュモンというんだ。
扶余の王子だ。私を訪ねてくるがよいぞ」
自信満々にソソノにささやいたチュモンだったが、ソソノには一笑にふされてしまった。
それはそうだ。こんなに情けない男が大国の王子だなどと、誰が信用するだろう?
自由になったチュモンは、元気いっぱいタムル弓の眠る洞窟に向かう。
その途中、疲れて寝込んでいると、人の声で目を覚ました。
ふとみると、兄たちが岩の反対側で休んでいるではないか。
声をかけようとした時、話の内容が聞こえてきて、チュモンは耳を疑った。
兄たちは、自分を殺すつもりで山中に見捨てたのだ。
その心根がばれないよう、普段はチュモンをかばったり、親切にしてくれていたのだ。
チュモンは声を殺し、泣いた。
なんとしてでもタムル弓を見なくては。
チュモンは一生懸命に山を登っていった。
地図にかかれた暗号も解読し、苦労を重ねて神器の眠る洞窟にたどりつく。
その弓は大きかったが、チュモンは楽々と弦を張り、
弓を引いてみた。
と、その途端、弓は真っ二つに折れてしまったのだ。
呆然とするチュモンだが、そのまま帰途につくしか手立てはなかった。
宮殿では、チュモンは死んだとされ、大変な騒ぎになっていた。
捜索を命じられて王子たちと兵が出陣しようとしたその時、
ほこりまみれのチュモンが城へ帰ってきた。
「きっと帰ってくると信じていましたよ。タムル弓は見てきたのね?」
「はい……」
ただ、弓を折ってしまったことは母にも言えなかった。
宴が始まり、三人の王子は父の前に呼び出された。
「タムル弓はどうであった?」
クムワは息子たちにたずねた。
「素晴らしい弓でした」
「お前のことだ、引いてみたくなったであろう?」
「はい、弦をはり、引いてみました」
テソはなんなく答えた。
「わたくしも、兄上よりは苦労しましたが弦をはり、引きました」
ヨンポもそう言った。
しかし、このふたりの言葉はまったくの嘘なのである。
どんな弓でも弦を張り、引いてしまうテソを持ってしても、
タムル弓はまったくしなることがなく、弦を張ることすらできなかったのだ。
クムワはうんうんとうなずき、チュモンにきいた。
「お前はどうだ?」
躊躇していたチュモンであったが、こう答えた。
「私は、恐れをなして逃げ帰ってしまいまして、山にすらたどり着かず戻ってきてしまいました」
母の失望ははかりしれない。
「お前は私に嘘をついていたのね?!」
「いいえ、嘘はついていません。
私はタムル弓を見ました。そして弦をかけ弓を引くと、真っ二つに折れてしまったのです。
そのこと以上に兄上たちが恐ろしくて。
兄上たちは、先頭にいた私を見殺しにしたのです。
私の死を望む彼らの前で、弓を見たと言えますか。
母上、私はどうしたらよいのでしょう」
チュモンの目から、涙がこぼれた。
(つづく)
いやいや~、思ってもみなかった展開だった。
第一王子のテソは悪いな~。
悪意を隠せる腹黒さ。
賢くて悪いが、ツメが甘い男。
第二王子のヨンポは悪いけど単純。
こいつはツメというより脇が甘いタイプ。
テソっていいやつ?と思ってしまった自分が悔しい。
でもさ、王妃もこいつら兄弟も、
そもそも愛されたかったのに愛されなかった寂しい奴らなわけよ。
同情の余地はあると思うんだな。
奴らにしてみれば、ユファとチュモンこそが王宮に巣くった蛇のような存在なわけで。
チュモンは知らないけど、ユファは確固たる野心を持って
ここにいるわけですからねえ。
チュモンに声をかけられた侍女は棒たたきの上、追放の憂き目に。
これはひどい。
せめてユファが、なんらかの金を渡してやったと信じたい。
そうじゃなきゃ、80話もある物語のうちのどこかに登場して復讐するんじゃないか。
もし私だったらね、
さいわい清いままだから、修行して呪術師になってチュモンを呪ってやるわ。
こないだからそうですけど、物語の唐突さがなんかいいですよね。
「明日はタムル弓を探しに行かねばなりません」とか
突然言い出されて、観ているこっちはハァ?てなもんです。
いつ決まったんだ、そんなこと。
通過儀礼ってことなんだろうけど、たいした説明もなく粛々と進むストーリー。
この親切すぎない設計が、適度な緊張感を生んでおります。
えっ?何それ?何それ?と言いながら物語に食らいついてゆく感じ。
そうかと思うと、兄弟とチュモン、それぞれの、
弓にいたる道程をしっかり辿ってゆく繰り返し描写の妙。
一見冗長な気もするのだが……。
これが「昔ばなしの定石」を踏まえていて面白い。
和洋問わずそうなんだけど、
三人の兄弟(あるいはふたりの姉妹)が同じ命題を持って冒険に行くというのはよくある話。
そして語り手は、その行程を省略することなく、愚直に辿り、語る。
繰り返しの面白さはお話の楽しみのひとつ。
チュモンの場合は、兄と比べて未熟な分、蛇やら滑落などがプラスされていて、
微妙な差異が楽しい。
(ちょっとめんどくさいけど、ちゃんと謎解きも同じように説くし、穴の開いた木も見つける)
こうした「昔ばなし」的構造が、王と王子の問答の場面にも生きている。
弓を引いたと嘘をついた兄たち。
王は、それを嘘と見抜いているのでは?と視聴者は感じたことだろう。
そして、ひとりだけ本当のことを言ったチュモンが、
王に賞賛され、名誉を取り戻すのだと期待したのではないだろうか?
少なくともわたしはそう思ったのだが……。
チュモンは本当のことを言わない。
臆病者と罵られてもいい。
自分を殺したいほど憎んでいる兄の前で本当のことは言えない。
だって怖いから。
わし、呆然。
おいおいチュモンよ、それでいいのかよ~。
いや、それでよい。
だってこのお話、80話もあるんですよ?
こんな序盤も序盤でチュモンが立派になってどーすんだって話っしょ。
冷静に考えたらそうなんですが、
なんかチュモンが本当のことをいわなかったことについてびっくりいたしました。
アーサー王と円卓の騎士ではありませんが、
兄たちががんばってもびくともしなかった弓の弦を
チュモンがやすやすとかけたのは事実。
そして扶余の始祖の弓を折った、ということは、
チュモンが英雄の資質を持ち、
しかも新しい国をつくる者だという暗示なのではないでしょうか。
それはおいそれとは言えないやね。
まして兄に対しては……。
チュモンは旅の過程で、少しは賢くなった様子ですな。
泥を飲んでまでの迫真の演技は見応えがあったし、
岩の陰で声を殺して泣いている様子も胸を打ちました。
あほで軽薄であっても、育ちがいいもんですから、
人を疑うってことを知りません、この男は。
好かれていないのはうすうすわかっていたがこれほどとは……。
しかもテソ兄までが……。
自業自得とはいえかわいそうですね。
ソソノに「俺実は王子なんだ!おまえ気に入ったぞ!」とかっこつけて告ったはいいものの、
全然信用されていないのはご愛敬。
女好きなところは生まれ持った性格なんでしょうか。
お父さんとは似てないな~。
でもがんばって殴り合いの勝負には勝ったし、
泣いたけどタムル弓をちゃんと見つけたし、
少しずつ成長していってると思います。
母のような気持ちでながい物語を見ていきたい気持ちになりました。
がんばるのですよ……チュモンや……。
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