山岳ガイド赤沼千史のブログ

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秋のクライミング講習会大町人工壁

2013年11月18日 | ツアー日記

 年に二回6月と11月に行っているクライミング講習会を11月13日14日で開いた。場所は大町人工壁。この日は12日から冬型の気圧配置が強まり、真冬並みの寒気団が日本列島を覆っていたためとても寒く少し大変だったが、皆さん頑張ってロープワークを勉強する。

 先ずはなんと言ってもロープの結び方。八の字結び、プルージック、この二つをしっかりやって頂く。ロープを結ぶと言うことはさして難しい事では無いのだが、間違いは命取りとなるので、確実に出来る様にならないといけない。一度出来たからと言ってそれは出来る様になったとは言えなくて、現場でそれが躊躇無く出来て始めて自分のものになったと言える。そのためには、何度でも反復練習しかない。解った様なつもりでも、現場でパニックになればそれが全く出来なくなったりするものだから。今回のお客さんも参加は二回目、三回目の方もいらっしゃった。

八の字は、ハーネスにロープを縛り付ける為の結び。現在もっとも確実な結びとされる。作るのは簡単だし、その形を確認することで間違えも少ない。

プルージックは、固定されたロープに縛り付けて登降する為の結び。大変便利だが、リスクもある。

これはアッセンダーというもの。登り方向には動くが下り方向ではロックする。要するに滑落しない。

別なアッセンダー「ロープマン」こんな簡単なものでも充分に効く。

 ロープの結びが出来る様になったところで、実際の岩場に登ってみる。最初は上部に作った支点でロープを折り返しその一方の末端に登攀者がつき、反対側を確保者が制動器で確保する。この練習の目的は、登ることにもあるのだが、下りの際にロープにぶら下がる事になるので、明日の懸垂下降に向けての体の使い方が体感できる。

 7~8メートル程、70度ぐらいの傾斜の壁を登っては降りる。それを何度か繰り返し、ロープとの信頼関係が出来上がったところで1日目は終了した。

 この日はガイド宅泊。寒くなってようやく美味しくなった長ネギを使ってのねぎ鍋を食べて頂いた。三センチぐらいに切った長ネギを立ててすき焼き鍋の底一面に敷き詰め、その上に豚バラ肉をそのネギが見えなくなるぐらいに同じく敷き詰め割り下で煮る。要するに葱と肉だけのすき焼きみたいなもんだが、これがネギの甘みが際だってすこぶる美味い。立てて並べたネギの中を沸き上がった煮汁が、また鍋の底に戻って行く。フツフツ、フツフツと。シメは手打ち蕎麦。日本酒が実に旨い。いい季節だね。

 さて二日目、大町は晴天の朝となった。もう一度結び方のおさらいをして、今度は実際に懸垂下降に挑戦だ。八の字結びを確実にすること、そして登りセルフビレーを取ること、エイト環ををセットし、セルフビレーを解除して懸垂に入る。この順番を間違えないこと。今自分がしていることを理解し、手順を間違えないようにこなしていけば、墜落の要素は無くなるのだ。

 慣れてきたら高さを上げる。人工壁の天辺まで登り、懸垂下降で下る。上部は完全な垂壁だが皆さん上手いことロープとの信頼関係が出来上がった為か、怖がらずに一連の動きをこなしていく。実に頼もしい。

 最後はテラスのある壁から離れ、完全な垂壁を登り下降する。恐怖心を乗り越えれば笑っちゃうぐらい楽しい世界が待っているのだ。皆さん終始ニコニコであった。

 最後は確保も自分たちでやって頂いた。パートナーの安全の為に、確実にするべき事をして、責任を持つこと。それが出来ればその先にはきっと新しい世界が広がっている。

 わっぱら屋にて盛りそばを頂く。夕べも食べたのに、また蕎麦を食べるお客様。そんなに蕎麦っていいものなんだね。もし信州で食べ物屋をするとしたら、蕎麦屋に限ると言うわけだね。