2023年の日本小児心身医学会はWEB配信されたので参加しました。
起立性調節障害はこの学会がメインに扱っています。
つまり医学的に「こころの問題」と捉えている証拠です。
この記事で紹介されている永井Dr.は、
「起立性調節障害は日本では主に心身症、海外では循環器疾患と考えられている」
と言い切っています。
なぜこんなことになってしまったのでしょう?
それは日本の診断基準が原因のようです。
前ブログに書きましたが、診断基準に
「イヤなことを見たり聞いたりすると気分が悪くなる」
という不思議な文章があったり、以下の記事に、
「日本で記載のある“朝の起床困難”の文言が米国のOIやPOTSの診断基準にない」
この2点で病気の質が異なってしまったらしい。
日本は心身症をも起立性調節障害に取り込んでしまったため、
非専門領域を小児科医が担当する羽目になり、
にっちもさっちも動きが取れなくなってしまった印象が拭えません。
それから、アメリカでは「不登校が存在しない」という環境の違いもあります。
どういうことかというと、
・保護者には学齢期の子供を通学させる義務があり、不登校を放置すると法的な罰則が科される
・通学しなくても自宅学習で単位が修得できるホームスクーリングのシステムが存在する
という教育環境の違い。
日本では新型コロナ禍で社会人にはリモートワークが普及し、
学校ではリモート授業も採用され、
不登校の生徒も参加できると一時話題になりましたが、
残念ながら定着はしなかったようですね。
う〜ん、不登校の閉塞状況を突破するチャンスだったかもしれない、残念。
▢ 海外と違う!日本の起立性調節障害の診療〜国際化を目指すポイントを考察
(2022年11月15日:Medical Tribune)より抜粋;
日本では思春期前後の小児でよく見られる起立性調節障害(OD)。朝の起床困難、めまい、立ちくらみ、倦怠感などの症状を呈するが、中等症~重症例ではしばしば心理社会的因子が関与する心身症と見なされ、不登校の原因の1つともいわれている。しかし、海外では心身症の領域と捉えられることは少なく、循環器系や自律神経系の専門医による診療が一般的だという。国立成育医療研究センター総合診療科診療部長の永井章氏は、第40回日本小児心身医学会(9月23~25日)でODをめぐる日本と海外の違いに焦点を当て、診療の国際化を目指す上で重要となるポイントを考察。「広い視点で海外との差異を学び、認識することは国内におけるOD診療の発展にもつながる」と述べた。
◆ 日本では主に心身症、海外では循環器系疾患
起立不耐症(OI)は、起立中のめまいや立ちくらみ、倦怠感などの症状を来す起立性低血圧(OH)、体位性頻脈症候群(POTS)、血管迷走神経性失神(VVS)、起立直後性低血圧(INOH)、遅延性起立性低血圧(Delayed OH)などの総称である。日本ではODの呼び名で広く知られているが、永井氏は「端的に言うと米国でODは一般的ではなく、OIがそれに該当する。さらにOIはほぼPOTSを指す」と指摘した。起立時の立ちくらみやめまいなどの症状が頻回に出現し、臥位で改善するという主症状は国内外で共通しているが、特筆すべきは、日本で記載のある「朝の起床困難」の文言が米国のOIやPOTSの診断基準にないことだ。
日本においてODは小児心身医学領域で最も患者数が多く、現在の診断・診療の手順も日本小児心身医学会によって発展、確立されてきた。ODを心身症としても捉えることで、身体症状を呈する不登校を診療の枠組みに含めているのだ。一方、海外、特に米国においてOIおよびPOTSは、主に循環器系学会や自律神経学会などが研究を進めており、失神を来す循環器系疾患として捉えられている。成人の中でも老年期の患者が多く、日本で一般的な起立直後の低血圧に着目する観点も普及していないという。
近年、OI研究が盛んな中国からもOIをPOTSとVVSに分類するアルゴリズムが発表されており、米国と同様にOIを失神を伴う循環器または自律神経疾患として捉えている様子がうかがわれる。
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◆ 背景に不登校を取り巻く環境の違い
永井氏は、日本のOD診療における重要なキーワード「不登校」について米国と比較して説明した。米国では州ごとに法律の違いはあるものの、保護者には学齢期の子供を通学させる義務があり、不登校を放置すると法的な罰則が科される。加えて、通学しなくても自宅学習で単位が修得できるホームスクーリングのシステムが存在する。こうした社会背景から、米国では日本に比べて不登校が生じにくいことが1つのポイントだという。
また、内科受診においてPOTS患者の75%以上が1回は誤診された経験があるとの報告もあり(J Intern Med2019; 286: 438-448)、米国ではPOTSでさえもcommon deseaseとなっていない状況にあると同氏は考察した。
◆ 日本独自のOD治療が国際貢献にもつながる
こうした現状を踏まえ、永井氏は「日本発のOD研究は海外で認められにくい」と述べた。ODは症例数の多い疾患だが、小児科医が心身医学として興味を持って研究を始めても、日本のODと海外のOI、POTSとのさまざまな相違によって国際学会での発表や論文掲載のハードルが上がり、研究を断念してしまう懸念があるという。
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