思春期の子どもが体調不良を訴えて来院される例が増えました。
新型コロナ禍の影響を指摘する意見もあります。
私は漢方薬を処方して治療を始めますが、
反応が悪いときは病院へ紹介し、
ベースに病気が隠れていないか検査を受けてもらいます。
すると大抵、
「検査に異常はありません、起立性調節障害の診断基準を満たします」
と診断されて帰ってきます。
起立性調節障害の診断基準は「日本小児心身医学会」が作成しています。
小児科学会ではないのです。
つまり「心」の問題が影響しているのです。
昔から診断基準の以下の一文を不思議に思ってきました。
「イヤなことを見たり聞いたりすると、気分が悪くなる」
これって身体の病気の症状?
アメリカでは起立性調節障害は循環器疾患と捉えているそうです。
こころの問題はなし。
だから、日本とアメリカの治療も異なると思われます。
診療していてふと思うのです。
起立性調節障害って、症状の原因?それとも結果?
起立性調節障害に関する記事をいくつか紹介し、
どう捉えるべきなのか考えてみたいと思います。
まず、起立性調節障害の著作もある石崎裕子医師の解説記事を紹介します。
<ポイント>
・起立性調節障害は自律神経がうまく働かないために起こる。
・血液の循環が悪くなることで、朝起き不良、頭痛、腹痛、立ちくらみ、吐き気などの症状が出る。
・思春期(10〜16歳)に多く、小学生の5%、中学生の10%があてはまる。
・要因として、急激な運動不足、人間関係などのストレス、夜型など生活リズムの変化などが挙げられる。
・治療法は、規則正しい生活、適度な運動、適切な水分補給をすること。
・生活指導で症状が改善されない場合は血圧を上げる薬や点滴治療などもある。
・気持ちが落ち込んだり学校に行きづらいと感じてしまうケースもあるのでカウンセリングを受けたり、学校と保護者などが話し合い病気を理解してもらうことも大切。
と要約しても、捉えどころがありません。
「自律神経異常」を検査で検出する方法はないのでしょうか?
実はあります。
心電図でR-R間隔を測定すると、自律神経の緊張度がわかります。
以前、某学会で「起立性調節障害患者は交感神経芽緊張している例が多い」という発表を聞いたことがあります。
でも不思議なことにこの検査、診断基準に入っていないのです。
▢ 朝起きられない君へ ~起立性調節障害を知って~
(ネットワーク報道部記者・秋元宏美)
(2021年8月30日:NHK)より抜粋;
◆ 専門医に聞く、起立性調節障害ってどんな病気?
・・・教えてくれたのは、長年、この病気を研究している関西医科大学総合医療センターの石崎優子医師です。
「起立性調節障害は、血液の循環が悪くなることで、体が重く朝起きられなかったり、頭痛、腹痛、立ちくらみ、それに吐き気などの症状が出る病気です。自律神経がうまく働かなくなることが関係しています」
発症しやすいのは思春期の子どもで、
・身長がぐんぐん伸びる時期
・生理が始まった時期
に多く、主な症状は、
▢ 朝起きられない
▢ 頭痛・腹痛
▢ めまい・立ちくらみ
▢ 吐き気
▢ 夜になると調子がよくなる
などです。
中学生では軽症のケースも含め約1割の子どもにこの病気の症状があると言われているそうです。
要因としては、
・急激な運動不足
・人間関係などのストレス
・夜型など生活リズムの変化
などが挙げられるそうです。
(石崎医師)
「治療法としては規則正しい生活をして、適度な運動、適切な水分補給をすること。症状が改善されない場合は血圧を上げる薬や点滴治療などもあります。
気持ちが落ち込んだり学校に行きづらいと感じてしまうケースもあるのでカウンセリングを受けたり、学校と保護者などが話し合い病気を理解してもらうことも大切です」
最近は症状が長引くケースが増えているそうで、さらにコロナ禍で発症する子どもが増えるおそれもあると警鐘を鳴らします。
(石崎医師)
「適切な治療を受けることで数か月程度で治るケースもありますが、昔に比べると子どもの絶対的な運動量が減っていることや、寝る時間が遅くなり、睡眠時間が短くなっていることなどから、大人になっても症状が続くケースも増えています。
さらに長引く外出自粛で、子どもたちの運動不足や生活リズムの乱れが深刻になっている可能性があります。親子で体を動かしたり、ウォーキングなどを日常的に取り入れたりして、発症のリスクを減らしてほしいと思います」